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日経記事;『キヤノン,デジカメ生産無人化 世界初』に関する考察

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皆様、
おはようございます。
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

5月14日付の日経新聞に、『キヤノン、デジカメ生産無人化 世界初 15年メド 主力工場は国内で維持』のタイトルで記事が掲載されました。

本日はこの記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。
 
『キヤノンは人手を使わずロボットだけで部品を組み立て、デジタルカメラをつくる完全自動化ラインを構築する。2015年をメドに大分など国内2工場の一部で稼働させる。

円高を背景に国内製造業は、人件費の安い海外に生産拠点を移してきた。組み立て工程の自動化を進めてきたキヤノンは、高い精度が要求されるデジカメで世界初となる生産無人化に挑む。コスト競争力を高めて、もの作りと研究開発の基盤を日本に残す。

15年をメドに、デジカメの主力工場である大分キヤノン(大分県国東市)と、交換レンズの拠点である宇都宮事業所(宇都宮市)にある組み立て工程の一部を完全自動化する。

デジカメの部品数は約600~1000点。それらを組み上げ梱包するまでの作業を、一部機種から無人でできるよう製造装置の改良などに近く着手する。

キヤノンは1990年代後半から、作業員が複数の組み立て工程を受け持つ「セル生産」方式を導入し、生産効率を高めてきた。近年は人が扱いにくい微細部品などの組み立てをロボットに任せる「マシンセル」方式に発展させ、少人数による生産を実現している。

大分と宇都宮の組み立て工程の従業員数は非公表だが、機種によってはこの3年間で半減したという。無人化後は工場の生産管理や成長分野の新規事業部門に移すなどして、雇用を吸収する方針。

キヤノンのデジカメの世界生産台数は11年が2590万台。世界シェアは約20%で首位。新ラインが軌道に乗れば、もう一つのデジカメ国内工場である長崎キヤノン(長崎県波佐見町)と台湾など海外3工場にも順次、導入していく計画だ。

デジカメは光学技術に優れる日本メーカーの得意分野で、キヤノン、ソニー、ニコンの上位3社で世界シェアの5割を握る。ただ価格競争が激しく、キヤノンを除くカメラ大手は電子機器の受託製造サービスを手がける台湾などの海外企業に生産委託を増やしている。日本勢の委託比率は合計で5割程度まで上昇しており、もの作りの基盤が揺らいでいる。

デジカメは精密な加工技術が必要なレンズや画像を処理する半導体、手ぶれを防ぐセンサーなど付加価値の高い部品や素材からなる。

完成品を組み立てる主力工場が日本に残れば、世界的に競争力のある部品や素材メーカーが国内にとどまり、新製品の企画段階から共同開発する強みを生かせる。取引先を含めた雇用の維持にも役立つとみている。

主要製造業ではトヨタ自動車が国内生産300万台を維持するため、設備投資額を4割減らしても従来と同じ効果が得られる生産技術の革新に取り組んでいる。』


中国が世界の工場となったのは、先進国と比べて圧倒的に安かった人件費と農村地帯から提供される豊富な労働力による、低コストで製造できる工場経営を可能にしたからでした。

しかし、以前本ブログ・コラムで取り上げました様に、中国労働者の人件費は高騰し続けています。

例えば、4月2日にフィナンシャルタイムズ(FT)が書いた記事では、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が人件費高騰などの理由で中国などから家電生産をケンタッキー州に戻すことにしたと報じています。

FTは、ボストン・コンサルティング・グループの報告書を引用する形で、中国での製造コスト(人件費など)は15年に米国を抜くという見通しを述べています。労働者人口も一人っ子政策の影響で今後急速に縮小していくと予想されます。

これらの中国内の社会的・経済的環境下、繊維などの労働集約型工場は中国からインドネシア、ベトナム、バングラデシュなどの他の国々に移転し始めています。

大消費地としての中国の魅力は揺るぎませんが、世界の工場としての地位は近いうちに大幅に低下するか消滅します。

大消費地に近いところに工場を作るという必要性以外には、中国内に工場を持つ必要性は薄れます。現在、多くの自動車企業が中国内に工場を作っているのは、現地市場での売上拡大のためです。

今回、キャノンが打ち出したのは、完全無人工場でデジカメを作るやり方です。無人工場では、富士通ファナックが行っています自社製の知能ロボットを活用した無人の生産ライン;工場のロボット化が有名です。

最近では中国企業も高騰した人件費を避けるため、中国内に無人工場を作り始めたとのこと。無人工場は、製造コスト圧縮の切り札の一つであることは間違いありません。

無人工場であれば、どこでも作れますので、キャノンのように国内に工場を置いて国内の開発部隊と密なチームを組んで最新商品を開発・製造する体制を維持強化でき、付加価値の高い商品の生産を国内で維持できます。

このメリットが明確になれば、他の電機メーカーにも広がる可能性があります。また、無人工場は今後の製造方式のあり方に大きな影響を与える可能性もあります。

無人工場を支える技術は、高性能ロボット、立体印刷技術、インタネットによる設計手法の革新などです。

アップルは、iPhoneやiPadなどの開発と設計を本社内で行い、製造を中国内の工場に委託しています。仮に、この工場の人件費がさらに上がり、想定コスト内で製造できなくなれば、中国内の工場に委託することは出来なくなります。

更に人件費の安い他国の工場に委託するか、無人工場を持つか委託して市場に近いところで商品の製造を行うことなどを考える必要が出てきます。

他の電機メーカーがキャノンと同じような無人工場を始めると、労働者需要は減少し、新規事業などで雇用を確保しないと、失業率が更に高くなる可能性があります。

片一方、日本は少子高齢化状態に入っています。将来、労働者人口は減少することは間違いなく、製造ラインの省力化・自動化などで製造効率を上げる必要性があります。

無人工場は、多くの労働者を集めなくても工場の維持運営ができるその解決策の一つになります。

このようにメリットとデメリットがまだ見える無人工場ですが、確実に言えることは、無人化であれ国内に製造拠点を持てることは国内経済の観点からみますと有益です。

他の企業の動きに注目していきます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

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