- 辻 良史
- 筑波大学発ベンチャー(株)サイバー・ヨガ研究所 代表取締役
- 東京都
- 博士(体育科学)
イチロー選手とヨガの行者さんは、どちらの方が体力があるのでしょうか?
と、聞かれれば、多くの方々はイチロー選手と答えると思います。
…しかし、答えは、といいますと、
…「引き分け」です…
体力とは、一般的に筋力とか持久力をイメージされるかもしれません(行動体力)。
しかし、体力には、環境に対する適応能力や、免疫力、温度調節能力、ストレスに対する抵抗力も含まれます(防衛体力)。
ヨガの行者さんには、イチロー選手のような瞬発力や持久力はもちろんありません。
しかし、ヒマラヤでの修行は、ほとんど裸の状態で行いますし、
真冬でも寝る時も布団などありませんから、そのままの状態で寝ます。
このような環境下で日々生活しているのですから、免疫力や温度調節能力、寒さや飢えなどの
外的なストレスに対する体力はとてもあります。
つまり、
筋力や持久力などの行動体力の能力はイチロー選手に軍配が上がり、
寒暖差や飢えに対する防衛体力の面ではヨガ行者に軍配が上がるといえます。
結果、引き分けということです。
(イチロー選手がもし、ヒマラヤ山中でトレーニングを行ったとしたらどのような選手になるのか見てみたい気もしますが…)
ヨガの行者さんは、徹底的にヒマラヤ山中で修行した後は、山を下りてきて、町の中で暮らします。
どんなに厳しい環境下でのトレーニングでも、長い間、そこに居続けるといわゆる適応を起こしていきます。
つまり、適応により心身へのトレーニング効果が薄れてくるのです。
行者さんは、山の中でたった一人で修行に明け暮れる生活を送っていますから、
飢えや乾きに対するストレスにはとても強い反面、
人間関係や金銭がらみでのストレスには弱いといえます。
そういった部分を補う意味でも、新たなストレス環境下に適応すべく、下山をし、一般社会の中で生活を送っていきます。
逆に、修行途中の行者さんや、山での環境に甘んじてしまっている行者さんは、下山をしません。
スポーツの世界でも昔は、国内に留まっていた方が、海外にチャレンジするよりも収入が安定するという点から
海外のツアーなどに積極的に参入する選手はとても少なかった記憶があります。
今は、その点、海外に積極的に出ていく選手が多いですからとても良い傾向だと思います。
これは、やはりドジャースの野茂英雄選手が、そのレールを敷いてくれたおかげだといえます。
どの世界でも、パイオニアと呼ばれる方々は、前例のないことをやるわけですから、
参考にできるイメージ対象が少ない分、不安な気持ちでいっぱいだと思います。
下山をするという行為はとても勇気がいります。
山を下りていく途中で、転んでしまったり、豪雨に見舞われたり、猛獣と出くわすかもしれません。
しかし、下山に向かって一歩踏み出せば、
つまづいて、転がりながらでも下山に向かって進みだします。
逆に、一歩も踏み出さなければ、絶対に下山できません。
…皆様は、山に留まりますか?
それとも、下山という道を選びますか?…
- 株式会社サイバー・ヨガ研究所 代表 辻 良史 -
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