いい家ってなんだ(家造りに立ち向かう心の話)(2) - 住宅イメージ - 専門家プロファイル

樅木 貞夫
有限会社修景社設計工房 代表取締役
大阪府
建築家

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対象:住宅設計・構造

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いい家ってなんだ(家造りに立ち向かう心の話)(2)

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住宅

<住宅の目的>。

建築にはそれぞれ用途がありまして、比較的目的がはっきりしている建物もあります。

たとえば病院。命を救う、病気や怪我を治す、回復をめざす。そのことを目標として機能性、可変性、プライバシー、快適さという性能がそれを支えます。儲かること、というのは副産物として把握しなければなりません。

たとえば店舗。この建物の目的は儲けることです。飲食店なら、儲けるために、味や,空間の快適性に工夫を凝らします。

 一方、住宅はというと、これはなかなか厄介です。「雨露がしのげればいい」といってもそれが全てではない。ステータスシンボルという側面もありますが、ほんの一面でしかない。それなら「家族が幸せになるための器だ」とバッサリとらえても、「そもそも幸せってなんだ」って問題は昔から解決されていないので、言い回しとしては正しいけれど何も得るところが無い、何も示してくれない。なにか住宅というものをわかりやすく把握する方法はないものか。

<住宅の擬人化ということ。>

住宅というものはそれに希望を託し、現実に直面し、出来上がってからは、いやでも日々触れ合うものであります。そう考えると、住宅というものの有様にまるで、(よしあしは別にして)家族というものに似た姿を見い出します。よき住宅とは、よき夫、よき妻、よき母や父のイメージとするとわかりやすくなるのではないでしょうか?

さらにこんな考えかたはどうでしょう。

予算とスペースに限りがあるとき、しかしその敷地のある方角に一本の樹木を配置することによりプライバシーが確保できる窓が得られ、気持ちよい陽光と広がりがうまれること、それが見つかったならそのことに出来るだけ予算を割いて、他はやむなくあきらめることで、すばらしい小住宅が出来るというパターン。一方、多くの希望を捨てられず、すべてを盛り込みすぎ、かえってなんの個性もない住宅になってしまう。 これはまるで子育てのようではないでしょうか?

住宅のデザインについては、どうとらえましょう?

デザインは重要です。それを維持することは日常のなかに、適度の緊張をあたえ感性を豊かにし、一方で住む人の精神的強さも育むものであると思います。それは、子にとって、自身を律しながらもやさしい親の姿にたとえられます。しかし、たとえば、奥さんが、家のなかでも隙のないファッションと化粧を施したよそいきの姿で毎日おられたのでは、奥さんもご主人も疲れてしまいます。住宅のデザインというものも、そのようにとらえてみるとわかりやすくなるのではないでしょうか?

住宅にも内向け、外向けの顔があります。

人は家に帰ってくつろぎます。ときにはぐったりとだらしなく。しかし朝、出かけてゆくときはまた身だしなみをととのえて社会の一部となります。家も同様です。家族でくつろぐ居間、プライバシーの守られた寝室や浴室、見せたくない物置、一方家の外観は町の中の一部で、社会に向けた顔です。

家というものは、把握しにくく判断に困るものですが、一生一度、建てた経験のない方でも、考えて決定してゆかねばならない困ったものです。しかし、ご自身が、日々付き合う人にたとえれば、少しはわかりやすくなるものだと思います。家を造るには、子を育てるように、長年連れ添いたい伴侶のような、また自分自身の分身、そのように考えると、この住宅という難解なものを理解する助けになるのではないでしょうか?人間関係と同じで無理やわがままを通すと悪い結果を生むこともあります。

性能についてはわかりやすくなりました。

住宅の耐震、断熱、気密、エコ、等は、人にたとえるなら、肉体的な強さや、能力のことでしょうか。これらは比較的わかりやすいのです。学校で成績が数値化されたように、住宅の性能評価も数値化しやすい。人の全体像がそれらのことだけではなく、やさしさ、思いやり、明るさ、つつしみ、そして思慮深さ、大切な記憶、潔さ等々も重要な一面としてとらえねばならない。そしてそれら人格にかかわる表現はそのまま、住宅の姿に通ずるものでもあり、住宅の重要な一面でしょう。そして難解な部分です。

そのように住宅をとらえたからといって、すぐ解決策が得られるわけではありません。しかし、

専門家に依頼するにせよ、自分で決めてゆくにせよ、すぐ間取りや形の話にはいらないで、どんな住宅にしたいか考えるべきです。コンセプトというやつです。これがしっかりしていないと判断がぶれて、変更が堂々巡りすることがあります。しっかりしたコンセプトをつくるために、以上、述べましたことが少しはお役にたつのではないでしょうか?


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