先日ある企業の経営者の方とお話しした際のやり取りです。
私「最近はいろいろ便利なITツールで、管理業務も楽になりましたよね。貴社にも勤怠管理ツールいかがですか?入力業務 とか効率化されて便利ですよ。」
先方「いや、でも入れたら今担当している方がやることなくなるから、うちは今まで通りでいいよ。」
業務効率化したら、既存社員の仕事がなくなるからやらないらしいです。
「雇用の確保のため、生産性向上を捨てるなんて、なんて社員想いの経営者なんだ。素晴らしい!」なんて思ってはいけません。
確かに既存の構造を変えるのは、経営者にとっても、社員にとっても手間がかかりますし、長年やってきたスタイルを崩したがらない社員もいるかもしれません。
社員と経営者では見ている目線が違います。
どうしても自分の業務を中心に考えてしまう社員、変化を嫌がる社員を諭すのが経営者です。こうした社員にも変化に慣れてもらわなくてはなりません。
数年前に比べて、格段に業務のシステムは効率化され、多くの企業は勤怠管理など定型業務はシステム化、アウトソース化し、営業など各企業独特でコアな部分に集中しています。
また、こうした変化は全体の業務を見直すチャンスです。
今まで、勤怠管理をやっていた社員の労働の負荷が軽くなれば、その分営業の業務の一部を負担できるかもしれません。そうすれば、営業はより顧客開拓に力を入れられるようになります。
実際営業と呼ばれる人たちが顧客開拓などに費やせる時間は、全体の20%がいいところで、残りは資料作成や、クレーム処理に使っているといった調査結果も出ています。
IT化は決してコスト削減のためだけに行うことではありません。既存の業務構造を見直すよい機会になり、企業の更なる成長を促すチャンスとなります。
ただ、IT化といっても、単にシステムを入れて終わりではなく、活用されなければ意味がありません。
導入後の運用状況の把握や、導入前と後での変化を見るなど、導入による効果を測定しなくてはなりません。
そのプロセスを通し、新たに改善のネタが見つかることもしばしばです。
どんな会社でも、改善すべき点はあります。そして、一番手っ取り早くて、効果が上がりやすい改善はIT化です。なんといってもヒトが影響しないので。ただ、その後のフォローはしっかりやらなくてはなりません。
まずは身近なシステムからIT化することが、変革の風土を作り出すきっかけになり、更なる企業成長の足掛かりとなります。
冒頭のような企業の経営者の方も、まずは変革の一歩を踏み出してみませんか。
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