父親から時価1千万円程度の不動産を相続したとます。この不動産を、実際に売却しようとした場合、査定通りの価格で売れるかどうかという問題とともに、さらに次のような問題が生じます。1千万円で不動産が売却できたとしても、最終的に手もとに残るのは、1千万円ではありません。さまざまな売却に伴う追加の出費が求められます。
具体的には、
①亡くなった父親から、相続した不動産の名義書換のための登記費用、登録免許税
②相続した不動産を売却するための不動産の仲介業者への仲介手数料、売却に必要な登記費用、印紙代など
おそらくこれだけで何十万円という出費が生じます。土地や建物の状態によってはさらに追加の出費が必要な場合があります。
たとえば、
①売却するための土地の測量、境界を確定するための費用
②建物の修繕や取り壊しにかかる費用
③家財道具を撤去するなど建物の明け渡しのための費用
ここまで出費がかさむと、総額で百万円を優に超えることにもなります。
さらに、その不動産を売却した翌年に、次のような出費が生じることにも。
①不動産を売却した利益(譲渡所得)に対する税金(所得税と住民税)
②一時的に所得が増えたことによって起こる健康保険料などの負担の増加
これらの負担は、不動産の名義を持つ人が負担する出費となります。ひとりの相続人が不動産を相続すると、不動産の名義人はその相続人だけとなりますので、他の相続人がこれらの費用を負担するということにはならないのです。
現金ではなく、不動産などを相続する場合は、それぞれの財産の価値を慎重に判断する必要があります。1千万円の現金と1千万円の不動産は、先にあげたような売却ともなう出費を差し引いた「手取り」でその価格考える必要があります。
このコラムの執筆専門家
- 佐々木 保幸
- (京都府 / 税理士)
- 税理士法人 洛 代表
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