最近注目されることが多い電力会社がらみの話題を見ていると、やっぱり企業に競争がないとダメなんだなぁと感じます。一方、企業という人の集まりで成果を上げようとすると、それはチーム力の勝負であり、協調という要素も大切になってきます。会社が業績を上げていくには、「競争」と「協調」を両立させることが必要であるとつくづく思います
競争ということでいうと、企業の人事制度などでは、他人との競争心を刺激することによって社員をモチベートしようという部分がありますが、最近このあたりが機能しなくなってきているように感じます。
例えば、ゴルフの石川遼選手のような若い世代のアスリートは、負けず嫌いだし勝負にもこだわりますが、競争相手はライバル選手というような「人」が対象ではなく、自分自身の心や技術や、ゴルフの場合だとコースなどが競争相手と思っているように見えます。野球選手でもサッカー選手でもそうなのですが、「誰々には負けたくない」というような、他人に対する単純な競争心ではない思考の人が多くなっているように感じます。
これは企業の中でも同じで、「アイツには負けたくない」というような感情が希薄になっていることはもちろん、他人と比較されることでかえってやる気を失う者もいるようです。
しかし、上司の側は未だに「同期の○○はもうリーダーなんだから、お前も頑張れ」「アイツにできるんだからお前にもできる」など、他人との比較を持ち出すことがまだまだ多いように思います。制度の方でも同じく、他人との競争をあおることを主眼としているようなものが、まだまだたくさんあります。
最近よく取り上げられる有名なエピソードで、なでしこジャパンの佐々木則夫監督が、合宿中に練習に遅刻してきた選手に対し、本人を叱責せずに「どうして皆で誘い合って練習にこないのだ」と、グループとしてのまとまりに欠けた他の選手達に反省を促したという話があります。女性はグループで目標を立てて皆で協力し合った方が成績が伸びやすいという特性があるそうで、理にかなっているのだそうです。協調を打ち出した方が結果も良いということでしょう。
これに対して、男性は各々で目標を立てて競争し合った方が成績が伸びやすいのだそうですが、最近の様子を見ていて私が感じるところでは、競争心自体が薄れて少し女性的になってきているのでは、と思うことがあります。
先に述べたように、競争心の対象が「他人」ではなく、「自分自身」に向かう傾向になってきていますが、これはともすれば相手との関係性で変化してしまうような相対目標でなく、もっと絶対的な目標を求めているがゆえのことでもあると思います。他人との軋轢を好まず、協調性を重視する傾向によることもあるでしょう。
そうであれば、競争のさせ方にも工夫が必要であり、その工夫とは、競争はあくまで目標に向け、人に対しては協調的な事であり、最終的には「本人が納得して取り組める目標設定」ではないかと思います。これは、どこの会社でもすごくポピュラーに行われている目標管理制度(MBO)の、まさに原点ともいえます。
単に「アイツに負けるな」と言ったって、そこで「何くそっ!」という気持ちが起こっても、しょせんは負のパワーを使ったモチベーションで、短期的な効果しかありません。競争の中身を考え、「競争」と「協調」の適切なバランスを考えて行きつくのは、やっぱりずっと言われ続けてきた原理原則という部分のようです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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