4月になると、新入社員が入社してくる会社も多いと思います。今は新人研修が真っ盛りという感じではないでしょうか。私も講師として新人研修をお手伝いしますが、いつも思うのは、せっかく本人たちが社会人として切り替えた気持ちで来ようとしているのに、研修という形で学生時代の気分に戻してしまうような場から始めなければならないことのジレンマです。
考えてみれば、同じ境遇の同年代が集まって、カリキュラムに則って勉強するという形になれば、やっぱり学生時代にずっと経験してきた慣れた雰囲気です。切り替えたはずの気持ちが元に戻りがちになっても仕方ないと思います。
私はIT系の会社にいましたので、新入社員はシステム開発などの専門技術を含め、少なくとも5月いっぱいくらいまでの期間は研修になります。ほかの業界と比べれば、結構長い期間の部類なので、さらに学生気分に戻りやすい傾向がありました。
程度の差はあれ、そんな心配はどの業界のどんな会社でも多分同じで、きっとそれぞれの会社で、研修内容を工夫したり、いろいろな形で意識付けしたり、新入社員を学生気分に戻さないように、気を使われているのではないかと思います。私も企業で研修担当をしていた頃は、手を変え品を変え、いろいろなことを考えた覚えがあります。
そんな私の経験の中で、意外に引き締め効果があったのは、研修費用の話をした時でした。新人研修を受けさせていれば、勘のいい新入社員は、自分たちが受けている研修にいったいどれほど費用が掛かっているのかに関心を持ちます。(もちろん、何も感じない者は感じていないですが・・・)
そんな中で、具体的な金額を出した時も出さなかった時もありますが、自腹では到底負担できない金額だということ、この研修費用は会社にとっては投資だということ、多額のお金を投資しても良いと考えるほど、新入社員に期待しているんだということをよく話しました。「給料をもらって学んでいる」ということの意味を理解させるには良かったようでした。
また、これは今の立場になってからの経験ですが、とにかく最初が肝心ということでした。特に研修初日にやる内容です。普通であれば初日は説明とかオリエンテーションとか、ちょっとしたマナーとか、そんな内容の会社が多いと思いますし、私が以前在籍していた会社でも同じでした。
しかしある会社が初日にやっていたものは全く違っていて、私にとっては「なるほど」と思わせるものがありました。人様のノウハウなので、詳しい中身の種明かしはできませんが、あるテーマに沿ったグループワークを通じて、ちょっと理不尽に怒られたりしながら、社会人は言われた通りにやっているだけではダメで、自分たちで考えて自分たちが動かないと何も始まらないということを理解させるというものでした。まず初めに、「ただ授業を聞いているだけってわけにはいかないぞ。社会人の研修ってこうなんだぞ」と強く思わせることで、新人たちの後々の姿勢が全然違ってきていました。
研修を企画している方や研修担当者、講師の方々は、毎年いろいろ苦労をされていると思います。これはどの会社でも同じような苦労です。たくさんの試行錯誤をされていることでしょう。
今回書かせて頂いたことも、今更そんなことはわかっている、もうすでにやっているという方々もいらっしゃると思います。ただ、同じような事でも、ちょっとした話し方や演出の仕方の違いで、与えるインパクトは大きく違うことがあります。知恵は多いに越したことはありません。
今回の内容に、もしも参考になる部分が少しでもあるようでしたら、是非お役立て頂ければと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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