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中国特許判例紹介:中国における間接侵害の認定 (第1回)
~一部品を欠く場合の侵害認定~
河野特許事務所 2012年9月4日 執筆者:弁理士 河野 英仁
約克広州空調冷凍設備有限公司
上訴人、原審被告
v.
張委三
被上訴人、原審原告
1.概要
特許権侵害が成立するためには被告のイ号製品が特許発明の構成要件の全てを具備していることが必要とされ、イ号製品が構成要件の一部を欠く場合は、原則として特許権侵害は成立しない。イ号製品が特許発明の主要な構成要件を具備している場合は間接侵害の適用の有無を検討する。
しかしながら、中国では間接侵害に関し、専利法、実施細則及び司法解釈の何れにも規定がなされておらず、その適用要件は明確にされていない。本事件においては、被告が室内機と室外機とを接続する制冷連接管を欠いた状態の冷熱水ユニットを販売していた。
人民法院は、イ号製品は特許請求の範囲に記載された制冷連接管を欠くものの、室内器及び室外器には制冷連接管の接続口が設けられていたこと、及び、説明書に制冷連接管を取り付けるよう記載していたことから、被告の特許権侵害を認定した[1]。
2.背景
(1)特許の内容
張委三(原告)は“分体式冷熱水ユニット”と称する発明特許権ZL00103523.1(以下、523特許という)を所有している。523特許は2000年3月27日に出願され、2004年3月17日に登録公告された。
争点となった請求項1は以下のとおりである。
“1、制冷システムの圧縮機(1)、室外側空気—制冷剤熱交換器(3)、四通スイッチングバルブ(2)、室内側水—制冷剤熱交換器(5)及び循環水ポンプ(6)を含む分体式冷熱水ユニットにおいて、
前記圧縮機(1)、室外側空気—制冷剤熱交換器(3)及び四通スイッチングバルブ(2)はひとつの箱体内(A)に設置され、前記室内側水—制冷剤熱交換器(5)及び循環水ポンプ(6)は他の一つの独立した箱体内(B)に設置され、2つの箱体間は、制冷連接管(8)を通じて連接され一つの制冷システムを構成していることを特徴とする分体式冷熱水ユニット。
参考図1は制冷システムの構成を示すブロック図である。
参考図1 制冷システムの構成を示すブロック図
従来の冷熱水ユニットは、圧縮機、室外側空気—制冷剤熱交換器、室内側水—制冷剤熱交換器,及び循環水ポンプの全てをひとつの箱体内に収めており,通常は室外におかれていた。そのため、室外温度がO℃以下となった際の、凍結防止措施をとる必要があった。また箱体を室内に設置するとすれば、室外側空気—制冷剤熱交換器における冬季の冷空気及び夏季の熱空気を室外に排出する手段を講じなければならないという問題もあった。
本発明では箱体(A)に、圧縮機(1)、室外側空気—制冷剤熱交換器(3)及び四通スイッチングバルブ(2)を設置し、別の箱体(B)に室内側水—制冷剤熱交換器(5)及び循環水ポンプ(6)を設置する。そして、箱体(A)と箱体(B)とを制冷連接管(8)を通じて連接することとしたものである。
(2)訴訟の経緯
約克公司(被告A)は、“YSAC10HA”と称する風冷冷水ユニット(イ号製品)を製造しており、八方一鴻公司(被告B)はイ号製品を販売していた。2007年1月9日,原告は被告Bから、15 260元の価格でイ号製品を購入した。
原告はイ号製品の製造販売行為は523特許の侵害に当たるとして、被告A及び被告Bのイ号製品の製造販売の差し止めを求めて、北京市第二中級人民法院に訴えた。北京市第二中級人民法院は原告の訴えを認め、被告Aの製造行為及び被告Bの販売行為の即時停止を命じる判決[2]をなした。被告Aはこれを不服として、北京市高級人民法院に上訴した。
[1] 北京市高級人民法院2008年12月15日判決 (2007)高民终字第1259号
[2] 北京市第二中級人民法院2007年6月20日判決 (2007)二中民初字第2534号
(第2回へ続く)
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