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継続審査請求後の優先審査の取り扱い
~米国特許法改正に基づく規則改定~
河野特許事務所 2012年3月9日 執筆者:弁理士 河野 英仁
1.概要
優先審査制度とは、所定の追加料金の支払いによりUSPTOが優先して審査を行う制度をいう。
米国改正特許法(Leahy-Smith America Invents Act(以下AIA))が施行される前に、既にUSPTOは、審査に関し3種類のトラックを設け、出願人に3つの内のいずれかを選択させ、審査効率の向上化を図ろうとしていた。トラック1は、他の出願よりも優先的に審査する優先審査、トラック2は通常の審査、トラック3は逆に最大30ヶ月まで審査を繰り延べするものである。ところが、USPTOの予算の関係上、2011年5月4日開始予定であった3トラックシステムは中断された。
しかしながら、審査請求制度を採用しない米国においては、全ての出願が出願順に審査されるため、市場において重要な発明については他の出願に先駆けて優先的に審査を行い、速やかに特許成立を図る必要があった。そこで、AIAではトラック1による優先審査制度を採用し、サイン10日後の2011年9月26日から所定料金の支払いを条件に優先審査請求を認めることとしたものである。
2011年12月19日USPTOは継続審査請求(RCE:Request for Continued Examination)が行われた特許出願に対する優先審査の取り扱いに関する規則(1.102(e))を公表した。本稿では同規則の内容を説明する。
2. 適用要件
RCEとは同一出願内で審査の継続を求め、審査のやり直しを求めることをいう(規則1.114)。実務上はアドバイザリ通知を審査官から受けた際にRCEを申し立てることが多い。RCEを申し立てた特許出願に対し、優先審査を受けるためには、以下の条件を満たす必要がある。
(1)米国特許法第111条(a)(特許出願)または米国特許法第371条(国内段階)に基づく国内段階に移行している原特許出願において、RCEがなされていること。
(2)優先審査の申し立てが、電子出願システムにより行われていること。
(3)優先審査の申し立て時に、出願は、4以下の独立クレーム及び全30以下のクレームを含む、または、含むよう補正しなければならない。また、多項従属クレームは認められない。
優先審査が認められた出願において4を超える独立クレームまたは全30を超えるクレームとなる補正が提出された場合、または、多項従属クレームとなる補正が提出された場合、優先審査は終了する。
(4)優先審査と共に、所定の手数料を支払うこと[1]。
(5)AIAは現在のところ、優先審査請求数を制限している。1会計年度あたり1万件しか認められない。この数には、元の審査についての優先審査とRCEを申し立てた後の優先審査との双方が含まれる。
3.時期的要件
優先審査の申し立ては、RCEの申し立てと同時またはその後のいずれかでよい。なお、通常の出願に対する優先審査の申し立ては出願と同時である点に注意する[2]。
4.施行時期
本規則は2011年12月19日から即日施行される。また本改正規則の変更は、2011年12月19日の前、同日及び、2011年12月19日以降にRCEが申し立てられた全ての出願に対して適用される。
規則詳細はUSPTOのHP
http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2011-12-19/pdf/2011-32434.pdf
からダウンロードできる(PDFファイル)。
以上
[1] 通常の出願に対する優先審査費用が4,800ドルであることから(AIAセクション11(h)(1)(A)(i))、RCE出願に対する費用も4,800ドルと思われる。
[2] Federal Register / Vol. 76, No. 185 at 59050
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