配転・出向・転籍 - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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対象:労働問題・仕事の法律

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閲覧数順 2016年12月02日更新

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1 配転・出向・転籍

(1)配転

 配転とは,従業員の配置の変更であってしかも職務内容または勤務場所が相当の長期間にわたって変更されるものをいいます。このうち,同一勤務地内の勤務箇所の変更を「配置転換」,勤務地の変更を「転勤」といいます。

 配転命令を行うためには,就業規則において配転を一般に許容する条項を定めるか,労働者の包括的な同意を得ることが必要です。

 もっとも,配転命令も無制約に認められるものではなく,労働契約内容による限定(例えば,職種や勤務地を限定する合意がある場合等)や,権利濫用法理による制約(労働契約法3条5項)を受けます。

権利濫用にあたるか否かの判断は,業務上の必要性と労働者の不利益を比較衡量することによって判断されます。具体的には,「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」には権利濫用になります(最判昭和61・7・14判時1198号149頁)。この判例では,配転に応じると家庭の事情により単身赴任をせざるを得ない場合でも,その不利益は社会通念上甘受すべきものであるとして,業務上の必要性がある限り,配転命令は権利濫用にあたらないと判示しました。

(2)出向

出向とは,労働者が自らの雇用先たる企業に在籍したままで,他の企業の事務所で相当長期間にわたり当該他の企業の業務に従事することをいいます。

 労働者に対して出向を命じるためには,民法625条1項により労働者の同意が必要となります。これは,出向が当初の労働契約の相手方とは別の企業に対して労務を提供するものであるから,労働契約上の地位の一部を第三者に譲渡するものと考えられることによります。

もっとも,ここでいう労働者の同意とは,出向ごとの個別の同意を意味するのではなく,就業規則や労働協約上の規定や採用時等における当該労働者の同意があれば足りると考えられています。ただし,近時の判例はそのような包括的同意だけではなく,出向規定・出向契約等において,出向先との関連性,出向先での労働条件,出向期間,復帰条件などが定められ,労働者の不利益を小さくする配慮がなされることが必要である,と考えています(最判平成15・4・18労判847号14頁)。

さらに,このような要件に加えて,配転命令の場合と同様に,出向命令が権利の濫用にあたらないことが必要です。その判断は基本的に,出向を命ずる業務上の必要性と出向命令の対象たる労働者の労働上の不利益や生活上の不利益との比較衡量によるものと考えられています。そして,その具体的な判断においては,労働者の生活状況,労働者に著しい不利益が生じないための担保条件として,出向者の人選,就労すべき業務内容,場所,従業員としての地位の確保,賃金,退職金,出向手当,昇給・昇格等の査定等の処遇が社外勤務規定等に明確に規定されていることなどが考慮されます(前掲最判平成15・4・18)。

(3)転籍

転籍とは,従来の使用者との労働関係を終了させ,移籍先の使用者との労働関係に入ることをいいます。転籍には,労働者が現労働契約について現使用者と合意解約をして退職し,同時に他の企業と新たに雇用契約を締結する場合と,労働契約上の使用者の地位の譲渡による場合とに類型化することができます。

 前者の場合においては,合意解約と新たな契約の締結がなされるので,労働者の個別的な同意が必要となります(高知地判昭和53・4・20労判306号48頁)。

 後者の場合においても,契約上の地位の譲渡であるから,契約の他方当事者である労働者の同意が必要になります(民法625条1項)。しかも,包括的な同意(就業規則等)で足りるとされる出向の場合と異なり,転籍の場合は移籍元との契約関係が消滅する点で労働者への不利益が生じるおそれが大きいため,そのつどの個別的な合意が必要であると考えられています(東京地判平成7・12・25労判689号31頁)。

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