(続き)・・大切な栄養素を摂取しようとする前に、不足している栄養素を特定する必要があります。例えば鉄が不足していることを知るためには、その欠乏症状と検査データを把握することが重要です。病院で行われる血液検査では、鉄や亜鉛、ビタミンB6、アミノ酸などの欠乏の有無がある程度わかりますが、現実には病院で栄養に関する必要な情報が得られるとは限りません。そこには栄養学的な解釈が求められるからです。
例えばフェリチンという項目は体内の鉄の貯蔵量を反映しますが、50ng/ml以下で鉄欠乏を示唆するとされます。またALT(アラニントランスアミナーゼ)は肝機能の指標の一つですが、20IU/L以下でビタミンB6欠乏を示唆するとされます。もっとも病院の通常の血液検査でそのような微量栄養素の欠乏を指摘されることは滅多になく、ごく一部のクリニックで検査結果に基づいた栄養療法が行われているに過ぎません。
従って現実には、日頃の体調不良の性質や食生活上の傾向から不足している栄養素を類推し、積極的に補給していくことが求められます。例えば疲労や肩凝りなどがひどく、肉や魚をあまり食べない女性の場合には、鉄が欠乏している可能性が高く、一方で風邪と口内炎に頻繁にかかり、野菜不足の男性の場合には、ビタミンB群が欠乏している可能性が高いのです。そして多くの場合には、複数の栄養素が軒並み不足しています。
そのような検討から不足している栄養素を推定できたとして、具体的にどのような食材を重点的に食べればよいのでしょうか。例えば鉄欠乏があると判明した場合、レバーなど鉄を多く含んだ食材をたくさん食べること、また亜鉛が不足している場合には、牡蠣など亜鉛を多く含んだ食材を食べることが勧められています。一方でビタミンB群が豊富な食材としては緑黄色野菜のほか、魚介類や豆類などが挙げられます。
但し栄養素の欠乏は通常、単一の栄養素ではなく、複数の栄養素が同時に欠乏していることが多いものです。例えばよくあるケースとしては、鉄欠乏と亜鉛欠乏、ビタミンB群欠乏などが同時に存在している場合が挙げられます。そのような場合には、これらの栄養素を全体として豊富に含む食生活というものを目指す必要があります。すなわち鉄、亜鉛、ビタミン各種をたくさん含んでいるような食事です。
具体的には、季節の新鮮な野菜や果物、豆類、イモ類、海藻類などをたくさん食べ、鮮度の良い肉や魚を適度に食べる、という食事です。また主食である炭水化物は、可能ならば白米や白いパンではなく、玄米や雑穀ご飯、全粒粉パン、ライ麦パンなどがお勧めです。そのような食事を毎日のように摂ることが出来ていれば、微量栄養素の欠乏から様々な体調不良に悩まされる危険性をぐっと減らすことが期待できます・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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