たゆまざる組織改革
現在、多くの大企業で採用されている「事業部制」
という組織制度がある。
今や、日本でも当たり前のようにあるこの制度、
実は、米国からの輸入品である。
危機に瀕していた米国の車メーカーGM(ゼネラルモーターズ)
を、短期間で立て直した男が、その原型を作った。
その男の名は、アルフレッド P.スローンJr.と言う。
スローン氏がGMのCEO(最高経営責任者)
に就任したのは1923年のこと。
しばらくして1929年の世界大恐慌が訪れる。
1929年の春頃からアメリカの景気はとてもよかった。
株価の大暴落は、その年の10月に訪れる。
数ヶ月前の7/17にスローン氏は、経営委員に対して
このような文面を提出している。
「人間は一般に、変化に抗おうとする傾向があり、
当社の経営陣もアイデアの売り込みばかりに時間をかけ、
変革を強く推進してこなかった責めを負うべきだろう。
正すべき点があるのを知りながら、
有効な手を打たずに対応を
先延ばしにしてきたことについても同様である。」*1
変化への抵抗は昔も今も変わらない。
なぜなら、経営は人が行うものだからである。
人には「自己維持の本能」があり、
「現状維持」をよしとする意思をつくりだす。
多くの社員が集団心理の刃に倒れる前に
リーダーは「自己否定」を提示しなければならない。
スローン氏は、好景気に沸き返る時点で
「自己否定」を強く訴えた。
そのスローン氏の胸に残る言葉である。
「望ましい組織を生み出していくという仕事に、
終わりはないのだ」
事業部制の導入などスローン氏の手腕で
GMは立ち直っていくが、
氏が去った後しばらしくて経営危機が訪れている。
この事実は、
経営効率を高める「制度」は必要だが、
経営は「人」が行うものであることの原理原則を
私たちに教えてくれている。
EARTHSHIP CONSULTING
*1『GMとともに』(著アルフレッド P.スローンJr. ダイヤモンド社)