早わかり中国特許: 第8回 特許要件 創造性 (第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許: 第8回 特許要件 創造性 (第2回)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第8回 特許要件 創造性 (第2回)

河野特許事務所 2012年4月9日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2011年12月号掲載)

 

4.類型が異なる発明の創造性判断

(1)パイオニア発明

 パイオニア発明とは、全く新規な技術方案であって、技術史上ではかつて例がなく、ある時期の人類科学技術の発展に新紀元を開かせる技術方案をいう。

 パイオニア発明は現有技術に比して、突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。例えば、中国の四大発明である羅針盤、製紙技術、活字印刷技術、火薬等である。その他、蒸気機関、白熱灯、ラジオ、レーダー、レーザー、コンピュータを利用した漢字入力等が挙げられる。

 

(2)組合せ発明の場合

 組合せ発明とは、現有技術に客観的に存在する技術的問題を解決すべく、幾つかの技術方案を組み合わせて、1つの新規な技術方案を構成することをいう。

 組合せ発明の創造性を判断する際は、通常、組み合わせ後の各技術的特徴が機能上相互に支持し合うか否か、組み合わせの難易度、現有技術に組み合わせる啓示が存在するか否か、組み合わせ後の技術的効果等を考慮する。

 

(i)自明的な組み合わせ

 請求項に係る発明が単に、幾つかの既知の製品または方法を組み合わせ・連設したにすぎず、それぞれが通常の方法で動作している。その上、総合的な効果はそれぞれの効果の総和であり、組み合わせ後の各技術的特徴同士は機能上相互作用の関係がなく、単純な重ね合わせに過ぎない場合、創造性を具備しないと判断される。

 

【例】電子時計付きボールペンの発明。

 発明の内容は既知の電子時計を既知のボールペン本体に取り付けたものである。電子時計とボールペンを組み合わせた後、両者は各々通常の方法で作動し、機能上で相互作用の関係がなく、単純な重ね合わせに過ぎない。従って当該組合せ発明は創造性を具備しない。

 また、組み合わせが単に公知の構造の変形、または組み合わせが通常の技術の継続的発展の範囲内にあり、予期できない技術的効果が得られない場合、創造性を具備しないと判断される。

 

(ii)自明でない組み合わせ

 組み合わせた各技術的特徴が機能上で相互に支持し合い、新規な技術的効果を得ている場合、または、組み合わせ後の技術的効果が個々の技術的特徴の効果の総和よりも更に優れている場合、当該組合せ発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備する。なお、組合せ発明の個々の単独の技術的特徴そのものが完全にまたは部分的に既知なものであるか否かは、当該発明の創造性評価に影響を与えない。

 

【例】「深冷処理及び化学めっきニッケル-リン-希土工程」の発明である。発明の内容は公知の深冷処理と化学めっきを相互に組み合わせたものである。現有技術は、応力を除去し、組織と性能を安定させるべく、深冷処理後に、部品に通常とはかけ離れた温度で焼き戻し処理を行う必要があった。

 本件発明では深冷処理の後、部品の焼き戻しまたは時効処理(aging)を行うことなく、80℃±10℃のめっき液中で化学めっきを行うものである。

 これにより本発明は、焼き戻しまたは時効処理を省略できるだけでなく、部品が安定した基体組織と耐磨性、耐蝕性を備えることとなり、しかも基体との結合が優れためっき層を有する事となる。当該組合せ発明の技術的効果は、当業者にとっては予期し難いことから、創造性を具備することとなる。

 

(3)選択発明

 選択発明とは、現有技術に公開された広い範囲の中から、目的を持って現有技術で言及されていない狭い範囲・物を選択した発明をいう。

 選択発明の創造性を判断する場合、選択がもたらす予期できない技術的効果が主に考慮される。

 

(i)発明が単に、既知の幾つかの可能性の中から選択しているか、または、発明が単に、同一の可能性を持つ幾つかの技術方案から1つを選択しており、選択した技術方案が予期できない技術的効果を奏さない場合、創造性を具備しないと判断される。

【例】現有技術として多くの加熱方法が存在しているところ、発明は既知の加熱による化学反応の中から1の公知の電気加熱法を選択している。この選択発明は予期できない効果を奏していないため、創造性を具備しないと判断される。

 

(ii)発明が、可能な有限の範囲から具体的な寸法、温度範囲またはその他のパラメータを選択したものであって、これらの選択は当業者が通常の手段により得られるもので、かつ予期できない技術的効果を奏さない場合、当該発明には創造性を具備しないと判断される。

【例】既知の反応方法において、不活性ガスの流速を規定したことを特徴とする発明であるとする。この場合、流速の確定は当業者が通常の計算から得られるため、創造性を具備しないと判断される。

 

(iii)発明が、現有技術の中から直接に導き出せる選択である場合、創造性を具備しないと判断される。

【例】組成物Yの熱安定性の改善に関する発明において、組成物Y中の成分Xの最低含有量を確定したことを特徴とする発明であるとする。ここで、当該含有量が成分Xの含有量と組成物Yとの熱安定性の関係曲線から導き出せる場合、創造性を具備しないと判断される。

 

(iv)選択により予期できない技術的効果を奏する場合、突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、創造性を具備すると判断される。

【例】クロロチオギ酸を製造する現有技術は以下を開示している。原料メルカプタンに対する触媒カルボキシル酸アミド及び/又は尿素の用量比は、0~100%(mol)以下である。さらに実施例には、触媒の用量比は2%(mol)~13%(mol)であり、触媒用量比が2%(mol)を起点に、収率が向上する点記載されていた。

 また、一般専門技術者も収率を向上させるために、触媒用量比を高める方法を採用しているという背景があった。

 クロロチオギ酸を製造する本願選択発明は、低めの触媒用量比(0.02%(mol)~0.2%(mol))を採用することで、収率を予期される収率範囲を超える11.6%~35.7%まで向上させ、反応物の処理工程を簡略化させた。これは、本発明で選択した技術方案が予期できない技術的効果を奏する事が示されている。従って、本発明は創造性を具備すると判断される。

 

(次号に続く)

 

(コラム)

Aigo社(愛国者)が東芝を特許権侵害で提訴

 中国Aigo社はパソコン周辺機器に関する中国発明特許2件及び実用新型特許6件を所有しており、東芝が中国で販売する一部のパソコンが、特許権侵害に該当するとして2010年4月に西安市中級人民法院に提訴していた。この日は偶然にも第10回世界知的所有権の日でもあった。

 

 西安市中級人民法院は2011年9月Aigo社の訴えを認め、東芝のパソコンの差し止め及び20万元(約240万円)の損害賠償金の支払いを命じた。

 

 Aigo社はSATA(Serial Advanced Technology Attachment)連接器と称する発明特許出願(200610079222.2)を2006年4月17日に出願し、2010年2月3日に権利化した。SATAはコンピュータとハードディスクまたは光学ドライブ等の記憶装置を接続するための規格の一つである。

 

 本発明がなされる以前は、SATA連接器と電源連接器とはそれぞれ分離しており、回路基板上に2つの接続口が必要であるほか、ユーザも2つのケーブルを用意しなければならないという問題があった。

 

 この問題を解消すべく、両者を一体化し省スペース、コスト低減を実現したのが本発明である。

 

 

 プラグ10の本体11は一方から端子搭載部12が突出しており、内部に絶縁本体14が形成されている。絶縁本体14内部には電源用の端子13が15個並列に設けられている。そして、端子搭載部12の上側外面には4つのデータ端子15が設けられている。これにより、一つのプラグでデータの入出力及び電源の確保を可能とするものである。

 

 第1審で勝訴したAigo社は20万元という損害賠償額は低すぎるとして、100万元(約1200万円)の損害賠償を求め、2011年10月さらに高級人民法院へ上訴した。

 

 愛国者は1993年に設立された北京に本社を置くIT機器メーカー[1]であり、パソコン周辺機器の他、デジタルカメラ、タブレット、携帯電話、ボイスレコーダ等を製造販売している。社員数は約1900名である。

 

 2006年以降急激に特許出願を増加させ、現在26件の成立済み中国発明特許権及び92件の中国実用新型特許権を保有している。Aigo社のように近年中国企業は出願件数、保有特許件数を急激に増加させており、日本企業が中国において特許権侵害訴訟に巻き込まれるリスクは年々高まっている。競合中国企業に対する特許調査、公衆意見(日本でいう情報提供)、無効宣告請求等のリスク回避体制の構築が急務である。

 



[1] Aigo社HP(中文) http://www.aigo.com/web/

 

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