米国特許法改正規則ガイド 第2回 (第3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド 第2回 (第3回)

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米国特許法改正規則ガイド (第3回)

 第2回

河野特許事務所 2012年5月30日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

3.付与後レビュー(PGR)についての規則改正

(1)概要

 PGRとは特許発行後の一定期間内に、米国特許法第282条(b)(2)または(3)を理由として、クレームの無効を申し立てられた場合に、審判部がクレームについてレビューを行う制度をいう。

 

(2)請求人適格

 特許権者以外の者が請求することができるが(321条(a))、匿名での請求ができず、全ての実際の利害関係当事者を特定することが必要である(322条(a)(2))。

 また以下の者は請求が認められない(規則42.201)。

 (a)レビュー請求が提出される日以前に、請求人または利害関係のある実際の当事者が、当該特許クレームの有効性を争う民事訴訟を提起している場合。

 (b)申立人、申立人の利害関係のある実際の当事者、または申立人の利害関係人が、請求において特定される理由について当該クレームを争うことに関し禁反言が成立している場合。

 

(3) 客体的要件

 特許またはクレームの無効に関する米国特許法第282条(b)(2)または(3)に掲げる何らかの理由である(321条(b))。すなわち、保護適格性(101条)、新規性(102条)、非自明性(103条)、記載要件(112条)の全てについて、申し立てを行うことができる。ただし、ベストモード要件違反(112条パラグラフ1)については争うことができない(282条(3)(A)かっこ書き)。

 

(4)時期的要件

 PGRの申し立ては特許の発行日または再発行特許の発行日から9月以内に限られる(321条(c))。なお、PGR申立期間経過後は当事者系レビュー(Inter Partes Review、以下IPRという)が可能である。

 

(5)PGR開始基準

 PGRを申し立てたとしても、一定の基準を満たさなければ、長官により申し立てが却下される。具体的には、どちらかといえば多分(“more likely than not” 51%以上の確率で)少なくとも一つの対象クレームが特許性の無いことを示している場合にのみ開始される。

 

(6)PGRの記載的要件

 PGRの申し立てに際しては、以下の記載が必要とされる。

 (a)当事者適格の理由。申立人は、レビューが求められる特許に対しPGRが可能であることと、申立人が当該特許のPGR請求を禁止されたり、または禁反言により制限されたりしないこととを明確にしなければならない。

 (b)争点の特定。当該陳述は以下を特定しなければならない。

 (1)クレーム;

  (2)クレームに対する争点が依拠する米国特許法第282条(b)(2)または(3)に基づき認められた特定の法定理由;

  (3)争われたクレームがどのように解釈されるか。解釈されるクレームが米国特許法第112条第6パラグラフに基づき許可されるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクション限定を含む場合、クレームの解釈は、各クレームされた機能に対応する構造、材料または作用(acts)を記載した明細書の具体的部分を特定しなければならない。

  (4)どのように解釈されたクレームが、本セクションパラグラフ(b)(2)にて特定される法定理由に基づき特許性を有しないか。非特許性の理由が、先行技術に基づく場合、申し立ては、クレームの各要素の先行技術中での記載箇所を特定しなければならない。

 (5)争点をサポートし、かつ、提起された争点に対して当該証拠の関連性に言及すべく依拠された証拠の添付書類番号。

 

(7)予備反論

(i)予備反論の提出

 PGRが申し立てられた場合、特許権者はPGRを開始すべきでないという反論理由を記載した予備反論を提出する権利を有する(323条)。

(ii)期限

 予備反論はPGRを開始後2月以内に提出しなければならない。なお、特許権者は予備反論を放棄することも可能である(規則42.207)。

(iii)補正の禁止。

 予備反論において、補正は認められない。

(iv)クレームの放棄

 特許権者は、規則1.321(a)( ターミナルディスクレーマーを含む法定の権利の部分放棄)に従い米国特許法第253条(a)に規定する法定の放棄を提出することにより、当該特許の一または複数のクレームを放棄することができる。なお、放棄されたクレームに対してはPGRが行われない。

 

(8)特許の補正

  特許権者は審判部と協議した後に限り特許の補正を1回申請することができる(規則42.221)。なお、追加の補正申請は審判部の許可なく提出することはできない。

 補正の申請に際しては、以下の説明が必要とされる。

 

 (i)追加または補正される各クレームに対する元の特許の開示におけるサポート;及び

 (ii)先に出願された開示の出願日の利益を得ようとする各クレームに対する先に提出された開示におけるサポート

 

 また補正は、PGRにおける非特許性の理由とは無関係に行うことはできない。またクレーム範囲を拡大する補正及び新規事項の追加は認められない。

 

(9)PGRの結果

 PTABが書面によりクレームの特許性に関し決定をおこなう(328条(a))。PGRは審判部に継続してから原則として1年以内に結論が下される(規則42.200(c))。

 

(10)改正規則

改正後

規則42.200 手続;係属

 (a)PGRは本部の副部Aに規定する手続きに従うトライアルである。

 (b)権利が消滅していない特許のクレームは、それを含む特許の明細書を踏まえ最も広い合理的解釈によるものとする。

 (c)PGR手続は、その開始後審判部における係属が通常1年を超えないよう処理されるものとする。期間は行政特許審判長による正当な理由により最大6月延長することができる。

 (d)2012年9月16日以前に開始されたインターフェアランスは、長官を代理する行政特許審判長を除き、本章の41部に基づき進めるものとし、その他司法手続上必要な場合に命じることができる。

規則42.201 PGRを請求できる者

以下の場合を除き、特許権者でない者はUSPTOに特許PGRを開始する請求を提出できる:

 (a)レビュー請求が提出される日以前に、請求人または利害関係のある実際の当事者が、当該特許クレームの有効性を争う民事訴訟を提起している場合。

 (b)申立人、申立人の利害関係のある実際の当事者、または申立人の利害関係人が、請求において特定される理由について当該クレームを争うことに関し禁反言が成立している場合。

規則42.202 提出時期

 (a)特許のPGRの申し立ては特許の発行日または再発行特許の発行日から9月以内に行わなければならない。しかしながら、再発行特許が発行された原特許と同一クレームまたは原特許より狭いクレームを有する再発行特許のクレームに対して、PGRを請求する申し立ては認められない。ただし、申し立てが当該原特許成立日の後、9月内になされている場合を除く。

 (b)長官はUSPTOの官報または連邦公報にて通知を行うことにより、米国特許法第321条が施行された最初の4年間のうちの1年間毎に開始されるPGRの数に制限を課すことができる。設定された制限に達した後の申し立ては、時機を逸したと見なされる。

規則  42.203  PGRの料金

 (a)規則42.15(b)に規定するPGRの料金は申し立てに添付しなければならない。

 (b)完全な料金が支払われるまで、申し立てに対する提出日は付与されない。

規則 42.204  申し立ての内容

規則42.8及び42.22の要件に加えて申し立ては、以下を明記しなければならない。:

 (a)当事者適格の理由。申立人は、レビューが求められる特許に対しPGRが可能であることと、申立人が当該特許のPGR請求を禁止されたり、または禁反言により制限されたりしないこととを明確にしなければならない。

 (b)争点の特定。争われるクレームの各々について請求された正確な救済手段(relief)に係る陳述を提供すること。当該陳述は以下を特定しなければならない。

 (1)クレーム;

  (2)クレームに対する争点が依拠する米国特許法第282条(b)(2)または(3)に基づき認められた特定の法定理由;

  (3)争われたクレームがどのように解釈されるか。解釈されるクレームが米国特許法第112条第6パラグラフに基づき許可されるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクション限定を含む場合、クレームの解釈は、各クレームされた機能に対応する構造、材料または作用(acts)を記載した明細書の具体的部分を特定しなければならない。;

  (4)どのように解釈されたクレームが、本セクションパラグラフ(b)(2)にて特定される法定理由に基づき特許性を有しないか。非特許性の理由が、先行技術に基づく場合、申し立ては、クレームの各要素の先行技術中での記載箇所を特定しなければならない。全ての他の非特許性の理由については、申し立ては、提起された法定理由に従っていないクレームの具体的部分を特定しなければならず、特定された法定主題がいかに当該法律に適合しないかを言及しなければならない。

 (5)争点をサポートし、かつ、提起された争点に対して当該証拠の関連性に言及すべく依拠された証拠の添付書類番号。これには当該争点をサポートする証拠の具体的部分を特定することが含まれる。審判部は当事者がその関連性に言及すること、または、争点をサポートする証拠の特別な部分を特定することに失敗した証拠を排除するか、または重視しない。

 (c)申し立てにおける書記または字の誤り修正を求めるよう申請することができる。そのような申請が許可されても、申し立ての提出日は変更されない。

規則  42.205  申し立ての送達

規則42.6の要件に加えて、申立人は、以下に従い、申し立て書および申し立て書中で依拠する申し立て書及び添付書類を提供しなければならない。

 (a)申し立て書及びサポートする証拠は、対象特許の記録上の住所宛に特許権者に対して送達されねばならない。申立人はさらに、送達可能と思われる他の住所が分かれば、その住所宛に特許権者に対する申し立て書及びサポートする証拠を送達してもよい。

 (b)申立人が、対象特許の特許権者の記録上の住所に申し立て書及びサポートする証拠を送達できない場合、申立人は直ちに他の送達方法について検討すべく審判部に連絡しなければならない。

規則  42.206  提出日

 (a)完全な申し立て。PGRを開始するための申し立ては、当該申し立てが以下の全ての要件を満たさない限り、提出日を得られない。

 (1)規則42.204または42.304に従うこと。;

 (2)規則42.205(a)において規定されたとおり、記録上の連絡先住所に申し立て書を送達すること;及び、

 (3)規則42.15(b)における提出費を伴っていること。

 (b)完全でない請求。当事者が完全でない申し立て書を提出した場合、提出日は得られず、USPTOは、申し立て書における欠陥が、完全でない申し立てに係る通知から1月、または、PGRの申し立てを提出する法定期限の終了の日のいずれか早いほうまでに修正されない場合、当該請求を却下する。

規則  42.207  申し立てに対する予備反論

 (a)特許権者は申し立てに対し予備的反論を提出することができる。当該反論は、米国特許法第324条に基づきPGRが開始されるべきでない理由を記載することに制限される。反論には、本セクションパラグラフ(c)で規定された場合を除き、証拠を含めることができる。この予備反論は、規則42.24に基づくページ制限を決定するための反論である。

 (b)期限。予備反論はPGRを開始するための請求が提出日を与えられたことを示す通知日以後2月以内に提出しなければならない。特許権者は、予備反論の放棄を選択することにより手続を早めることができる。

 (c)新規供述証拠の禁止。予備反論は既に記録されたもの以外の新たな供述証拠を提示しないものとする。

 (d)補正の禁止。予備反論はいかなる補正も認めないものとする。

 (e)特許クレームの放棄。特許権者は、規則1.321(a)( ターミナルディスクレーマーを含む法定の権利の部分放棄)に従い米国特許法第253条(a)に規定する法定の放棄を提出することにより、当該特許の一または複数のクレームを放棄することができる。放棄されたクレームに基づいてPGRが開始されることはない。

PGRの開始

 

規則  42.208  PGRの開始

 (a)PGRを開始する場合、審判部は争点となるクレームの全てまたは一部について、また、各クレームに対し主張された非特許性についての全てまたはいくつかの理由について進めるべくレビューを許可することができる。

 (b)PGRを開始する前にはいつでも、審判部は争点となるクレームの一部または全部について、非特許性についての理由の一部または全部を否定することができる。理由の否定は、PGRを当該理由により開始しないという審判部の決定である。

 (c)十分な理由。PGRは、審判部が、理由をサポートする申し立てが、反駁されなければ、申し立てにおいて争点となっている少なくとも一つのクレームが、どちらかといえば多分(more likely than not)特許性がないということを明示していると判断しない限り、非特許性の理由に対して開始されないものとする。審判部は、特許権者の予備反論が提出された場合、その反論を考慮するものとする。

 (d)他の理由。規則42.208(c)に基づく理由は、申し立てが他の特許または特許出願にとって重要である新規または未解決の法的質疑を主張していることを示す事により満たされる。

PGR開始後

 

規則  42.220  特許権者の反論

 (a)範囲。特許権者は、まだ否定されていない非特許性に関する理由を言及する申し立てに対し、反論を提出することができる。特許権者の反論は異議(opposition)として提出され、規則42.24に規定するページ制限の対象となる。

 (b)反論期日。申し立てに対する特許権者の反論を提出する日が審判部において命じられていない場合、基準となる特許権者の反論提出日はPGRの開始から2月である。

規則  42.221  特許の補正

 (a)特許権者は審判部と協議した後に限り特許の補正を1回申請することができる。追加の補正申請は審判部の許可なく提出することはできない。

 (b)補正の申請では、以下を説明しなければならない。:

 (1)追加または補正される各クレームに対する元の特許の開示におけるサポート;及び

 (2)先に出願された開示の出願日の利益を得ようとする各クレームに対する先に提出された開示におけるサポート

 (c)特許クレームを補正する申請は、以下の場合認められない:

 (1)補正がトライアルに係る非特許性の理由に対応するものでない場合、または、

 (2)補正が特許クレームの拡大を求めている場合、または、新規事項を追加している場合。

規則  42.222  複数の手続

当該特許に係る他の事件がUSPTOに存在する場合、審判部はPGRの継続中、そのような事件の中断、移送、併合または終了を含む追加の事件に関する適切な命令を下すことができる。

規則  42.223  補足情報の提出

トライアルがいったん開始されたら、申立人はトライアルが開始された理由に関連する補足情報を特定する申請(motion)を提出する許可を請求することができる。当該請求はトライアルが開始された日から一月以内になさねばならない。

規則  42.224  ディスカバリ

副部Aのディスカバリの規定にかかわらず:

(a)追加のディスカバリ請求は、ディスカバリを必要とする正当な理由を示す事により認められる。

(b)ディスカバリは手続における当事者いずれかにより提出された事実主張に直接関係する証拠に限定される。

 

(第4回へ続く)

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