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日経記事;"日本電産,米モーター2社買収 400億円で"に関する考察

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M&Aコンサルタントとしての活動 M&Aの事例と経営手法としての活用と課題

皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

9月20日付の日経新聞に、『日本電産、米モーター2社買収 400億円で エレベーター用など中大型拡充 』のタイトルで記事が掲載されました。

本日はこの記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。
 
『日本電産は米国の中大型モーター会社を年内にも買収する。エレベーターやクレーンなど商業用や産業機器向けに高シェアを持つ2社で、買収額は合計5億ドル(約400億円)前後とみられる。

日本電産はハードディスク駆動装置(HDD)向け精密小型モーターで世界8割のシェアを持つ。円高を受けて商業・産業分野を買収で拡大し、好不況の変動が大きいHDD向けに頼らない事業構造を目指す。

買収するのはエレベーターなどで使う中大型モーターを手がけるキネテック(イリノイ州)。米エレベーター大手のオーティスや豊田自動織機を顧客とし、北米や中国、欧州に20以上の工場や研究開発拠点を持つ。2011年の売上高は約4億ドル(320億円)で、従業員は約3000人。

もう1社はクレーンなどの制御用モーターに強いアブトロン・インダストリアル・オートメーション(オハイオ州)。11年の売上高は約3300万ドル(26億円)。それぞれの経営権を持つ米ファンド2社から全株式を買い取る。

買収資金は手元資金と銀行借り入れでまかない、今年中に手続きを終える。

日本電産は11年秋のタイの洪水被害で既存工場の復旧を優先するため、M&A(合併・買収)のペースを落としていた。ただ、円高もあり、今年に入って風力発電向けに強いイタリアの大手を買収するなど再び強化している。

同社はHDD向け以外の商業・家電・産業分野の売上高を現在の1200億円から、14年3月期には2300億円まで引き上げる計画で、同分野のM&Aを増やす。

商業・産業用モーターの営業利益率は2桁とみられ、HDD向けと比べて遜色がない。売上高3000億円超の精密小型モーターに次ぐ事業に育て、経営の拡大と安定の両立を目指す。』


国内企業は、売上・収益を伸ばすためには国内だけでなく世界市場で事業を拡大・成長させることが基本的なやり方です。

かって、多くの国内企業は、新事業分野立ち上げを自社のインフラのみを使って行っていました。経済や市場が右肩上がりで成長しているときは、自社の既存事業も伸びていきますので、全て自社の力で行えることが可能でした。

しかし、現在の国内市場は成長が止まり、新事業立ち上げを全て自社内のインフラのみで行える企業は少なくなっています。

自社単独で新事業立上や事業拡大を行うのが困難な場合、二つの経営選択肢があります。事業連携;アライアンスと、M&Aです。

事業連携;アライアンスは、自社と他社との間で協業関係を作り、お互いの売上・収益を上げるやり方です。

信頼関係の構築や連携の仕組み作りなどに時間を要しますが、一旦両者のメリットが共通に享受できる「Win/Win}スキームができると、大きな効果を生みだします。

特に、異業種他社同士の連携効果が的を得たものになると、売上・収益を一気に数倍押し上げる効果を生みだします。

連携を上手く行えるかどうかは、「Win/Win」スキームを作れるかどうかにかかります。


もう一つの有効な方法は、M&Aです。他社や他社事業を買収することにより、新事業分野立ち上げや、既存事業分野の売上拡大を一気に短期間で可能にする方法です。

個人的な関係で例えますと、連携は恋愛関係になります。連携は、「Win/Win」関係が続く間、つまり、恋愛感情を持てる間継続します。

「Win/Win」関係がなくなった場合、両社は直ちに止めるのが基本です。継続しても両者にとって益が無いためです。

M&Aは、他人同士の結婚と同じです。同じ屋根の下で暮らし、生活します。毎日の生活は、好きだ嫌いだだけの感情では成り立たず、収入と支出の管理、子育てなどの日常生活をきちんと行う必要が出てきます。

従いまして、M&Aは一旦成立すると新体制で如何に上手く行っていくかどうかが重要になります。M&A後は、両者の関係は連携のように簡単に清算できませんので、M&Aのことをハードアライアンスという人もいます。

私も中小企業同士のM&A支援を行っています。買収支援の相談を受けた時に、最初に確認するのは、当該企業が既に連携の経験を持っているかどうかです。

他社との連携を行った経験を持たない企業が、他社を買収するのはとてもリスクが高いためです。
これは、私の経験則にもなっています。

このM&Aの難しさを克服して、事業拡大に上手くつなげている企業の一つが、日本電産です。日本電産のコア事業はモーターです。

日本電産創立者の永守重信社長は、M&Aを巧みに使って短期間にモーター事業を拡大してきました。
本日の記事は、モーター事業のカテゴリーをHDDに加えて増やすために、エレベーターやクレーンなど商業用や産業機器向けに高シェアを持つ2社を買収することについて書いています。

1社は、オフィスビル用のエレベーター向け中大型モーターを提供している企業。もう1社は、クレーンや搬送機の用途向けにモーターを提供している企業です。

新事業立ち上げのやり方の一つに、既存のコア事業分野の範囲を拡大していく方法があります。日本電産の場合は、モーターをコア事業とし、応用事業範囲を広げてきました。

今回の買収では、エレベーターやクレーン向けモーター事業に拡大しようとしています。売上・収益も既存のHDD向けモーター事業と遜色ないとのこと。

この買収で極めて短期間に新事業の柱を獲得することになります。M&A効果の凄みを感じます。

日本電産がM&Aを繰り返して成功してきていますのは、永守社長が日頃述べていますように、「M&Aは、登山の例えでいうと、契約の時点で2合目しか登っていない。残りの8合分は企業文化の違いを擦り合わせる”PMI”という手間のかかる作業で、これがまた難しい」との理解を持って行動しているからです。

PMIとは、Post Merger Integrationの略語で、買収後の組織融合や統合を行う行為を言います。私自身がM&A支援を行う時は、「組織融合」としています。

組織融合は、通常半年から1年くらいかかります。これがきちんと出来ますと、M&Aは足し算ではなく、掛け算効果を発揮します。

日本電産の強みは、企業文化としてM&Aを活発に行いながら、組織融合に力を注ぐ必要性とやり方を理解し、持っていることです。

これからM&Aで事業拡大していく企業は、日本電産のやり方を徹底的に学習しエッセンスを理解することをお勧めします。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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