- 大塚 嘉一
- 菊地総合法律事務所 代表弁護士
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
弁護士業務で扱った事件や相談から、最近、気づくことがあります。
妻の夫に対する暴力が増えている。
暴れる妻をなだめるために、会社に出られない夫。妻から殴られ顔を腫らせた男性、などなど。
かつては、家庭内暴力の主役は夫であり、父親でした。例えばロシアの小説にでてくる専制君主的な家長。日本では、ちゃぶ台をひっくり返す、巨人の星の星一徹。
ところが、現代では、子供の家庭内暴力が問題になり、さらに今では、妻であり母親である女性による家庭内暴力が増えているようなのです。実は、昔からあったことなのかも知れません。考えてみれば、そのような小説もありました。
現代的な理由としては、核家族化や困窮などの社会経済的原因もあるでしょう。教育や心理学、医学的な理由もありそうです。
しかし、一つの大きな原因として、夫が自分の暴力を自制している、ということがあるのではないでしょうか。最近の男性は、幼いときから、暴力を振るうことを禁じられ、特に女性に対しては、やさしく接しなければいけないとしつけられています。
その結果、妻から暴力を振るわれても、やり返すことなく、その暴力を耐え忍んでしまうのではないでしょうか。マスメディアで、専門家と称する人々が、相手の暴力を一端は受け止めなさい、と指導することが多いのも影響しているかもしれません。腕力に自信のある男性ほど、自制してしまうようです。その結果、女性は、自分の暴力的傾向をエスカレートさせてしまうということがありそうです。その女性は、心の中で、誰か私を止めて、と叫んでいるのではないでしょうか。
家庭内で、最も大きな腕力を持つのは、一般的には、夫であり父親です。恣意的な暴力は、論外ですが、暴力をコントロールすることができる人が、対処することが、時には必要なのではないでしょうか。暴力が一方的にエスカレートしたり、または暴力の応酬に歯止めがかからなくなったりすれば、離婚や、警察沙汰になったり、最終的には重大な破局が待ち受けています。暴力をコントロールすることができるのは、最も強大な暴力の可能性を備えた者だけです。
男性には、暴力を自制するだけではなく、暴力を適切に賢明にコントロールすることも要求されているのではないでしょうか。
シェークスピアの「じゃじゃ馬ならし」を思い出しながら、そんなことを考えました。
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