(続き)・・それでは、そのように「ヘルシー」な食事法によって、本当にスリムで健康な体を手に入れられるのでしょうか。ところが実際には、それほど簡単にはいかないようです。第一に、極端に低カロリーの食事を続けると、代謝のレベルが低下して体内に脂肪を貯め込みやすくなり、かえって痩せにくい体になってしまいます。人体には「飢餓」から身を守る仕組みが備わっており、自己防衛のために代謝のレベルを下げるのです。
また仮に痩せることに成功したとしても、痩せることで更に代謝のレベルが低下して脂肪を貯め込もうとします。また厳しいカロリー制限によって強いストレスを感じ、ある時を境に堰を切ったように食べ始めます。その結果、反動で体重が増加する「リバウンド」に見舞われます。しかも脂肪がダイエット開始前よりも増える一方で、筋肉などのタンパク質が減少することが多く、いわゆる「脂肪太り」になってしまいます。
万難を排して安定的に痩せることに成功したとしても、体調が悪ければ意味がありません。カロリーを極端に減らしてダイエットした場合、カロリーだけでなく各種ビタミンやミネラル、アミノ酸などの重要な栄養素が不足していることが多いものです。そのような栄養素の不足によって、様々な体調不良に見舞われるケースが後を絶ちません。せっかく痩せることに成功しても、健康を害する人がたいへん多いのです。
例えば「スリム」な若い女性に多い体調不良としては、常に体がだるい、手足が冷える、朝起きるのが辛い、めまいや立ちくらみがする、肌荒れがひどい、便秘または下痢に悩まされる、動悸や息切れがする、憂うつな気分またはイライラ感、生理痛や頭痛、肩凝り、腰痛がひどい、など様々な症状が挙げられます。これらは病院やクリニックでは「自律神経失調症」や「プレ更年期障害」などと診断されるような不定愁訴です。
これらの不定愁訴は、スリムな若い女性だけに限定してみられる症状ではありません。肥満傾向のある女性や更年期の女性、さらには男性にも多く見受けられます。多くの人は内科や婦人科などを受診しますが、検査をしてもたいていは「異常なし」とされます。そして年代や性別、症状の特徴などによって更年期障害、仮面うつ病、そして上述の自律神経失調症などと病名が付けられ、各々の症状に合わせて薬が処方されます。
ところが薬を飲んでも個々の症状は一時的に収まりますが、根本的に体調不良が解決する訳ではありません。薬がなくなれば再び不快な症状に見舞われます。何故ならば、根本には栄養素の不足や代謝レベル低下といった問題が横たわっていることが多く、これを解消しなければ本質的な解決にはならないからです。それでは私たちは、どのようにして栄養素の不足を見抜き、栄養バランスを取り戻すことが出来るのでしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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