米国特許法改正規則ガイド (第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド (第2回)

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米国特許法改正規則ガイド (第2回)

 第1回

河野特許事務所 2012年4月18日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

3. 査定系再審査において提出することが可能な書類の拡大(AIAセクション6)

(1)査定系再審査の改正点

 査定系再審査においては特許及び刊行物等の先行技術に加えて、裁判所における特許権者の供述をも提出することができるようになった(米国特許法第301条)。

 米国特許法第301条の改正に伴い、以下のとおり規則が改正された。

 

(2)提出書類

 特許権者の供述に関する書類として以下が要求される。

供述書面、当該供述書面に対応する供述を提出した手続きに係る証拠、訴答書面

 例えば、第三者は、特許権者が連邦裁判所にて議論したクレーム範囲に係るデポジションを提出することができる。ただし、連邦裁判所またはUSPTOに対する手続とは別に特許権者がなした主張に係る供述は、許可されず、特許包袋書類に含められない(規則1.501(a)(2))。

 

 特許権者が供述を提出する場合、クレームが先行技術に対しどのように相違するかを主張しなければならない。一方、第三者が提出する場合、先行技術、供述書面及び添付情報を、クレームに適用する適切性及び方法を書面で説明しなければならない(規則1.501b(1)(2))。

 

(3)匿名(ダミー)での請求

 査定系再審査のメリットは匿名で請求することができる点にある。PGR(付与後レビュー)及びIPR(当事者系再審査)では匿名で請求することができず、競合他社を刺激したくない場合は、査定系再審査を選択することとなる(規則1.501(d))。

 具体的には以下の手続により匿名とする。

請求人は、

(1)実際の当事者を特定する供述を別紙にて提出しなければならない。

(2)実際の当事者を特定する供述としてタイトル付けしなければならない。

(3)書面にてUSPTOに当該書面を封印することによって秘密にするよう要求しなければならない。

(4)明確かつ目立つように、非公開提出として当該供述を指定する適切なインストラクションラベルを含めなければならない。例えば、“NOT OPEN TO THE PUBLIC FOR OFFICE USE ONLY.”の如くである。

 

 当該手続により、USPTOは実際の当事者声明を封印し、非公開を維持する。

 

(4)禁反言との関係

 PGR及びIPRでは禁反言が成立する(米国特許法第325条(e)及び315条(e))。そのため、匿名とはいえども、規則1.510(6)(7)では禁反言を防止する範囲内において証明書及び利害関係人の特定が以下のとおり要求されている。

 

(6)当事者系レビュー(米国特許法第315(e)(1))及びPGR(付与後レビュー米国特許法第325(e))の双方の法定の禁反言規定が、査定系再審査を禁じることのない証明書

(7)査定系再審査の後に申し立てられた当事者レビューまたはPGRが、実際の利害関係人またはその利害関係人により申し立てられた継続中の査定系再審査を妨げるか否かを決定するのに必要な範囲で、実際の利害関係人を特定する供述

 

(5)供述提出の効果

 審査官は査定系再審査請求書の提出日から3月以内に、特許性に関する実質的で新たな問題が提起されているか否かを判断する。実質的で新たな問題が提起されている場合再審査が開始される(米国特許法第304条)。ただし、審査官は当該判断に当たり供述書面を考慮してはならない旨規定されている(規則1.515(a))。つまり、審査官は今回の法改正により追加された供述書面とは無関係に、実質的で新たな問題が提起されているか否かを判断しなければならない。

 

 再審査手続が命じられた後、提出した供述は、特許庁長官により特許クレームの正確な意味を解釈するために使用される(規則1.552(d))。

 

(6)新旧規則対比表

改正前

改正後

規則1.501 特許ファイルにおける先行技術の引用

(a) 特許の実施可能期間中はいつでも,何人も,特許商標庁に対し,特許又は刊行物から構成される先行技術であって,当該人が,その特許に対して関連性があり,適用可能であると述べ,かつ,その特許の何れかのクレームの特許性に関係があると考えるものを,書面によって引用することができる。引用が特許所有者によって行われる場合は,関連性及び適用可能性についての説明は,そのクレームが先行技術と如何に異なるかについての説明を含むことができる。当該引用は,§1.502及び§1.902に定められている事情の場合を除き,その特許ファイルに記録される。

(b) 引用をする者が,自らの身元が特許ファイルから排除され,秘密にされることを望む場合は,引用文献は,提出をする者の身元を表示することなく,提出されなければならない。

(c) 特許ファイルに関する,公衆による特許又は刊行物の引用は,(1) 同一物の写しが特許所有者に対し,§1.33(c)に規定されている宛先に名宛して郵送されたことを示すか,又は,送達が不可能な場合は,(2) その2部が特許商標庁に提出されるかの何れかでなければならない。

規則1.501 特許ファイルにおける先行技術及び供述書面の引用

(a)提出物情報:

 特許権利行使可能期間中はいつでも、何人も、本セクションに基づき以下の情報に関して書面によりUSPTOに提出することができる。:

  (1)提出を行う当該者が特許性に関連あると記載する特許または刊行物に係る先行技術

 (2) 連邦裁判所またはUSPTOの手続において提出され、特許権者が特定特許クレームの範囲について見解を示した特許権者の供述。本パラグラフに基づき提出される供述には、この供述書面に対応する供述を提出した手続きに係る証拠、訴答書面、またはその他の全ての書面を添付しなければならない。また、本パラグラフに基づく当該供述書面及び添付情報は、適用可能な保護命令の対象となる情報を省くよう編集した形態で提出しなければならない。

 連邦裁判所またはUSPTOの手続外で特許権者が提出し、後に連邦裁判所またはUSPTO手続に含まれた供述書面は、本セクションで許可されず、当該提出は特許包袋書類に含められない。

(b)説明に含める事項:本セクションパラグラフ(a)に従う提出は;

 (1)特許包袋書類の一部分とすべく提出するために、少なくとも一つの特許クレームに対し、本セクションパラグラフ(a)(1)に基づき提出される先行技術と、本セクションパラグラフ(a)(2)に基づき提出される供述書面及び添付情報と、を適用する適切性及び方法を書面で説明しなければならず;また

  (2)当該提出が特許権者によりなされる場合、クレームが本セクションパラグラフ(a)(1)に基づき提出された先行技術、または、本セクションパラグラフ(a)(2)に基づき提出された供述書面及び添付情報に対しどのように相違するかの説明を含めることができる。

(c)審理中の再審査:上記提出が行われた特許について、再審査手続が請求されており、かつ、継続している場合、当該提出物は、規則1.502(査定系再審査手続における先行技術引用の処理)及び1.902(当事者系再審査手続における先行技術引用の処理)の規定に従って特許包袋書類へ入力される。

(d)身元:提出者が自身の身元を包袋書類から排除し、秘密維持を希望する場合、当該提出書類は、当該提出を行う者を特定せずに匿名で行わなければならない。

(e)提出の送達(service):本セクションに基づく提出は、提出物のコピーが規則1.248(書類の送達;送達方法)に係る特許に記録された特許権者の住所宛に送達されたこと、または、誠意をもって送達の試みがなされたことを示さなければならない。送達の証明、または、十分な説明及び送達の誠意ある試みいずれかを証明できない提出物は特許包袋に含められず、また、気づかずに入力されていれば抹消される。

(f)特許権者の供述の考慮:本セクションパラグラフ(a)(2)の規定に基づく特許権者の供述及び添付情報は、米国特許法第301条(d)(先行技術の引用及び供述書面の制限)において規定された目的以外ではUSPTOにより考慮されない。再審査が命じられた場合、米国特許法第301条(a)(2)(供述書面の提出)の規定に従い提出された特許権者の供述は、再審査の対象となる特許におけるクレームの範囲を決定する際に考慮される。

規則1.510 査定系再審査の請求

*****

(b)***再審査請求書は,次の部分を含まなければならない。

 (2)再審査請求の対象とされる全てのクレームの特定,及び再審査請求の対象とする全てのクレームに対して,引用されている先行技術を適用することの適切性及び方法に関する詳細な説明。適切な場合は,再審査を請求する当事者は,クレームが引用されている先行技術と如何に異なるかも指摘することができる。

******

規則1.510 査定系再審査の請求

*****

(b)***再審査請求書は,次の部分を含まなければならない。

 (2)再審査請求の対象とされる全てのクレームの特定,及び再審査請求の対象とする全てのクレームに対して,引用されている先行技術を適用することの適切性及び方法に関する詳細な説明。

 セクション1.501(a)(2)に従い提出された前記詳細な説明に依拠する特許権者の各供述及び添付情報。再審査請求は、ある特許クレームの正確な意味をそのクレームに適用される先行技術に関連して決定するために、当該供述がどのように使用されるか、また各関連クレームがどのように解釈されるかについて説明しなければならない。

適切な場合は,再審査を請求する当事者は,クレームが引用されている先行技術と如何に異なるかも指摘することができる。

*****

  (6)当事者系レビュー(米国特許法第315条(e)(1))及びPGR(付与後レビュー米国特許法第325条(e))の双方の法定の禁反言規定が、査定系再審査を禁じることのない証明書

 (7)査定系再審査の後に申し立てられた当事者レビューまたはPGRが、実際の利害関係人またはその利害関係人により申し立てられた継続中の査定系再審査を妨げるか否かを決定するのに必要な範囲で、実際の利害関係人を特定する供述

規則1.515 査定系再審査請求についての決定

(a) 審査官は,査定系再審査請求書の提出日から3月以内に,その請求を考慮し,その請求書及びそこに引用されている先行技術によって,特許の何れかのクレームに影響を及ぼす,特許性に関する実質的で新たな問題が提起されているか否かを,他の特許又は刊行物を考慮して又は考慮しないで,決定する。審査官の決定は,決定の時点において有効なクレームを基礎とするものとし,特許に関する庁のファイルの一部となり,§1.33(c)に定められている宛先に名宛して特許所有者に対し,及び再審査を請求した者に対して郵送される。

規則1.515 査定系再審査請求についての決定

(a) 審査官は,査定系再審査請求書の提出日から3月以内に,その請求を考慮し,その請求書及びそこに引用されている先行技術によって,特許の何れかのクレームに影響を及ぼす,特許性に関する実質的で新たな問題が提起されているか否かを,他の特許又は刊行物を考慮して又は考慮しないで,決定する。

規則1.501(a)(2)(供述書の提出)の規定に従い提出された供述及び添付情報は、当該請求に対する審査官の決定において審査官により考慮されない。

審査官の決定は,決定の時点において有効なクレームを基礎とするものとし,特許に関する庁のファイルの一部となり,§1.33(c)(特許出願,再審査手続及びその他の手続に関する通信)に定められている宛先に名宛して特許所有者に対し,及び再審査を請求した者に対して郵送される。

規則1.552 長官による争点についての決定

新設

規則1.552 長官による争点についての決定

*****

規則1.501(a)(2)(供述書の提出)の規定に従い提出された特許権者の供述及び添付情報で、再審査される特許において記録されるものはすべて(当該特許の再審査ファイルも含む)、再審査手続が命じられた後は、特許及び刊行物を適用するに当たり、特許クレームの正確な意味を解釈するために使用することができる。

 

(第3回へ続く)

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