債権回収ここに注意 - 債権回収・トラブル防止 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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東京都
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閲覧数順 2024年04月23日更新

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債権回収ここに注意

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債権回収

債権回収ここに注意

 

1 与信管理

 与信管理する場合には、取引の相手方が個人か会社なのか、会社であれば権限ある人によってなされているかをチェックしなければなりません。

 個人の場合には運転免許証などによって身元確認します。

 会社の場合には、法人登記簿によって確認します。法人登記簿からは、頻繁に本店移転登記をしているか、役員の変更があるかなどをチェックできます。これらが頻繁に変更されていると、幽霊会社を買い取ったなどの疑いがあり、注意を要します。

 また、本店所在地、代表取締役の自宅などの不動産登記簿を閲覧取得する必要があります。例えば、これらの不動産に銀行以外の町の金融業者の抵当権が設定されていた場合には、与信することは慎まなければなりません。また、同業者が抵当権を設定している場合には、取引条件がそれだけ強い取引がなされていることを意味しますので、当社としても強い取引条件を申し込んでもよいことになります。しかし、そもそも、それだけ信用度が低いので強い取引条件になっている可能性が高いため、与信をすることを差し控えなければならない場合もあるでしょう。

 法人税の申告書控えの写しは是非とも3期分入手したいものです。財務分析によって、信用力が分かります。

2 売掛金の回収の注意点

 売掛金の場合には、契約書、注文書、注文請け書、荷送り伝票などがあるかどうかをチェックします。これらの証拠書類がないと、売掛金を仮差押などの裁判手続で請求することができない可能性が強いからです。

 また、売掛金にする前に信用状態が悪い場合には現金払いでの引換えの取引条件にできないか検討してみることが必要です。

 裁判外での回収手段としては、売掛先から商品を仕入れて、反対債権を作り出し、相殺することも検討してみてください。

 裁判手続での回収手段としては、①動産売買の先取特権、②仮差押などが考えられます。

 動産売買の先取特権とは、動産を売買した場合には、転売先に対する売掛金や転売目的物を他の債権者に優先して差押をすることができるというものです。そのため、証拠書類がしっかりしていることが必要になります。転売先に商品を直送している場合には、売掛先と転売先との契約書、転売先への荷送り伝票、転売先の受領書などが必要になります。普段からこれらの書類をそろえておくことが債権回収の第一歩となります。

 仮差押とは、預金債権や売掛金債権などの債権、動産などの財産を本裁判までの間に仮に差押するものです。信用状態が悪化した場合に、本裁判による本差押えまでの間に財産を確保する手続です。裁判所に申立てして行います。

3 手形の回収の注意点

 手形を受け取った場合には、原因となる売掛金債権の証拠が少々足りなくても、債権の存在が認められるという意味において強力な回収手段です。また、半年間のうちに同一の手形交換所において2回不渡りを出すと、銀行取引停止処分になるという意味でも、強力な回収手段です。

 そのため、手形の保全には、注意を要します。手形を貰ったら、受取人、支払期日、振出日などの手形要件を具備しているか確認を必ずしてください。

 手形交換所で手形要件を具備していない場合には、通常は、手形決済に応じてくれるのですが、法律では、手形要件を具備していない白地手形は、裏書人に対する遡求をできないとしています。裏書人に対する遡求とは、振出人が支払をしない場合に、裏書人に手形金額を請求できることをいいます。

 このため、実務では信用力を増すために、回り手形(振出人が直接の取引先ではなく第三者振り出しの手形のことをいいます)が使われます。回り手形であっても、幽霊会社が振り出した手形では意味がありませんから、与信管理を振出人に対して行い、振り出したか、支払う意思があるのかどうかの問い合わせも必要です。

 回り手形と同じ意味で、裏書をさせて、事実上、保証をさせることもよく行われています。例えば、代表取締役に個人保証をさせる趣旨で、裏書人にすることも、よく行われています。しかし、裏書人に経済的信用がないのであれば、やはり意味がありません。しっかりと事前に与信管理を行っておくことが必要となるでしょう。

 振出人から、支払期日の延期を求められたら、要注意です。すなわち、本来の支払期日が来たら、手形不渡りとなってしまうことを意味するからです。旧手形に裏書人がいる場合には要注意です。旧手形の支払期日だけを訂正して、振出人だけの訂正印で満足してはいけません。裏書人との関係では変造になってしまうので、裏書人の訂正印を取る必要があります。新手形を発行してもらう場合には、裏書人の裏書も記載してもらう必要があります。

 また、支払期日の延期を求められた場合には、それまで担保を取っていなかったことに対する強化策と考えましょう。連帯保証、抵当権設定、集合動産譲渡担保、集合債権譲渡担保などが考えられます。

 集合動産譲渡担保とは、一定の場所にある一定の種類の複数の物について、担保権者に担保に供することを言います。債務の返済ができなければ、譲渡することによって、担保するものです。債権譲渡特例法の規定により、法務局に登記することが可能となります。しかし、動産譲渡登記を備える以前に、占有改定(ある目的物の占有者が、それを手元に置いたまま占有を他者に移す場合をいう。直接占有はそのままに、間接占有が意思表示のみによって移転する方法)による引渡しを受けた者がいる場合には、引渡しの早い者勝ちになってしまうという難点があります。また、動産譲渡登記を備えていても、動産譲渡担保権について善意の買受け人が現れた場合には、善意取得されてしまう難点もあります。

 集合債権譲渡担保とは、一定の種類の複数の債権について担保権者に担保に供することを言います。債務の返済ができなければ、譲渡することによって、担保するものです。債権譲渡特例法の規定により、法務局に登記をすることと、第三債務者に対して通知をすることによって、対抗要件を満たします。

また、従来からの内容証明郵便による債権譲渡通知書による債権譲渡も利用できます。

4 倒産時の対応

 売掛先が倒産した場合には、商品の引き揚げが考えられます。自社商品であれば、契約書で、代金を完済するまで所有権は移転しないと特約しておくことにより、引き揚げが可能となります。引き揚げるぞと言って、売掛先の承諾を得て引き揚げればよいだけです。

 これに対して、他社商品の場合には、他社の所有権が留保されているかもしれず、慎重に対処することが必要となります。

 売掛先が倒産した場合には、担保権の対抗要件を具備させる必要があります。

5 サービサーの制度上の変化の実務への影響

債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)が改正され、サービサーが扱える債権の種類を大幅に緩和し、旧法では、金融機関等が有する不良債権などが中心となっていましたが、債務者が法的整理を申請した場合という条件付きで一般の事業会社の債権にも拡大されました。

 

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