- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
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対象:事業再生と承継・M&A
第2 株式の評価方法の適用判定
1 判定方法
(1)同族株主かどうか
相続等により株式を取得する者が、その会社の同族株主かどうかを確認します。
同族株主がいる会社の同族株主は、原則として原則的評価方式が採用されます。もっとも、取得した議決権割合が5%未満で、株主のなかに中心的な株主がいても、株式取得者が中心的な同族株主や役員でない場合には、特例的評価方式が採用されます。
これらに対して、同族株主でない場合には、特例的評価方法として、配当還元方式が採用されます。
①同族株主とは(財産評価基本通達188(1))
同族株主とは、以下の2つのいずれかに該当する場合をいいます。なお、同族関係者については、第3章において詳述しています。
(ⅰ)株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上である場合におけるその株主およびその同族関係者
(ⅱ)株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超の株式を有するグループに属する株主およびその同族関係者
②中心的な同族株主とは(財産評価基本通達188(2))
中心的な同族株主とは、以下に該当する場合をいいます。中心的な同族株主とは、同族株主のなかでも特に中核となる株主であるという位置づけです。
(ⅰ)課税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹および1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち、これらの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である会社を含みます)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主
(2) 規模はどうか
次に当該会社の規模はどうでしょうか。従業員数等に応じて、大会社、中会社、小会社の3つの区分に分けられます。
(3) 特定株式かどうか
最後に、当該会社の財産の多くが株式や土地である場合等「特定の特殊な会社」に該当するかどうかを確認します。この判定は、大会社、中会社、小会社の3つの
区分により、さらに、中会社については、中の大会社、中の中会社、中の小会社の3つに細分化されます。
2 評価方法の確定
上記の判定方法に従い、評価方法が確定されます。
会社の規模 |
評価方法 | |
大会社 |
類似業種比準価額 (純資産価額でも可) | |
中会社 |
大 |
類似業種比準価額×0.90+純資産価額×0.10 |
中 |
類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25 | |
小 |
類似業種比準価額×0.60+純資産価額×0.40 | |
小会社 |
純資産価額 (類似業種比準価額×0.50+純資産価額×0.50でも可) |
第3 相続で取引相場のない株式を取得した場合の特例
相続で取引相場のない株式を取得した場合には、次の要件のもとで、相続税の課税価格を、発行済株式の総数の3分の2に達するまでの部分について10%減額するという特例の適用があります。ただし、いくらでも減額することができるわけではなく、10億円が減額限度となります(租税特別措置法69条の5)。
(ⅰ)相続開始時において、取引相場のない株式等であること
(ⅱ)相続開始の直前および相続開始の時において、被相続人および被相続人の親族並びに被相続人と特別の関係がある者が有していた各法人の株式の総数または出資の総額が、当該各法人の発行済株式の総数または出資の総額の50%超であること
(ⅲ)会社の発行済株式の総額等が20億円未満であること
(ⅳ)その株式または出資を取得した人が被相続人の親族であり、相続税の申告書の提出期限まで引き続きその株式または出資を有し、かつ、その法人の役員等の地位を有していること
(ⅴ)その株式または出資を取得した人が相続開始の時において、その株式または出資に係る法人の発行済株式の総数の5%以上を有していること
第4 事業承継における株式の税金
1 株式譲渡
株式の譲渡がなされた場合には、譲渡所得課税の対象となります(所得税法33条1項)。譲渡所得課税の算定は、譲渡収入金額から、当該所得の基因となった資産の取得費、取得に要した負債の利子、その資産の譲渡に要した費用等を控除したものが譲渡益となり、この譲渡益に対して20%が課されます(所得税法33条3項)
以上のほか、次の特例があります。第1に、非上場株式を譲渡した者が、その株式を相続によって取得していた場合には、取得費に相続税相当額を加算する特例があります(租税特別措置法39条1項)。そして、第2に、著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限ります)により居住者の有する譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合(低額譲渡)には、その者の譲渡所得の金額の計算については、その譲渡があった時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなされます(所得税法59条1項2号)。ここで政令で定める額とは、譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とされています(所得税法施行令169条)。
2 自己株式の取得の特例
発行会社が自己株式を取得する場合には、法的には、会社の株主に対する資本の払い戻しとして把握するため、会社から株主に支払われる金銭は、払込資本の払い戻しと会社の留保利益の分配の合計ととらえみなし配当課税となります(法人税法24条1項5号、所得税法25条1項5号)。
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