事業承継と後継者以外の推定相続人がとることができる措置 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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対象:事業再生と承継・M&A

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事業承継と後継者以外の推定相続人がとることができる措置

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相続

3 後継者以外の推定相続人がとることができる措置に関する定め

旧代表者の推定相続人は,除外合意や固定合意をする際に,併せて,その全員の合意をもって,書面により,次に掲げる場合に後継者以外の推定相続人がとることができる措置に関する定めをしなければなりません(中小企業承継円滑化法4条3項)。

(ⅰ)当該後継者が除外合意や固定合意の対象とした株式等を処分する行為をした場合

(ⅱ)旧代表者の生存中に当該後継者が当該特例中小企業者の代表者として経営に従事しなくなった場合

 これらの場合のように,除外合意や固定合意をした後に,後継者が合意の対象とした株式等を処分したり,当該特例中小企業者の代表者を辞した場合には,円滑な事業承継の実現を図るための特例合意の趣旨が没却されてしまいます。しかし,その一方で,これらの場合に特例合意の効力を当然に消滅させることとすると,合意の対象とした株式等の価値が下落したような場合に後継者が当該株式等を処分することによって,自由に特例合意の効力を失わせることができてしまいます。これでは,円滑な事業承継が実現されません。

 そこで,あらかじめ,旧代表者の推定相続人間で協議をして,後継者以外の推定相続人がとることができる措置を定めるべきことが規定されています。

 この措置の具体的な内容について,法は特に定めを置いていませんが,次のような定めを置くことが考えられるでしょう。

(ⅰ)合意の対象とした株式等を処分した場合には,対価の全部または一部を推定相続人に分配すること

(ⅱ)後継者以外の推定相続人が単独で合意を解除することができること

(ⅲ)後継者に対して一定の違約金を請求することができること

 なお,(ⅲ)の場合に制裁金を請求することができる旨の解説書もありますが,法的性質としては,債務不履行の場合の損害賠償額の予定(民法420条)と解するべきです。民法は,債務不履行の場合に民事制裁という概念を条文上,掲げていないからです。

 

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