【時事解説:日経記事】「厚労省、厚年基金廃止を検討 AIJ… - 家計・ライフプラン全般 - 専門家プロファイル

真鍋 貴臣
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【時事解説:日経記事】「厚労省、厚年基金廃止を検討 AIJ…

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日経電子版に、次のような記事が掲載されていました。

【抜粋開始】


 厚生労働省はAIJ投資顧問による年金消失問題を受け、厚生年金基金制度の廃止に向けた検討を始める。省内の対策本部を28日開き、本部長を務める辻泰弘副大臣が「将来的な制度廃止を検討する」との方向性を示す。財務の改善が見込めない基金が多いため廃止する方針を打ち出す。ただ、基金などの反対も根強く、廃止を決められるか曲折も予想される。

 28日の対策本部で、辻副大臣が制度廃止を含めた改革案を議論するよう指示する。高度成長期を前提とした厚年基金制度は行き詰まっており、廃止も含めた抜本的な見直しが必要があると判断した。

 10月以降に開く社会保障審議会の部会で具体的な議論を始め、年内にも制度改革案をまとめたうえで、来年の通常国会に厚生年金保険法の改正案を提出する見通しだ。

 厚年基金は独自の企業年金と公的年金の一部である「代行部分」を一体で運用する。ただ、運用の悪化などで全体の半数の基金で代行部分に損失が発生するなど財務改善が将来的にも見込めない基金が多い。

 厚労省が年内にもまとめる制度改革案には、基金の解散を促す対策を盛り込む。財政難の基金が解散しやすくするため、国に返還すべき積立金を減額する。積み立て不足の基金の解散後に加入企業が連鎖倒産しないよう、解散時に加入企業が連帯で返済債務を強制的に負わなければならない制度も撤廃する。

 基金制度の廃止も決まれば、改革案に盛り込む。現在、厚年基金の受給者と加入者はあわせて700万人いる。仮に制度廃止が決まれば、企業年金がなくなる人をほかの企業年金に移行させる準備などで10年程度必要になる可能性がある。

 10月からの議論では、6月の厚労省の有識者会議では両論併記となった元会社員(OB)の年金減額の基準を緩和するかどうかも議論する。現在はOBの3分の2以上の同意を得る必要がある減額基準を見直すかどうかも議論の俎上(そじょう)にのせる。

 厚労省はAIJ問題をうけ、すでに受給者に約束している運用利回りである予定利率を引き下げやすくする措置の導入などを打ち出している。ただ、抜本的な制度の見直しについては今秋から始める方針だった。

【抜粋終了】

国の年金制度については、話題に上る割にその内容について知らない方が多い事と思います。

この記事の内容を理解する為には、まず国民年金と厚生年金の仕組みについて知る必要があります。

厚生年金とは「国」が運営する年金制度であり、厚生年金基金とは企業」が運営する年金制度の事です。

では、厚生年金と厚生年金基金は何が違うのかと言うと「厚生年金基金は厚生年金の代行給付(基本部分)に企業の上乗せ部分(加算部分)を載せて給付している」という点が異なります。

つまり、本来厚生年金から支払われる年金を、厚生年金基金という民間の組織が代行し、そこに基金独自の上乗せ部分を加えて給付しているのです。



厚生年金基金は、加入者から集めた資金を所定の給付水準を保てるように運用する必要があるため、その運用をプロに委託します。

ちなみに、この「所定の給付水準」というのが曲者で、多くの年金基金では給付設計のための予定利率が5.5%と設定されています。

一方、10年ものの国債の利率が0.8%という現状において、5.5%という運用利率を(円建てで恒常的に)実現する事は不可能に近く、多くの年金基金は「より腕のいい(つまりは運用実績の良い)プロ」に運用を委託するか、基金を解散して国に返す(これを代行返上といいます)という選択をする必要があります。

そういった時代背景の中、「AIJ投資顧問」という、やたら運用実績のいい運用会社が社保庁OBのお墨付きで現れ、一部の年金基金はこの会社に運用を委託します。

これがAIJ事件に至る背景なのですが、その背景にあるのは高い予定利率なのです。

本記事にあるとおり厚生年金基金制度を廃止した場合、厚生年金基金は厚生年金の代行部分を国に返上し、上乗せ部分については「何らかの対応」をしないといけません。

ではこの「なんらかの対応」が「個別に運用会社を見つけて運用を委託する」なのか、「社員に戻す」なのか、あるいはそれ以外の選択肢となるのかはわかりませんが、どちらかというと「今既に給付を受けている」層の反発の方が大きいと思われます。

ただ、基金の解散自体はこれまでにも多くの企業が「代行返上」により経験していますので、必要以上にナイーブになる必要はないのかなと思っています。

(制度自体を辞めるという事は大きなインパクトですが)

今の条件を緩和しないと制度そのもののが破綻しそうな現状、これも「高度成長期の清算」の一つだと感じています。

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