事業承継とM&A(合併) - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士
専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

2 合併

(1)合併とは

 合併とは,2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合同することをいいます。その類型には,合併により消滅する会社が存続する会社に吸収される「吸収合併」(会社法2条27号)と,合併により新たな会社が設立される「新設合併」(会社法2条28号)とがあります。合併の効果として,消滅会社の権利義務はすべて存続会社もしくは新設会社に承継されます(会社法752条1項,756条2項)。これを包括承継といいます。合併によれば,合併契約の内容の如何にかかわらず,法律上当然にすべての財産が包括的に承継されることになります。

 事業承継でよく利用されるのは,吸収合併です。

(2)手続

吸収合併の手続は以下の通りになっています(存続会社が株式会社の場合)。

①合併契約の承認(会社法362条4項,348条2項)

取締役会設置会社では,合併契約を締結する前に,各当事会社の取締役会の決議を経る必要があります。取締役会非設置会社では取締役の過半数の賛成が必要となります。

②合併契約の締結(会社法748条)

③合併契約に関する書面等の備置・閲覧(会社法782条1項,794条1項,会社法施行規則182条,191条)

消滅会社(存続会社)は吸収合併契約等備置開始日から吸収合併がその効力を生ずる日後6ヶ月を経過する日までの間,吸収合併契約等の内容そのた法務省令で定める事項を記載し,又は記録した書面等をその本店に備え置かなければなりません。

④株主総会による承認(会社法783条,795条)

原則として,合併契約で定めた効力発生日の前日までに,各当事会社において,株主総会の特別決議による承認を得る必要があります。

⑤公正取引委員会への合併届出書の提出(独占禁止法15条2項)

一定の規模以上の合併はあらかじめ,公正取引委員会に届け出なければなりません。

⑥株券提出手続

 合併により当該株式会社が消滅する場合において,株券を発行しているときは,効力発生日の1か月前までに,株主および登録株式質権者に対して,株券を提出するように通知・公告をしなければなりません(会社法219条1項6号)。

⑦債権者の保護手続(会社法789条,799条)

各当事会社において債権者の保護手続を行う必要があります。

各当事会社は債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には,必要事項を官報に公告し,かつ,知れている債権者には,各別にこれを催告しなければなりません。ただし,債権者が異議を述べる期間は1ヶ月を下ることは出来ません。

⑧株式買取請求権,新株予約権買取請求権(会社法785条,787条,797条)

合併に反対の株主には株式買取請求権が,消滅会社の一定の新株予約権者には新株予約権買取請求権が与えられています。

各当事会社は合併の効力発生日の20日前までに,合併する旨等を株主(新株予約権者)に対して通知もしくは公告をしなければなりません。

株主(新株予約権者)による買取請求は,効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までに意思表示しなければなりません。

⑨合併の効力発生日(会社法750条1項,752条1項)      

吸収合併存続会社は効力発生日に,消滅会社の権利義務を承継します。

⑩合併の登記(会社法750条2項,752条2項,908条1項,921条)

合併による効力が生じた日から2週間以内に,その本店の所在地において,消滅会社は解散の登記を,存続会社は,変更の登記をする必要があります。登記をしなければ,第三者に対抗することはできません。

⑪合併契約に関する書面等の備置・閲覧(会社法801条1項,801条3項施行規則201条)

存続会社は合併の効力発生後遅滞なく,法務省令事項を開示し株主及び会社債権者の閲覧に供します。

存続会社は,効力発生日から6ヶ月間当該書面等を本店に備え置かなければなりません。

これにより,株主及び債権者にとって合併無効の訴え(会社法828条1項7号)を提起するかどうかの判断材料になります。

⑫公正取引員会へ完了報告(届出規則7条4項)

存続会社は公正取引委員会に合併の登記を完了した旨の報告をしなければなりません。なお,届出規則とは,「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第9条から第16条までの規定による認可の申請,報告及び届出等に関する規則」の略です。

(3)メリット・デメリット

 権利移転に個別の処理が不要です。したがって,事業譲渡の場合と比べて手続は簡便といえます。

 また,譲渡対価が自社株式でよいため,買取資金が必要になりません。ただし,対価が譲受会社または新設会社の株式である場合には,好ましくない株主を取り込んでしまう可能性があります。

さらに,会社法においては,吸収合併の場合に,消滅会社の株主に対して,存続会社の株式を交付せず,金銭その他の財産を交付することが出来るようになりました(会社法749条1項2号,751条1項3号)。金銭を対価として少数株主を譲受会社または新設会社の株主としない場合のことをキャッシュアウトマージャーといいます。対価が親会社株式の場合は三角合併になります。

 他方,合併の場合,売り手企業は消滅してしまいますので,特に創業者には心理的に抵抗がある手段といえます。そして,合併は,会社の組織運営の根本に著しい変更をもたらす手続であり株主や会社債権者に重大な影響を与えます。そこで,会社法では慎重な手続を経て合併を行うことになります。

 

このコラムに類似したコラム

日経記事;新日鉄/住金合併,公取委が条件付き承認 に関する考察 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2011/12/15 08:15)

5月20日(水)事業承継セミナー開催のお知らせ 濱田 浩三 - 事業承継アドバイザー(BSA)(2015/05/08 11:00)

書籍の監修をさせて頂きました!!! 濱田 浩三 - 事業承継アドバイザー(BSA)(2015/03/26 11:00)

新年のご挨拶 濱田 浩三 - 事業承継アドバイザー(BSA)(2015/01/05 13:08)

約10名の従業員の雇用を守ることができました 濱田 浩三 - 事業承継アドバイザー(BSA)(2014/12/29 17:45)