米国特許法改正規則ガイド 第7回 (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド 第7回 (第1回)

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米国特許法改正規則ガイド 

 第7回 (第1回)

河野特許事務所 2012年10月2日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

 2013年3月16日より先発明主義から先願主義へ移行するため、USPTOは2012年7月26日先願主義に関する規則案及びガイドライン案を公表した。本規則案及びガイドライン案は、先発明主義から先願主義への移行時に必要な手続、及び、先願主義に関するAIA(米国改正法America Invents Act)の解釈について数々規定している。

 本規則及びガイドラインに対する意見募集は2012年10月5日をもって締め切られる。

 

1.有効出願日

(1)概説

 先願主義への移行に伴い、新規性(米国特許法第102条)及び非自明性(日本でいう進歩性:米国特許法第103条)の判断基準が発明日ではなく、出願日となる。ここで判断基準となる出願日は、以下に定義される「有効出願日effective filing date」である。

 

 (A) サブパラグラフ(B)が適用されない場合、当該発明に対するクレームを含む特許または特許出願の実際の出願日、または

 (B) 特許または特許出願が、当該発明に関して、米国特許法第119条(優先権主張出願、仮出願)、365条(a)(合衆国以外の国を指定国とする優先権)もしくは365条(b)(合衆国を指定国とする国際出願)に基づいて優先権を付与されたか、または 120条(継続出願)、121条(分割出願)または365条(c)(合衆国を指定国とする国際出願の継続出願)に基づいて先の出願日の便益を受けた出願のうち、最も早い出願日。

 

 日本国へ出願後、パリ条約に基づく優先権を主張してパリルートまたはPCTルートで米国へ特許出願を行った場合、優先日である日本国出願日が有効出願日となる。

 

 また新規性喪失の例外規定である米国改正法第102条(b)(1)における1年のグレースピリオドは、特許または特許出願が当該発明に関し、利益または優先権を享受する一番早い外国特許出願から計算される。その一方で、旧米国特許法第102条(b)におけるグレースピリオドは、米国への最先の出願だけからしか計算されない[1]。

 

 旧法では、クレーム発明の有効出願日はクレーム毎に決定され、出願毎に決定されるものではない。この点は改正米国特許法も同じである。すなわち、先行技術に関連して同一出願の異なるクレームは異なる有効出願日を有するという原則は改正法においても変わるものではない。

 

改正前

改正後

第100条 定義

(中略)

(e) 「第三者請求人」というときは,第302 条に基づく査定系再審査又は第311 条に基づく当事者系再審査の請求人であって,特許所有者でない者をいうものとする。

第100条 定義

(中略)

(e) 「第三者請求人」というときは,第302 条に基づく査定系再審査又は第311 条に基づく当事者系再審査の請求人であって,特許所有者でない者をいうものとする。

(f) 「発明者 (inventor)」という語は、発明の主題を発明または発見した個人または集団(共同発明の場合)を意味する。

(g) 「共同発明者 (joint inventor および coinventor)」という語は、共同発明の主題を発明または発見した人々のうちのいずれか1人を意味する。

(h) 「共同研究契約 (joint research agreement)」という語は、クレームされた発明の分野における実験,開発または研究上の業務を実行するために2 以上の人又は団体によって締結された書面による契約,許諾又は協力の合意をいう。

 (i) 特許または特許出願中のクレーム発明に対する「有効出願日(effective filing date)」という語は、以下を意味する。

 (A) サブパラグラフ(B)が適用されない場合、当該発明に対するクレームを含む特許または特許出願の実際の出願日、または

 (B) 特許または特許出願が、当該発明に関して、米国特許法第119条(優先権主張出願、仮出願)、365条(a)(合衆国以外の国を指定国とする優先権)もしくは365条(b)(合衆国を指定国とする国際出願)に基づいて優先権を付与されたか、または 120条(継続出願)、121条(分割出願)または365条(c)(合衆国を指定国とする国際出願の継続出願)に基づいて先の出願日の便益を受けた出願のうち、最も早い出願日。

 (2) 再発行出願または再発行特許におけるクレーム発明に対する有効出願日は、当該発明に対するクレームが再発行しようとした特許に含まれていたとみなすことによって決定されるものとする。

(j)文言“クレーム発明”とは特許または特許出願におけるクレームにより定義された主題をいう。

 

(2)関連規則の改正

規則案

規則  1.109  クレーム発明の有効出願日

 (a)再発行出願または再発行特許を除く特許または特許出願のクレーム発明の有効出願日は、次の事項の内の最先のものである:

 (1)発明のクレームを含む特許または特許出願の実際の出願日

 (2)特許または出願が当該発明に関し、米国特許法第119条、120条、121条または365条に基づいて優先権を付与されたか、または、先の出願日の利益を受けた最先の出願の出願日

(b)再発行出願または再発行特許におけるクレーム発明に対する有効出願日は、当該発明に対するクレームが再発行しようとした特許に含まれていたとみなすことによって決定される。

 

 

2. 米国特許法第102条(新規性)

(1)概要

 米国特許制度を理解する上で困難であった先発明主義に基づく米国特許法第102条(a)~(f)の規定が大幅に改正され、新たに先願主義をベースとする米国特許法第102条(a)~(d)が新設された。また米国特許法第102条(g)(先発明を決定するインターフェアランス)は削除され、代わりに由来手続(冒認手続)が導入された。以下、102条の改正点について解説する。なお、由来手続に関する規則公表はもう少し先になる見込みである

 

(2)米国特許法第102条(a)

 102条(a)(1)及び(2)に該当する場合、(b)に規定する例外を除き新規性を有さないと判断される。

 

(i)先願主義 102条(a)(1)

 クレーム発明が、有効出願日前に特許されるか、刊行物に記載されるか、または、公然使用、販売、その他公衆に対し利用可能となった場合、新規性は否定される(102条(a)(1))。このように先発明主義から先願主義へ移行した結果、法改正前のように、他人の出願日より前に発明したことを立証したとしても特許を受けることができなくなった。

 なお、この公然使用及び刊行物等の記載は米国国内または国外の別を問わない。法改正以前は公知及び公然実施については米国内に限られていたが、国際的調和の観点から世界主義へと改正された。

 

 米国特許法第102条(a)(1)には、新たな概念「その他公衆に利用可能となった場合Otherwise available prior art (to the public)」が規定されている。公表されたガイドライン案によれば、「包括的」な意味であり、クレーム発明が、十分に公衆に利用可能であれば、たとえ文書その他の開示が印刷された文書であろうがなかろうが、取引で販売されてあろうがなかろうが、米国特許法第102条(a)(1)の規定に基づく「その他利用可能」な先行技術に該当する。

 

 例えば、大学図書館における学生論文、科学会議におけるポスター表示または配布したその他の情報、公開特許公報における主題、電子的にインターネットに投稿された文書、米国統一商事法典に基づく販売を構成しない商取引等も「利用可能」と判断される。

 

 また、米国特許法第102条(a)(1)では、「他人による開示」は旧法と異なり条件とされていない。その他、出願人自身が先行技術として明細書または審査段階で提出したものは、審査官が新規性及び非自明性の判断の根拠に用いることができる[2]。

 

(ii)拡大先願の地位 102条(a)(2)

 クレーム発明が、151条(特許の発行)の規定に基づき登録された特許に記載されるか、または、122条(b)(特許出願の公開)の規定に基づき公開された出願に記載されており、当該特許または出願が、他の発明者を挙げており、かつ、クレーム発明の有効出願日前に有効に出願されている場合も、新規性を有さないとして拒絶される(102条(a)(2))。

 102条(a)(2)は、日本国特許法第29条の2に規定する、所謂拡大先願の地位と同様の規定である。すなわち、参考図1に示すように未公開の先願が、後願の出願後に特許または公開された場合に、後願の新規性は否定される。なお、先願が他の発明者を挙げている場合にのみ、後願は米国特許法第102条(a)(2)に基づき新規性が否定される。

 

 

参考図1

 

 後述するようにヒルマードクトリンが廃止されたため(米国特許法第102条(d))、米国特許法第102条(a)(2)の「公開」には、国際特許出願(先出願)の国際公開(後公開)が含まれる(WIPO公開公報)。

 

 すなわち、米国特許法第102条(a)(2)の公開とは、

米国特許、

米国公開公報、及び

WIPOにより公開された出願

の3つとなる。

 

 また日本国特許法第29条の2かっこ書きと同じく、同一発明者には米国特許法第102条(a)(2)の規定は適用されない。

 

 ガイドラインによれば、先行技術に係る米国特許、米国公開特許公報、またはWIPO公開出願の発明者と、審査または再審査対象の出願の発明者との間に何らかの相違があれば、当該米国特許、米国公開特許公報、またはWIPO公開出願は、米国特許法第102条(a)(2)における「他の発明者を挙げており」の要件を満たす(102条(b)(2)の例外を除く)。

 

 たとえ、何人かの発明者が、先願である米国特許、米国公開特許公報、またはWIPO公開出願と、後に出願された審査または再審査対象の出願とで共通したとしても、当該米国特許、米国公開特許公報、またはWIPO公開出願は米国特許法第102条(a)(2)における「他の発明者を挙げており」の要件を満たす(102条(b)(2)の例外を除く)。

 

 従って一部一致ではなく、先願及び後願の発明者が完全に一致していない限り拡大先願の地位規定である米国特許法第102(a)(2)が適用される。

 

 

改正前

改正後

第102 条 特許要件;新規性及び特許を受ける権利の喪失

次の各項の一 に該当するときを除き,人は特許を受ける権利を有するものとする。

(a) その発明が,当該特許出願人による発明の前に,合衆国において他人に知られ若しくは使用されたか,又は合衆国若しくは外国において特許を受けたか若しくは刊行物に記載された場合,

第102 条 特許要件;新規性

(a)新規性;先行技術-次の各項の一 に該当するときを除き,人は特許を受ける権利を有するものとする。

 (1)クレームされた発明が、有効出願日前に特許されるか、刊行物に記載されるか、または、公然使用、販売、その他公衆に対し利用可能となった場合

 (2)クレームされた発明が米国特許法第151条(特許の発行)の規定に基づき登録された特許に記載されるか、または、米国特許法第122条(b)(特許出願の公開)の規定に基づき公開された出願に記載されており、当該特許または出願が、場合によっては、他の発明者を挙げており、かつ、クレームされた発明の有効出願日前に有効に出願されている場合

 



[1] MPEP § 706.02(VI) (8th ed. 2001) (Rev. 8, July 2010)

[2] Riverwood Int'l Corp. v. R.A. Jones & Co., 324 F.3d 1346, 1354 (Fed. Cir. 2003);

 

(第2回へ続く)

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