自社株式を発行会社に譲渡した場合の税務 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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自社株式を発行会社に譲渡した場合の税務

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相続

第3章 株式を発行会社に譲渡する(自己株式)

 

第2 株式を発行会社に譲渡した場合の税務

1 みなし配当課税

 株式を発行会社に譲渡する場合、会社の株主に対する資本の払戻しとして把握され、会社から株主に支払われる売却代金のうち資本金等の額を超える部分の金額は、配当所得として総合課税の対象となります(法人税法24条1項5号、所得税法25条1項5号)。みなし配当課税により、発行会社には源泉徴収義務が課せられます。他方で、株式を売却した株主には、配当金に対して課税問題が生じます。

 すなわち、株式を売却した株主が個人の場合には、売却により発生した所得は、原則として、売却額と資本金等の額との差額がみなし配当とされ、売却株式の帳簿価額と発行法人の資本金等の額との差額に対して、20%の源泉徴収義務が課されます。みなし配当とされる部分については、前述の通り総合課税の対象となるため税率は、最高で50%にも上り税負担が重くなりがちです。

2 相続した株式の譲渡所得課税の特例

 相続した株式を相続開始後3年以内にその発行会社に譲渡した場合で、次の要件を充たすときは、「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例」(租税特別措置法9の7)により、みなし配当課税ではなく、譲渡所得課税により、その税率は20%となります。この特例により、相続により承継した非上場株式の発行会社へ売却する場合の過重な税負担を軽減して、相続人の納税資金を確保できることが期待されます。

(ⅰ)相続または遺贈により取得した株式であること

(ⅱ)相続税が発生すること

(ⅲ)相続開始の日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡であること

(ⅳ)非上場会社の株式であること

(ⅴ)当該株式を発行した非上場会社への譲渡であること

(ⅵ)税務署に対して所定の届出書を提出すること

 以上の通り、当該特例の適用の有無によって、配当所得となるか譲渡所得となるか税務上の処理が異なることになります。この関係を図示すると以下のようになります。

 

 

3 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

 「取得費」とは、譲渡所得の金額の計算上出てくる概念で、資産の取得に要した金額ならびに設備費および改良費の金額の合計額のことをいいます(所得税法38条1項)。租税特別措置法には、相続税額を取得費に加算するという特例があります。すなわち、相続時に支払った相続税のうちの一部を譲渡所得の計算上、取得費に加算します(租税特別措置法39条)。譲渡所得の金額は、資産の譲渡による所得から所得の基因となつた資産の取得費やその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除して、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除して計算しますので(所得税法33条3項)、加算された相続税の分だけ取得費が増えることなり、結果として譲渡益が減ることになります。

 

 この特例の適用を受けるためには次の要件を充足することが必要です(租税特別措置法39条1項2項)。

(ⅰ)相続または遺贈による非上場株式の取得をした個人で当該相続または遺贈につき相続税額がある者であること

(ⅱ)当該相続に係る申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に非上場株式を譲渡すること

(ⅲ)確定申告書に、当該特例の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類の添附があること

 なお、財務省令で定める書類とは、相続の開始があつた日および当該相続に係る申告書を提出した日、当該資産の取得費に相当する金額に加算する金額の計算の明細並びに当該計算の基礎となつた相続税額および当該相続税額に係る課税価格の資産ごとの明細その他参考となるべき事項を記載した書類のことをいいます(租税特別措置法施行規則18条の18第3項)。

 

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