前項までの検討で、糖尿病の治療や予防を含め、日々の食事に於いては「カロリー」よりも「糖質」に着目し、その過剰摂取を控えることが大切だ、と解説しました。カロリーを一生懸命に減らすことは血糖値の低下や減量などに効果が薄いばかりか、かえってリバウンドや体調不良の原因になりかねない、という理由からです。むしろ糖質を適正量に抑制することで、糖尿病や肥満の制御、予防などにつながるのです。
日本の臨床現場やダイエット教室などではまだまだ「カロリー制限」が幅を利かせていますが、欧米の主要国ではすでに「糖質制限」が糖尿病治療やダイエットなどの主流となりつつあります。病院や学校、職場、家庭などの現場で、砂糖やお菓子、清涼飲料水、パンなどの糖質を減らす取り組みです。階層による温度差はありますが、少なくとも裕福なアッパー層では肥満者が減少するなどの効果が現れ始めています。
米国などでは一時期、肉や脂質を減らす「低脂肪ダイエット」が流行したことがありますが、学術的な検討により、糖尿病や肥満、動脈硬化の抑制には殆んど効果がなかったと結論づけられました。米国はもともと肉や脂質の摂取量が多く、これらを減らすことが心臓病やガン、糖尿病などの発生や死亡を抑制すると言われましたが、負けずに過剰な砂糖や炭水化物などの糖質を減らす方がもっと重要だと判明したのです。
さてそのように、どうやらカロリー制限よりも有効性の高そうな「糖質制限」ですが、具体的にはどのような食品をどのくらい減らし、代わりに何をどのくらい食べれば良いのでしょうか。糖質を減らすことは、単に糖質の豊富な食品を減らすだけで済み、糖質の多くない食品を減らす必要がないため、面倒なカロリー制限が不要な分かなり楽でストレスを感じないはずです。基本的には単純明快なダイエット法です。
但し糖質制限には、どのくらい糖質を減らすか、どのような食品群まで制限の対象とするか、1日3食のうち何食分を糖質制限とするかなどによって、様々なバリエーションがあります。緩やかな糖質制限は取り組みやすい反面、効果の発現もゆっくりです。これに対して厳格な糖質制限は効果の発現が急速で確実性があるものの、現実に取り組むにはかなりの意思を必要とし、継続にも困難が伴います。
従って最初に取り組むには、血糖値や体重などの状況にもよりますが、先ずは緩やかな糖質制限から始め、効果が薄いようならば徐々に厳格な糖質制限に挑戦してみることがお勧めです。これまでご飯やパン、めん類、お菓子、清涼飲料水などの糖質に深く依存していた人にとって、糖質制限は当初かなりのストレスを感じる可能性があります。そこで挫折しないためにも、急激な糖質制限は避けた方が無難です・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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