米国改正特許法逐条解説 第3回 (第5回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国改正特許法逐条解説 第3回 (第5回)

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米国改正特許法逐条解説 (第5回)

~第3回 2011年改正法の要点~

 河野特許事務所 2012年3月26日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

5. 弁護士のアドバイスAdvice of counsel(AIAセクション17)

(1)改正の趣旨

 特許権侵害訴訟において、故意侵害と判断された侵害者は、最大3倍の損害賠償と弁護士費用の支払が求められる(第284条[1])。特許権者から故意侵害の主張がなされた場合、被告は、被疑侵害製品の製造前に弁護士から非侵害または特許無効の意見(Opinion)を得ていたと反論する事が多い。その一方で、ディスカバリにおいては、被告が「弁護士・依頼者間秘匿特権(attorney-client privilege)」に基づき弁護士意見の開示を拒否する事もあった。

 Knorr事件[2]以前は不利な推論アプローチ(adverse inference)が採用されており、弁護士意見の開示を拒否した場合、当該弁護士意見は被告に不利な内容であったと推論されていた。同様に、弁護士意見を得ていない場合にも、被告に不利な意見が出たであろうと推論されていた。

 Knorr大法廷判決は20年来続いていた不利な推論アプローチを否定し、「被告が 弁護士の意見を取得していない、または、意見を開示しないことにより、当該意見が自らに不利な内容であった、あるいは、不利な内容になったと推論されない」と判示した。

 そこで、法改正においては当該判示事項を成文化すべく、第298条を制定した。

 

(2)弁護士のアドバイスの影響

 係争対象となっている特許に関する弁護士のアドバイス(鑑定書など)を得ることの侵害者の不履行(failure)、または、当該アドバイスを裁判所または陪審員に示す事の侵害者の不履行は、被疑侵害者が故意に特許を侵害した、または、侵害者が特許の侵害を誘発する意図があったということを証明することに使用することはできない(298条)。すなわち、

(i)弁護士のアドバイスを得ていなかったとしても、それだけでは特許権侵害があったということを証明できない。また、

(ii)弁護士のアドバイスを秘匿特権に基づき裁判所に開示しなかったとしても、それだけでは特許権侵害があったということを証明できない。

 

改正後

第298条 弁護士のアドバイス

 係争対象となっている特許に関する弁護士のアドバイスを得ることの侵害者の不履行(failure)、または、当該アドバイスを裁判所または陪審員に示す事の侵害者の不履行は、被疑侵害者が故意に特許を侵害した、または、侵害者が特許の侵害を誘発する意図があったということを証明することに使用することはできない。

 

6. 発明者の宣誓または宣言と、譲受人による出願(AIAセクション4)

(1)概要

 改正前は原則として発明者が出願人であることが要求されていたが、他国との調和を図るべく、企業等の譲受人が出願人として特許出願することができるようになった(118条)。その他宣誓書の記載様式が変更された。

 

(2)譲受人による出願

 発明者が発明を譲渡する者または発明者が発明を譲渡する義務のある者は、特許出願を行うことができる。

 その他、十分な経済的利害関係を証明する者は,発明者の代わりに及び代理人として、該当する事実の証明に基づき、かつ、出願行為が当事者の権利を確保するために必要であることを立証して、特許出願を行うことができる(118条)。

 

(3)宣誓書への発明者のサイン

 譲受人が出願人になったとしても当然に出願には発明者の名前を含める必要がある。また、発明者または共同発明者である各人は、出願に関し宣誓書または宣言書にサインしなければならない(115条(a))。

 

(4)宣誓書または宣言書に必要な説明(115条(b))

 宣誓書または宣言書には以下の説明が必要となる。

(i)出願が、宣誓供述者または署名宣誓人によりなされた、または、承認されたこと、及び、

(ii)当該個人が、自身が特許出願におけるクレーム発明の原発明者または原共同発明者であると信じていること。

 

(5)追加の要件

 長官は、宣誓書または宣言書に記載の発明者及び発明に関する情報を追加するよう指定することができる(115条(c))。具体的にどのような情報を追加するかについて、現在USPTOが規則を作成中である。

 

(6)代替説明書

 発明者がサインできない場合もあることから、宣誓書または宣言書に代えて、一定条件下で代替説明書を提出することができる(115条(d))。具体的な条件は以下のとおりである。

代替説明書は、以下の者に関し許可される

 (A) 宣誓書または宣言書を提出することができない者であって、以下の者—

(i)死亡した者

(ii)法的無能力者

(iii)真摯な努力によっても発見または連絡できない者

 (B)発明を譲渡する義務があるが、サブセクション(a)のもと宣誓または宣言することを拒否した者

 

(7)代替説明書への記載事項

 代替説明書には、当該説明書を利用する個人を特定し、宣誓書または宣言書に代えて代替説明書を提出することについての許可根拠を示す状況を明記しなければならない。その他、長官により追加の情報(提示も含む)が要求された場合、それらをも説明書に含めなければならない(115条(d)(3))。なお、追加情報についてはUSPTOが規則を作成中である。

 

(8)譲渡証への(b)(c)の記載

 特許出願の譲渡義務のある個人(発明者)は、サブセクション(b)(宣誓書または宣言書に必要な説明)及び(c)(追加の要件)のもと、説明書を分けて提出する代わりに、個人によりなされる譲渡証において要求された説明を含むことができる(115条(e))。すなわち、譲渡証(assignment )にサブセクション(b)(宣誓書または宣言書に必要な説明)及び(c)(追加の要件)の記載を盛り込むことが可能である。

 

(9)虚偽があった場合のペナルティ

 提出する宣誓書または説明書に、意図的な虚偽の記述がある場合、米国法典第18巻1001条(section 1001 of title 18)に基づき罰金または5年以下の懲役により罰せられることを承知する旨の記載を、宣誓書または説明書に含まなければならない(151条(i))。

 

(10)施行時期

 1年後の2012年9月16日に施行される。本改正に伴い宣誓書及び願書(PCT出願の願書を含む)のフォーマットを変更する必要がある。

 

改正前

改正後

第115 条 出願人の宣誓

出願人は,特許を求める方法,機械,製品若しくは組成物又はそれらの改良に関し,本人が本来かつ最初の発明者であると信じる旨の宣誓をし,また,同人が何れの国の国民であるかを述べなければならない。当該宣誓は,合衆国内において宣誓をさせる権限を法律によって与えられている者の面前で,又は,外国においてするときは,宣誓をさせる権限を与えられている合衆国の外交官若しくは領事官の面前で,又は出願人が居住する外国において官印を保有し,かつ,宣誓をさせる権限を与えられている職員であって,その権限が合衆国の外交官又は領事官の証明書により,又は合衆国において指名された職員の添書に,条約若しくは協定により,同様の効力を与える外国によって指名された職員の添書によって証明されている者の面前で行うことができる。宣誓は,宣誓が行われた州又は国の法律を遵守している場合に有効である。出願が発明者以外の者により,本法の規定に従ってなされる場合は,宣誓は出願人が実行することができる形式に変更することができる。本条の適用上,領事官には,海外勤務の合衆国国民であって,修正された改正制定法集(合衆国法典第22 巻第4221 条)第1750 条により,公証職務を行う権限を与えられている者を含めるものとする。

第115条 発明者の宣誓または宣言

(a)発明者の名前;発明者の宣誓書または宣言書-米国特許法第111条(a)(特許出願)の規定に基づき出願された特許出願または米国特許法第371条(国内段階)に基づき国内移行を開始した出願は、当該出願のクレーム発明の発明者の名前を含む、或いは、含むよう補正されるものとする。本章で規定されている場合を除き、特許出願のクレーム発明の発明者または共同発明者である各人は、出願に関し宣誓書または宣言書にサインするものとする。

(b)要求される説明-サブセクション(a)に基づく宣誓書または宣言書は以下の説明を含むものとする—

  (1)出願が、宣誓供述者または署名宣誓人によりなされた、または、承認されたこと、及び、

  (2)当該個人が、自身が特許出願におけるクレーム発明の原発明者または原共同発明者であると信じていること。

(c)追加の要件-長官は、サブセクション(a)の規定に基づく宣誓書または宣言書に含むよう要求される発明者及び発明に関する情報を追加するよう指定することができる。

(d)代替説明書-

(1)概要-サブセクション(a)に基づく宣誓書または宣言書へのサインに代えて、パラグラフ(2)において記載された状況下及び長官が規則により特定する追加の状況下において、特許出願人は代替説明書を提供することができる。

(2)許可される状況-サブパラグラフ(1)における代替説明書は、以下の者に関し許可される-

 (A) サブセクション(a)の規定に基づき、宣誓書または宣言書を提出することができない者であって、以下の者—

   (i)死亡した者

   (ii)法的無能力者

   (iii)真摯な努力によっても発見または連絡できない者

 (B)発明を譲渡する義務があるが、サブセクション(a)のもと宣誓または宣言することを拒否した者

 (3)内容-本サブセクションに基づく代替説明書は-(中略)

第118 条 発明者以外の者による出願

発明者が特許出願をすることを拒否する,又は適切な努力をしたにも拘らず発明者を発見することができない若しくは発明者に連絡することができない場合は,発明者から発明を譲渡されている若しくは書面により譲渡の同意を得ている者,又はそれ以外に,出願行為を正当化する事項に関する十分な経済的利害関係を証明する者は,該当する事実の証明に基づき,かつ,出願行為が当事者の権利を確保するため又は回復することができない損害を防ぐために必要であることを立証して,発明者の代わりに代理人として特許出願をすることができる。

特許商標庁長官は,当該発明者に,同長官が十分であるとみなす通知を行い,かつ,同長官が定める規則に従って,特許を付与することができる。

第118条発明者以外の出願

発明者が発明を譲渡する者または発明者が発明を譲渡する義務のある者は、特許出願を行うことができる。それ以外に、事項に関する十分な経済的利害関係を証明する者は,発明者の代わりに及び代理人として、該当する事実の証明に基づき、かつ、出願行為が当事者の権利を確保するために必要であることを立証して、特許出願を行うことができる。長官が発明者以外の者により本章に基づき申請された出願に係る特許を認めた場合、当該特許は、長官が条件を満たすと判断したことを発明者に通知することにより、実際の利害関係のある当事者に対し認められる。

 



[1]第284 条 損害賠償

原告に有利な評決が下されたときは,裁判所は原告に,侵害を補償するのに十分な損害賠償を裁定するものとし,当該賠償は如何なる場合にも,侵害者が行った発明の使用に対する合理的ロイヤルティに裁判所が定める利息及び費用を加えたものを下回らないものとする。

損害賠償額について陪審による評決が行われなかった場合は,裁判所がそれを査定しなければならない。何れの場合にも,裁判所は損害賠償額を評決又は査定された額の3 倍まで増額することができる。本段落に基づいて増額された損害賠償は,第154 条(d)に基づく仮の権利には適用されないものとする。

[2] Knorr Bremse v. Dana Corp., 72 USPQ2d 1560 (Fed. Cir. 2004)(en banc)

 

(第6回へ続く)

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