- 佐藤 昭一
- NICECHOICE 佐藤税理士事務所
- 東京都
- 税理士
対象:税金
いままで制度としての利用者が年数名しかいなかった特定支出控除の制度が、平成24年の税制改正で特定支出の範囲の拡大と控除方法の見直しとなりました。その結果、今まで認められなかったサラリーパーソンのスーツ代や交際費などを経費として計上することが可能となりました。しかし、ハードルが高いため実際に申告をした方が良い方は全体の1割にも満たないのではないかと思います。
改正の概要
特定支出の範囲の拡大
特定支出(給与の支払者により補填される部分を除く)の範囲は次の通りとなりました。
1.通勤のための支出(勤務先が負担しない部分のみ)
2.転任に伴う転居のための支出(勤務先が負担しない部分のみ)
3.職務上の研修のための支出(勤務先が負担しない部分のみ)
4.資格取得のための支出(税理士等の特定の資格取得費用を含む)
改正により税理士等の資格取得費用も特定支出の範囲内に含まれることになりました。
5.帰郷等のための支出
6.勤務必要経費(職務と関連のある図書の購入費・職場で着用する衣服の衣服費及び職場に通常必要な交際費)
サラリーパーソンのスーツ、書籍、交際費などで仕事で使用するものが特定支出の範囲に含まれることになりました。ただし、6については65万円を超える場合は65万円が上限となります。
計算方法の見直し
特定支出控除の制度は給与所得控除に一定の金額を加算して控除する制度となります。その一定の金額の計算方法も合わせて変更となりました。
特定支出の額の合計額のうち、次の収入金額の区分に応じてそれぞれに定める金額を超える場合には、その超える金額を給与所得控除に加算することになりました。
給与等の収入金額 1500万円以下 その年中の給与所得控除額の2分の1相当額
1500万円超 125万円
具体例で計算してみます。
年収600万円 特定支出控除の額 資格取得費30万円、勤務必要経費80万円とします。
給与等の収入金額が600万円の場合、給与所得控除額は174万円です。その2分の1の87万円が足切り額です。特定支出の額の合計額が87万円以下の場合には特定支出控除の適用はありません。
特定支出の額の合計額を計算します。勤務必要経費は80万円で65万円の上限を超えているため65万円となります。資格取得費の30万円+65万円で95万円が特定支出の額の合計額となります。
特定支出の額の合計額95万円が足切り額87万円を超えていますので特定支出控除の適用があります。
控除額は95万-87万=8万円となります。
給与所得控除174万円に8万円をプラスした182万円が給与所得控除の額となります。
他に控除がないとするとこの方の所得税と住民税の合計税率は30%になりますので、8万円×30%=24,000円税金が安くなります。
勤務必要経費の計上が認められることと資格取得の費用の範囲が拡大されたため、適用者が若干増えるのではないかと予想されます。
いつから適用されるのか
平成25年分以後の所得税及び平成26年度分以後の個人住民税から適用となります。資格取得の費用や勤務必要経費についての細かな通達は25年に実際に制度が始まってからでてくると思います。
まずは、来年からはスーツ代や飲食代、本代の領収書はとりあえず1年分保存しておいた方いいと思います。
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