日経記事;『富士通、半導体「後工程」3工場売却』に関する考察 - 各種の新規事業・事業拡大 - 専門家プロファイル

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日経記事;『富士通、半導体「後工程」3工場売却』に関する考察

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皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

9月1日付の日経新聞に、『富士通、半導体「後工程」3工場売却 宮城・会津・九州、受託会社に 経営資源、ITサービスに集中』 のタイトルで記事が掲載されました。

本日はこの記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『富士通の半導体事業子会社、富士通セミコンダクター(横浜市)は31日、半導体を最終製品に組み立てる「後工程」の3工場を売却すると発表した。

同社は最新鋭の三重工場(三重県桑名市)を売却する交渉も進めており、会津若松の2工場を除く全ての生産拠点を切り離す計画。富士通は半導体事業を中核事業から外し、IT(情報技術)サービス事業に経営資源を集中する。

「後工程」を手がける宮城(宮城県村田町)、会津(福島県会津若松市)、九州(鹿児島県薩摩川内市)の3工場を、ジェイデバイス(大分県臼杵市)に売却する。売却額は公表していない。工場譲渡後はジェイ社に生産を委託する。

2012年中に宮城、会津工場を譲渡し、九州工場はジェイ社の大分・福岡県内の3工場に設備を移管する。宮城、会津の従業員約1200人はジェイ社が雇用を維持。九州工場の約700人はジェイ社に転籍するか富士通グループ内で再配置する。

富士通セミコンは半導体生産の中核部分で、回路を形成する「前工程」工場の売却も進めている。自動車向け半導体を製造する岩手工場(岩手県金ケ崎町)は10月にデンソーに売却、三重工場も半導体受託製造で世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)と売却交渉を進める。

自社運営拠点は会津若松の前工程2工場のみとなる。

同社は設計・開発を自ら担う一方で、自前の生産施設を最小限にし大部分を外部に生産委託する「ファブライト型」の半導体メーカーを目指しており、生産拠点の切り離しで固定費削減を図る。

富士通の半導体事業の2012年3月期の売上高は東日本大震災なども響いて前の期比5%減の3271億円となり、営業損益は100億円弱の赤字だったようだ。多額の設備投資負担や固定費の重さから、半導体事業はグループの収益圧迫要因となっている。

富士通はデータセンターなどITサービスに軸足を移し、部品製造は切り離す戦略を鮮明にしている。09年にはハードディスク駆動装置(HDD)事業を東芝に売却した。』


本日の記事は、富士通の集中と選択が、半導体製造の本体事業からの切り離しの視点からみると最終段階に入ったことを示しています。

今までの報道記事からみますと、富士通は、米IBMと同じようにソフトウエアに経営資源を集中し、データセンターを含めたITサービス事業を強化する方針です。

富士通自身は、今後も半導体事業を継続していきますが、自社で工場を持たないファブレス事業として展開します。

自社内に半導体工場のような設備を持たないことで固定資を圧縮できますので、半導体の売上を一定規模確保できれば黒字化することは可能です。

製造受託企業としては、台湾や中国企業が代表事例として知られています。

国内でも、中小企業を中心に開発や製造を専門に受託する企業も増えています。私の支援先企業の中で、開発と製造を外部に委託して、OEM製品として供給してもらい、自社ブランドを付けて販売しているところがあります。

記事にありますジェイデバイスは、回路を形成したウエハーを切り出して最終製品のチップに組み立てる半導体の「後工程」の受託製造会社です。

2002年に仲谷電子製作所と東芝の子会社が合併して発足した会社で、2011年度の売上高は447億円で東芝が10%出資しているとのこと。

国内の大手企業の中にも、ジェイデバイスのように特定分野の製造受託を行う専門会社が増える可能性はあります。


一方、富士通が今後のコア事業とするデータセンターやITサービス事業は、現在世界市場で成長を遂げています。

当該事業を強化しコアとするには、市場が急成長しています現時点が最適です。のんびり構えていると、競合他社に市場や顧客を奪われます。

データセンター事業で先行している米国では、データセンターに情報を預けてインターネット経由で利用する「オンラインストレージ」を巡る競争が激しくなっているとのこと。

国内では、米ドロップボックスや米エバーノートが個人用途用にオンラインストレージ事業を行っています。記事によると、両社は個人用途に加えて業務用途の新市場開拓を行うために積極的な投資を行う計画です。

投資会社もオンラインストレージ事業の成長性を確信し、積極的な投資に応じる姿勢です。

また、マイクロソフトやグーグルなどの大手ITベンダーもデータセンターを活用したオンラインストレージ事業を強化中です。

今後、急成長するオンラインストレージ事業分野では、激しい競争が展開されます。これらの企業は、世界市場で事業していますので、当然日本でも同じ競争が起こります。

富士通は、既に医療分野などでのクラウド事業を行っていますが、オンラインストレージ事業も急速に強化しないと、米国企業に先行されて市場を奪われる可能性があります。

データセンターを活用したオンラインストレージ事業のポイントは、提供価格、ストレージ容量、データセンターの設置場所、安全・信頼性の保証です。

どの用途であっても、上記ポイント全てで競合他社より魅力的でないと、顧客は選んでくれません。

業務用途である場合、安全・信頼性の保証が最重要になる場合があります。医療データや公的機関が保有する個人情報を含むデータなどは、データセンターを活用したオンラインストレージ化が普及し始めています。

どのデータも絶対になくしたり盗まれてはいけないものです。富士通のような国内ITベンダーが、これらのデータストレージ事業に関して、国内顧客向けに最優先で保証する必要のあるのは、安全・信頼性です。

データセンターの設置場所や二重・三重の安全策などで、差別化・差異化を行うことで、国内顧客の信頼を得られる可能性があります。

2012年6月に、レンタルサーバ事業者のファーストサーバが障害で顧客のメールおよびウェブデータを消失した問題がありました。

障害はともかく、データセンター事業者によるデータの消失というのは初めて聞く話でした。この事業者は価格の安さを売りにしていましたが、低コスト化のためにバックアップ策を講じていなかったようです。

このようないい加減なクラウド事業者は、市場から淘汰されるべきですが、データセンターを活用する企業も価格の安さだけでなく、安全・信頼性が確保されているかどうか慎重に見極める必要があります。

また、データセンターの設置場所も、国内かどうか、或いは、国内のどの地域なのか確認する必要があります。

例えば、データセンターの設置場所が海外の場合、緊急事態が発生した時にデータセンターのデータにアクセス出来ないことになるリスクがあります。

国内でも地域によっては、最悪の場合、地震や津波でデータが失われる可能性があります。(勿論、データセンター事業者は、二重、三重の安全策を講じているのが基本ですので、完全に失われるリスクは小さいと考えて良いです。。。)

上記に書いた業務用途の重要なデータは、海外のデータセンターに置かないことがリスク対策で必要になります。

富士通が国内でオンラインストレージ事業を行う場合、提供価格、ストレージ容量、データセンターの設置場所、安全・信頼性の保証の各ポイントをベストミックスした事業モデルで提供する必要があります。

勿論、他社も同じように考え・実行してきますので、富士通はどう差別化した事業モデルを構築・実現するか注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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