23年税制大綱にありながら、東日本大震災の影響等で先送りとなったもののうち、資産課税関係では相続税基礎控除・税率構造等の見直しがあります。基礎控除額が従来の6割に引き下げられたり、死亡保険金の非課税措置の対象となる法定相続人の範囲の縮減や、最高税率アップなどの増税案は24年度も見送られましたが、日本の財政状況では早晩実施に移ると思います。そうなると従来は1億以上の相続財産がなければ相続税課税の心配はないと言われていましたが、多分5千万以上で相続税の心配をしなければならなくなると思います。
その一方、法定相続人への金融資産の移転を加速させるために、22年度より住宅等取得資金の贈与税の非課税制度が始まり、24年度も直系尊属(祖父母、父母)からの住宅等取得資金の贈与は1,000万円(良質な住宅は1,500万円)まで非課税となっています。
又、23年度税制大綱にあり積み残しとなっている資産課税税制には相続時精算課税制度の適用要件の変更があります。すなわち受贈者の範囲に孫が追加され、贈与者の年齢制限が65歳以上から60歳以上に引き下げようとするものです。
一連の税制の動きは、高齢者から若年者への資産の移転を加速させることにより日本経済を活性化させようとの意図があると思います。日本の個人金融資産は1,500兆円以上あると言われていますが、その6割以上が60歳以上の高齢者が保有し、大半が銀行預金となり、国債の買い支えをしているだけで、日本経済を活性化させる生きた金として循環していません。
少子高齢化、労働人口の減少と相まって日本経済がいつ不況のトンネルを抜けられるのか、未だ先が見えません。金持ち高齢者の皆様、墓場に金を抱えて行くより、自分の子供や孫に生きた金になるように積極的に贈与することを考えられたらどうでしょうか?
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