早わかり中国特許: 第10回 (3) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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早わかり中国特許: 第10回 (3)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第10回は外観設計特許の新規性及び創作非容易性について解説する。(第3回)

河野特許事務所 2012年6月11日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2012年2月号掲載)

 

コラム

中国における優先審査制度

~特許出願優先審査管理規則(意見募集稿)の公表~

 

1.概要

 中国専利法第35条第2項は「国務院特許行政部門は、必要と認めるときは、職権で発明特許出願について実体審査を行うことができる。」と規定している。即ち知識産権局が国家利益または社会利益に関する発明であると判断した場合、当該発明に対しては優先審査が行われる[1]。

 

 しかしながら、実務上は専利法第35条に基づく優先審査は行われず、原則として出願公開された順に審査が行われていた。そのため早期に審査を受けるためには、専利法第34条に基づく早期公開を請求し、審査待ちの順位を繰り上げるしかなかった。

 

 重要な発明についての早期保護を図るべく、中国知識産権局は2011年12月16日「特許出願優先審査管理規則」(以下、規則という)意見募集稿を公表した。本規則によれば優先審査の申し立てを行うことで、一定条件下で優先審査を受けることができる。以下に詳細を説明する。

 

2.適用対象出願

 本規則は発明特許出願、実用新型特許出願及び外観設計特許出願の全てに適用される(規則第3条)。実用新型特許及び外観設計特許については無審査で登録されるため(専利法第40条)、実務上は発明特許出願に対して有用な制度である。

 優先審査の請求人は,中国の出願人のみならず、外国の出願人であっても良い。

 

3.適用範囲

 以下の出願に対し、優先審査が実施される(規則第4条)。

(1) 省エネルギー環境保護、新世代通信技術、バイオテクノロジー、ハイエンド設備製造、新エネルギー、新素材、新エネルギー自動車等、新興産業核心技術の重要特許出願

(2) 低炭素技術、省エネルギー等、環境型発展に関する重要特許出願

(3) 国家科学技術上重大な特定項目の重要特許出願

 これは、主に《国家中長期科学及び技術発展計画概要(2006-2020)》に定義される重大特定項目に係る特許出願に対し、優先審査を行うものである。

(4)その他の国家または地区の特許審査機構に対し特許出願を提出する中国での最初の出願

 すなわち、最初に中国に特許出願され、その後、他の国家またはPCT受理官庁に出願された原中国特許出願に対し、優先審査が行われる。

(5)その他優先審査が必要な特許出願

 例えばオリンピック、国際博覧会等、特殊要因に基づき優先審査が行われる。

 

4.優先審査の数量制限

 優先審査は、各技術分野における審査負担、上半期の特許登録件数及び審査待ち出願件数等に基づき、1年間当たりの優先審査数が制限される(規則第5条)。

 

5.適用条件

(1)電子出願

 優先審査を請求するためには特許出願は、電子出願で行っていなければならない(規則第6条)。

(2)実質審査請求

 実質審査請求が行われていなければならない(規則第6条)。なお、中国では公開順に審査が行われるため、優先審査請求時に未公開である場合、専利法第34条に基づく早期公開を請求しなければならない。

(3)優先審査請求書

 所定の書式に従った特許出願優先審査請求書を提出しなければならない(規則第7条)。

(4)検索報告(サーチポート)

 国家知識産権局審査協力センター等の法人がなす検索報告を提出しなければならない。また各国特許庁またはPCT受理官庁がなした検索報告及び審査結果を提出することで審査が優先的に行われる。

 

6.コメント

 詳細な要件は未だ確定していないが、中国においても優先審査が認められる見込みである。環境技術、省エネルギー技術、新素材、新世代通信技術及びバイオテクノロジー等の分野では積極的に優先審査を活用し早期権利取得を狙うことができる。

 また日本企業にとっては、日本の審査結果または国際調査見解書を提出することで優先審査を促進することができる。

 

                                                                                  以上



[1] 審査指南第2部分第8章3.4.2

 

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