解雇 - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士
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3 解雇

 解雇とは,使用者による労働契約の解約です。期間の定めのある労働契約の場合,

使用者はやむを得ない事由がない限り,労働者を解雇することはできません(労働

契約法17条1項)。ここでいう,やむを得ない事由は,期間の定めのない労働契約

における解雇に必要とされる要件よりも厳格に判断されますから,以下では,期間

の定めのない労働契約を前提に話を進めます。

(1)解雇権濫用法理

 「解雇は,客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当あると認められない場合

は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」との規定があります(労働契約

法16条)。これは,「客観的に合理的な理由」が認められなければ解雇は無効である

こと,また「客観的に合理的な理由」が認められる場合であっても「社会通念上相

当であると認められない場合」にも解雇は無効になることを意味します。

(2)普通解雇

 普通解雇は,使用者が通常行う解雇形式であり,その解雇事由は,就業規則に必

ず記載されなければならない事項です(労働基準法89条3号)。

就業規則に列挙された事由は限定列挙の意義を持ち,列挙された以外の事由によ

る解雇は許されない,というのが現在,有力な考え方です(菅野和夫『労働法第9版』484頁)。ただし,このように考えても,実務上,解雇事由の中に包括条項を規定している場合がほとんどですので,限定列挙の意義は必ずしも大きくありません。

 解雇の効力を争う訴訟においては,使用者による「客観的に合理的な理由」の主張立証として,就業規則の解雇事由該当性判断が行われることになります。就業規則の解雇事由に基づかない解雇は「客観的に合理的な理由」なしと事実上推定されてしまうためです。

(3)整理解雇

 整理解雇とは,企業が経営上必要とされる人員削減のために行われる解雇のこと

をいいます。普通解雇の一種ですから,就業規則の解雇事由該当性判断が中心的争

点になることに変わりありませんが,その解雇が労働者の責めに帰すべき事由なく

行われるものであることから,解雇権濫用法理の適用においてより厳しく判断すべ

きものと考えられています。整理解雇が解雇権濫用になるかどうかの判断要素とし

ては,①人員削減の必要性,②人員削減手段として整理解雇を選択することの必要

性(「解雇回避努力義務」),③被解雇者選定の妥当性,④手続の妥当性,が挙げられ

ます(菅野和夫『労働法第9版』490頁)。

(4)懲戒解雇

 懲戒解雇とは,懲戒処分として行われる解雇のことをいい,懲戒処分としての性

格と解雇としての性格を併有しているものです。懲戒解雇が行われた場合には,退

職金の不支給や減額がなされることが多く,また,再就職する際に,重大な障害と

なります。そこで,懲戒解雇の有効性は,普通解雇を正当化するだけの程度では足

りず,企業秩序違反に対する制裁罰としての観点からこれを正当化するものでなけ

ればなりません(菅野和夫『労働法第9版』488頁)。

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