(続き)・・以上のように様々なレベルのある糖質制限食ですが、共通しているのは糖質の摂取を制限することと、他の栄養素、すなわち脂質とタンパク質の摂取には特に制限を設けていないことです。摂取カロリーにも上限はありません。言い方を変えると、ご飯やパンなどの「主食」やお菓子類に制限をかける一方で、野菜や肉、魚などの「おかず」はいくらでも食べてよい、ということになります。
実際に糖質制限食の食卓をのぞいてみると、意外にも「豪華な」食事です。確かに茶碗に盛られたご飯はないか、あってもごくわずかですが、その代わりに副食の種類と量はかなり多くなっています。例えばサラダや野菜炒め、豆腐の冷奴、焼き魚、牛肉のステーキ、チーズ、といった具合です。摂取カロリーは通常の食事よりも若干多くなってしまうかも知れませんが、糖質がたいへん少ないため、血糖値は下がる方向に動くのです。
このように「豪華な」食事は、単に糖質が少ないというだけでなく、様々なメリットがあります。野菜や豆、魚、肉などの副食が多いということは、脂質、タンパク質の割合が相対的に上昇し、自然とその摂取量も増加します。その結果、脂質による安定したエネルギー補給が可能となり、しかも血糖値が安定します。前項でも説明しましたが、脂肪酸が変化して出来る「ケトン」は、脳の優れたエネルギー源です。
また豊富なタンパク質は、体にとって様々な利点をもたらします。抗体が盛んに作られるために免疫力が向上し、風邪やインフルエンザなどに強くなります。また疲労や怪我からの回復が早くなり、皮膚や毛髪、爪の状態が良くなります。従来のカロリー制限ではタンパク質の摂取量が減少してしまうため、体の抵抗力が弱くなるという欠点がありましたが、糖質制限ではそのような心配がないのです。
糖質を制限すると血糖値が維持できないのではないかという懸念がありますが、これは脂質やタンパク質が糖質に変化する「糖新生」の仕組みによって充分に回避できます。脂質やタンパク質が酵素の働きによって、必要な量だけ糖質に変換されるのです。原始人類は食糧が乏しい時、この糖新生によって生きるのに必要な糖質を確保していました。糖質が必ずしも必須の栄養素と言えないのは、この糖新生の存在によるのです。
また副食の量が増えると、ビタミンやミネラルの摂取量が軒並み増えてきます。すなわちビタミンCやビタミンB群、鉄、亜鉛、マグネシウムなどの摂取量が増えるのです。例えば亜鉛は血糖値を下げるインスリンの生成に必要なミネラルで、牡蠣をはじめ貝類、牛肉、豚レバー、ゴマなどに豊富です。従って貝や肉などをたくさん食べることによって亜鉛を豊富に取り入れることができ、糖尿病の改善にも役立つのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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