米国特許法改正規則ガイド 第6回 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
弁理士

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:特許・商標・著作権

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

米国特許法改正規則ガイド 第6回

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 特許・商標・著作権
  3. 特許・商標・著作権全般

米国特許法改正規則ガイド 

 第6回 

河野特許事務所 2012年9月11日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

1.概要

 米国特許商標庁(以下、USPTO)は2012年8月3日査定系再審査(AIAセクション6)に関する最終規則を公表した。本規則は2012年1月初旬に案が公表され、2ヶ月間の意見募集期間を経て最終的に内容が確定した。改正米国特許法に基づく査定系再審査(EPR: Ex Parte Reexamination)及び本最終規則は9月16日より施行される。

 

2. 査定系再審査において提出することが可能な書類の拡大(AIAセクション6)

(1)概要

 EPRは提出要件について規定する第301条のみが改正された。EPRにおいては、先行技術に加えて、裁判所における特許権者の供述をも提出することができるようになった。

 なお、EPRは何人も申し立てることができ、利害関係は要求されない。

 

(2)提出することができる書類

 何人も以下の書類を提出することができる(301条)。

 (i)特定の特許のあるクレームの特許性に関連があると信じる特許または刊行物からなる先行技術、または、

  (ii)連邦裁判所またはUSPTOの手続において提出され、特許権者が特定特許クレームの範囲について見解を示した特許権者の供述

 

(3)提出の効果

 EPRで提出した先行技術及び供述書面は、特許に関するUSPTOのファイルの一部となる。なお、提出者の身元は、包袋書類から排除され秘密が維持される(301条(e))。

 米国特許法第304条(特許商標庁長官による再審査命令)、314条(IPRの開始)または324条(PGRの開始)に従い命じられまたは開始された手続における特許クレームの適切な意味を判断することを目的としてUSPTOに利用される(301条(d))。

 

(4)提出要件

 供述を提出する者は以下の要件に従わなければならない。

(i)当該供述には、この供述書面に対応する手続きに係る証拠、訴答書面、またはその他の全ての書面を添付しなければならない。

(ii)以下の点を特定すること(規則1.501(a)(3))。

  (a)特許権者が各供述を提出した裁判所及び手続;

  (b)当該供述を含む特定の書面及び当該書面の一部;及び

  (c)提出される各供述が、特許権者が特許クレームの範囲について見解を示した供述である理由。

(iii)少なくとも一つの特許クレームに対し、(a)(1)に基づき提出される先行技術と、本セクションパラグラフ(a)(2)に基づき提出される供述書面及び添付情報とを適用する適切性及び方法に係る書面による説明を含めなければならない。

(iv)特許権者による提出の場合、クレームが本セクションパラグラフ(a)(1)に基づき提出された先行技術、または、本セクションパラグラフ(a)(2)に基づき提出された供述書面及び添付情報に対しどのように相違するかの説明を含めることができる。(規則1.501(b))

 

(5)匿名での請求

 査定系再審査のメリットは匿名で請求することができる点にある。PGR(付与後レビュー)及びIPR(当事者系再審査)では匿名で請求することができず、競合他社を刺激したくない場合は、査定系再審査を選択することとなる(規則1.501(d))。

 

(6)送達証明書

 特許権者以外の者が提出する場合、提出物のコピー全体が特許権者に規則1.33(c)に規定する住所宛に送達されたことの証明書を含まなければならない(1.501(e))。

 

(7)禁反言

 米国特許法第315条(e)(1)( 当事者系レビューの禁反言)または米国特許法第325条(e))(付与後レビューの禁反言)の法定禁反言規定により、EPRの請求が禁じられていないことを示す証明書を提出しなければならない(規則1.510(b)(6))。これは、IPR及びPGRにおいて禁反言が生じている場合は、EPRを請求できないことを明確化するためである。

 匿名の維持を希望する場合、代理人を通じてEPRを行うことが必要となる。代理人は、禁反言が生じていないことを証明することにより手続を行う。逆に個人でEPRを行う場合、送達証明書へのサインが必要となるため、匿名を維持することができない。

 このように匿名での手続を希望する場合、代理人を通じてEPR手続を行うことが必要である。

 

(8)供述提出後の手続

 審査官は査定系再審査請求書の提出日から3月以内に、特許性に関する実質的で新たな問題が提起されているか否かを判断する。実質的で新たな問題が提起されている場合再審査が開始される(米国特許法第304条)。ただし、審査官は当該判断に当たり供述書面を考慮してはならない旨規定されている(規則1.515(a))。つまり、審査官は今回の法改正により追加された供述書面とは無関係に、実質的で新たな問題が提起されているか否かを判断しなければならない。

 再審査手続が命じられた後、提出した供述は、特許庁長官により特許クレームの正確な意味を解釈するために使用される(規則1.552(d))。

 

(9)施行時期

 2012年9月16日から施行される。本改正法は施行日前、施行日、及び施行日後に発行された特許に適用される。

 

(10)最終規則

改正最終規則

規則1.501 特許ファイルにおける先行技術及び供述書面の引用

 (a)特許権利行使可能期間中はいつでも、何人も、本セクションに基づき以下の情報に関して書面によりUSPTOに提出することができる。

  (1)提出を行う当該者が特許性に関連あると信じる特許または刊行物に係る先行技術

 (2)連邦裁判所またはUSPTOの手続において特許権者により提出され、特許権者が特定特許クレームの範囲について見解を示した特許権者の供述

本パラグラフに基づき提出される供述には、この供述書面に対応する供述を提出した手続きに係る証拠、訴答書面、またはその他の全ての書面を添付しなければならない。また、本パラグラフに基づく当該供述書面及び添付情報は、適用可能な保護命令の対象となる情報を省くよう編集した形態で提出しなければならない。

 (3)本セクションパラグラフ(a)(2)における提出は以下を特定しなければならない。

  (i)特許権者が各供述を提出した裁判所及び手続;

  (ii)当該供述を含む特定の書面及び当該書面の一部;及び

  (iii)提出される各供述が、特許権者が特許クレームの範囲について見解を示した供述である理由。

(b)説明:本セクションパラグラフ(a)に従う提出は;

 (1)特許包袋書類の一部分とすべく提出するために、少なくとも一つの特許クレームに対し、本セクションパラグラフ(a)(1)に基づき提出される先行技術と、本セクションパラグラフ(a)(2)に基づき提出される供述書面及び添付情報とを適用する適切性及び方法に係る書面による説明を含めなければならず;また

 (2)当該提出が特許権者によりなされる場合、クレームが本セクションパラグラフ(a)(1)に基づき提出された先行技術、または、本セクションパラグラフ(a)(2)に基づき提出された供述書面及び添付情報に対しどのように相違するかの説明を含めることができる。

(以下、省略)

規則 1.510  査定系再審査の請求

 (a) 米国特許法第315条(e)または325条(e)(1)(禁反言)で禁止されている場合を除き、何人も,特許の実施可能期間中はいつでも,特許商標庁による,§1.501に基づいて引用された先行技術特許又は刊行物を基礎とした,特許のクレームに関する査定系再審査を求める請求書を提出することができる。請求書には,§1.20(c)(1)に定められている再審査請求手数料が添付されなければならない。

 

(b)再審査請求書は,次の部分を含まなければならない。

* * *

  (2)再審査請求の対象とされる全てのクレームの特定,及び再審査請求の対象とする全てのクレームに対して,引用されている先行技術を適用することの適切性及び方法に関する詳細な説明。

特許権者の各供述及びセクション1.501(a)(2)に従い提出された前記詳細な説明に依拠する添付情報。再審査請求は、ある特許クレームの正確な意味をそのクレームに適用される先行技術に関連して決定するために、当該供述がどのように使用されるか、また各関連クレームがどのように解釈されるかについて説明しなければならない。

適切な場合は,再審査を請求する当事者は,クレームが引用されている先行技術と如何に異なるかも指摘することができる。

(以下、省略)

規則1.515査定系再審査請求についての決定

* * * * *

 (a) 審査官は,査定系再審査請求書の提出日から3月以内に,その請求を考慮し,その請求書及びそこに引用されている先行技術によって,特許の何れかのクレームに影響を及ぼす,特許性に関する実質的で新たな問題が提起されているか否かを,他の特許又は刊行物を考慮して又は考慮しないで,決定する。

規則1.501(a)(2)(供述書の提出)の規定に従い提出された供述及び添付情報は、当該請求に対する審査官の決定において審査官により考慮されない。

審査官の決定は,決定の時点において有効なクレームを基礎とするものとし,特許に関する庁のファイルの一部となり,§1.33(c)(特許出願,再審査手続及びその他の手続に関する通信)に定められている宛先に名宛して特許所有者に対し,及び再審査を請求した者に対して付与または郵送される。

規則1.552 長官による争点についての決定

* * * * *

(d) 規則1.501(a)(2)(供述書の提出)の規定に従い提出された特許権者の供述及び添付情報で、再審査される特許において記録されるものはすべて(当該特許の再審査ファイルも含む)、再審査手続が命じられた後は、特許及び刊行物を適用するに当たり、特許クレームの正確な意味を解釈するために使用することができる。

 

                                                              以上

ソフトウェア特許に関するご相談は河野特許事務所まで

 

 |  コラム一覧 | 

このコラムに類似したコラム

"ビジネスモデル特許"に対する誤解 河野 英仁 - 弁理士(2012/12/12 14:00)

米国特許法改正規則ガイド 第10回 (第5回) 河野 英仁 - 弁理士(2013/04/22 14:00)

米国特許判例紹介: Web上における刊行物とは 河野 英仁 - 弁理士(2013/02/05 14:00)

米国特許判例紹介 (第3回) 河野 英仁 - 弁理士(2013/01/08 14:00)