新築物件?or中古物件? - お金と資産の運用全般 - 専門家プロファイル

巻口 成憲
リズム株式会社 専務取締役
東京都
不動産投資アドバイザー

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対象:お金と資産の運用

柴垣 和哉
(ファイナンシャルプランナー)

閲覧数順 2024年04月24日更新

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新築物件?or中古物件?

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皆様こんにちは、リヴァックスの巻口です。

本日は新築物件と中古物件の比較をおこないたいと思います。

こうした比較においては、他方の極端な例だけを取り上げて、やれ新築が良い、

やれ中古が良いと断じている記事を本当によく見かけます。多くの場合がデータ

の裏付けが一切ないまま論じているため、単なるポジショントーク終始し、投資家

にとっては一片のメリットもない情報となってしまっています。

「中古は金融機関からの評価が受けにくい」や「新築だから賃貸づけが安心」と

いうような意見は実は何の意味もありません。中古でも金融機関の評価が高い

物件もありますし、新築でも賃貸がつきにくい物件も当然あるからです。

重要なのは必要なデータをきちんと理解したうえで、成功確率の高い手段を取捨

選択していくという考え方です。

新築物件と中古物件を「全体的に」比較するというのは、実はあまり意味のある

ことではありません。投資ですから、本来は新築中古という属性にかかわらず、

投下資本に対して得られるリターンが適正かどうかで判断すべきだからです。

リターン効率という観点から見た場合に、データを使って「構造的に」新築中古

を比較することは可能です。

1.   新築プレミアムの分だけ構造的に取得価格は新築物件が割高

まずこの点はだれもが合意できる「事実」です。図1はリクルートの住宅情報誌

からのデータを分析した23区のマンション売買価格の経年減価の度合いですが、

明らかに中古相場ラインと新築価格とでは新築プレミアムの分だけ大きな乖離が

認められます。ここからスタートしましょう。

対して得られるリターンはどのようになっているかを説明しているのが図2です。

同じくリクルート社の住宅賃料価格情報がベースとなっています。データからは

非木造賃貸住宅は初年度から5年目で6%下落、5年から10年で2.6%下落

10年から20年で2.5%下落という数値結果になっています。年数を経るごとに

価格下落の割合は縮小されていることが見て取れます。

これらのデータからわかることは新築物件の高い投資部分を回収できるだけの

賃料プレミアムは当初の数年にとどまるという結論です。最初の入居者がでた

あとは中古相場に収斂するため賃料は大幅に引き下げられるということになります。

つまり

2.   リターンである賃料は新築プレミアム価格を吸収できるほど得られない

ということです。

1と2は構造的な事実ですから、それを覆すほどのプラスアルファがなければ

投資効率としては「新築<中古」であるというのは揺らぐことのない事実です。

プラスアルファというのはつまり6%の賃料下落分を吸収できるほどのリターン

の裏付けということですが、そもそも、ほとんどの新築投資不動産デベロッパー

は駅別のマーケット経年減価率自体をデータとしてもっていませんので、結局は

営業トークで押し切ることでごまかしてしまっているのが現実です。

当社がもっている130万件のデータ分析結果では、たとえ価格下落率が緩やか

な地域においても新築分6%下落を吸収できるような地域は非常に限定的であり、

その地域に新築物件を供給することは、現時点ではほぼ不可能という結論です。

不動産業界はKKD(感と経験と度胸)で勝負といわれてつづけてきた業界です。

投資家にとって正確な判断ができる材料を開示していない、持ち合わせていない

という業界構造は問題と言わざるをえません。

プロや専門家を名乗る以上、正確なデータに基づく判断こそが有益な情報になり

うるというスタンスで投資提案をしていくべきではないでしょうか。

業界全体のスキルアップがもとめられている時代になっています。

 

※データ出所:「Nonlinearity of Housing Price Structure」(2005)shimizu

                 「住宅市場の投資特性」(2008)清水

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