日経記事;"富士通、半導体の三重工場を売却 台湾社と交渉"考察 - 各種の事業再生と承継・M&A - 専門家プロファイル

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 代表
神奈川県
経営コンサルタント
専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

日経記事;"富士通、半導体の三重工場を売却 台湾社と交渉"考察

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 事業再生と承継・M&A
  3. 各種の事業再生と承継・M&A
経営戦略 集中と選択;事業撤退

皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

7月27日付の日経新聞に、『富士通、半導体の三重工場を売却 台湾社と交渉 ルネサス・パナソニックとシステムLSI統合へ』のタイトルで記事が掲載されました。

本日はこの記事に関して考えを述べます。
 
記事の主な内容は以下の通りです。

『富士通は半導体を生産する主力の三重工場(三重県桑名市)を売却する方向で、台湾企業と交渉を始めた。巨額投資が必要な製造部門を切り離したうえで、ルネサスエレクトロニクス、パナソニックとシステムLSI(大規模集積回路)事業を統合する。

統合新会社は半導体の設計開発に特化し、生産を外部企業に委託する。こうした役割分担は世界の主流になっており、日本の半導体産業の復活をかけ事業構造を転換する。

富士通が交渉しているのは、半導体の受託製造を専門にする会社で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)。

三重工場は最新鋭の設備を持ち、デジタルカメラに使う画像処理用の半導体や、スーパーコンピューター「京(けい)」に搭載する演算用半導体などをつくっている。国内屈指の製造技術を持つシステムLSI工場で、約1400人が働く。TSMCには雇用維持を求めていく。

最先端の半導体生産には高価な製造装置が必要になる。技術革新に対応するため、およそ5年に1度のペースで数百億円の投資がかかる。富士通は情報システムの構築などIT(情報技術)サービスに経営資源を集中する方針で、半導体生産へのさらなる投資は難しいと判断した。

ルネサスもシステムLSI拠点の鶴岡工場(山形県鶴岡市)をTSMCに売却する方向で詰めの交渉をしている。富士通とルネサスは年内にも売却交渉をまとめたい意向だ。両社は最先端のシステムLSI生産から撤退したうえで設計開発部門を切り離し、パナソニックを含む3社の事業を統合する。

3社は計約5千人規模の技術者を新会社に移す。産業機器や自動車、スマートフォン(高機能携帯電話)向けのシステムLSIの設計開発を手がけていく。設計した半導体は主としてTSMCに生産を委託する。

富士通など3社は昨年から米受託製造大手のグローバル・ファウンドリーズ(カリフォルニア州)とも工場売却交渉をしてきたが、事業規模が大きく資金力に勝るTSMCに交渉相手を絞った。売却価格は設備や知的財産の評価次第で大きく変わるため、交渉が難航する可能性もある。

米国や台湾など海外では1990年代以降、設計開発と生産の分業が進んだ。TSMCの2011年の売上高は145億ドル(1兆1310億円)。受託製造事業では約5割の世界シェアを持つ。ただ、大手半導体メーカーが自社工場で半導体を内製する日本では、事業展開が遅れていた。』

国内半導体事業の集中と選択に関して、富士通やルネサスが具体的な動きを開始しました。半導体事業のやり方を大きく変えます。

今までは、国内半導体事業は開発、設計、製造の全てのプロセスを内製化して垂直統合方式で事業を行ってきました、

一気通貫で全てのプロセスを内製化することで競争力を維持強化できたからでした。しかし、半導体の技術革新が進んだ結果、1社単独で全てのプロセスを維持することは、投資金額が巨大すぎてリスクが高くなったため、海外企業ではその事業方法を変えていきました。

1社単独で全てを行うのではなく、各専門分野に特化してそれぞれの強みを発揮するやり方です。台湾企業は、製造に特化して受託分を集中化して規模の拡大を図り、巨額の設備投資をカバーする方式で、製造業としての競争力を強めてきました。

国内半導体メーカーは、生産規模の点で台湾企業に遅れを取り、価格や仕様面での劣勢の戦いを強いられてきました。

ここにきて、国内企業は世界の潮流に合せた形での半導体事業展開にやり方を変えてきています。富士通、ルネサスエレクトロニクス、パナソニックと進めてきたシステムLSIの事業統合は、システムLSI工場のTSMCへの売却が実現しますと大きな前進を図れます。

これらの3社は、設計開発に特化した新会社として再スタートするとのことですので、今までの国内半導体事業の集中と選択とは異なったものになります。

記事によりますと、世界の半導体受託生産の規模は2011年で300億ドル(2兆3千億円)であり、TSMCは、世界の半導体製造の約50%のシェアを持っています。このような規模を持っている専門企業と、国内メーカーが製造面での競争をしても勝ち目はありません。

当然のごとく、TSMCは世界で最も安く大量に半導体を生産・供給できるからです。3社はTSMCに生産を任せ、半導体製品の開発・設計に専念する。新たな事業モデルで再出発するとのこと。

合理的なやり方です。3社が設計開発に専念しても、競争は激しく勝ち残るための投資は必要不可欠になります。

例えば、スマホ向けの半導体最大手の米クアルコムは年間2000億円を超える資金を研究開発に投じています。

3社の統合新会社も研究開発に巨額金額を投資して、対応する必要があり、工場を持っていれば開発用資金の確保が難しくなります。米クアルコムは開発・設計に特化したメーカーです。

クアルコムと戦うには、同じ土俵に乗る必要がありますので、開発・設計に特化することで、競争力を高めるための投資に専念できます。

半導体はもの作りにこだわって、垂直統合出来る時代でなかったのに、国内メーカーはその切り替えに時間がかかりました。

乗用車の場合も同じで、1社単独で環境対応車を開発・製造することは巨額の投資が必要になることから、連携;アライアンスを組んでリスク分散しながら各社が強みを発揮して事業しています。

半導体事業も同じです。高機能化・高性能化を実現しながら、低価格品を出していくためには、開発・設計や製造に専業化した企業同士で連携;アライアンスを組んで行っていくやり方が合理的です。

3社の統合新会社は、これからの国内の半導体事業のやり方の流れの一つを作るとみています。集中と選択を加速して、是々非々ベースで国内半導体事業の再構築を期待します。

多くの国内半導体企業は、コスト高や開発投資の観点からで維持出来ない工場は売却などして、開発・設計に集中化して、知恵と創意で世界の勝ち組になることが重要です。

3社の統合新会社の動きと、他社の事業展開に注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(神奈川県 / 経営コンサルタント)
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 代表

起業・企業存続の為の経営戦略立案・実行と、ビジネススキル向上

起業及び、事業拡大や経営合理化を目指す企業に対して経営コンサルを行います。大手メーカーで得た経験を活かし、補助金活用、アライアンスやM&A、市場分析に基づいた事業戦略策定・実行や事業再生を支援します。OJT研修でのビジネススキル向上を支援します。

カテゴリ 「経営戦略」のコラム

このコラムに類似したコラム

日経記事;"日産、国内生産能力15%減 神奈川の1ライン停止"に考察 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2012/06/21 09:47)

日経記事;"パナソニック、本社人員半減 次期社長が実施"』考察 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2012/05/29 07:10)

日経記事;"エルピーダ,米マイクロンが買収へ 3000億円支援"考察 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2012/05/06 10:57)

日経記事;"エルピーダ,東芝とマイクロンの争奪戦に支援入札"考察 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2012/03/30 11:11)

日経:日本電産,米エマソンのモーター事業買収発表に見る経営戦略 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2010/08/18 10:51)