定年延長を理由とする賃下げの可否(第四銀行事件) - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2016年12月04日更新

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定年延長を理由とする賃下げの可否(第四銀行事件)

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【コラム】定年延長を理由とする賃下げの可否(第四銀行事件 最判平成9・2・28民集51巻2号705頁)

(ⅰ)事案

 Xは,Y銀行の行員であり,Y銀行では,従来,職員の定年は55歳とされていましたが,3年間を限度とする定年後在職制度が存在しており,男子行員については,健康上の理由等で勤務に耐えない者を除いて,希望者の定年後在職が認められてきました。しかし,Y銀行が定年を60歳に延長し,55歳以降の賃金を54歳時の63~67%に引き下げる就業規則変更を行いました。これにより,従前の定年後在職制度で55歳から58歳までに得ることが期待できた賃金合計額は約2871万円でありましたが,本件定年制の下では同じ年齢の間で得られる賃金は約1928万円となり,55歳から60歳までに得られる賃金は約3078万円になります。Xは,本件就業規則変更の効力を争い,従来の定年後在職制度の下で支給されることになっていた賃金との差額の支払いを求めました。

(ⅱ)判旨

 裁判所は,「特に,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるものというべきである。」と判示し,本件においては,その合理性を肯定しました。具体的な判断ポイントは,以下の点です。

① 定年後在職制度の運用実態にかんがみれば,勤務に耐える健康状態にある男子行員においては,58歳までの定年後在職することができることは確実であり,既得の権利を消滅,減少させるものではないとしても,従前の定年後在職制度の下で得られると期待することができた金額を2年近くも長く働いて得ることになる不利益は,大きい。

② しかし,定年制の延長は,いわば国家的な政策課題とされ,社会的に強く要請されていたのであり,Y銀行においても定年延長の高度の必要性があった。

③ 定年延長後の55歳以降の賃金水準は業界他社および社会一般の賃金水準と比較して,かなり高い。

④ 福利厚生制度の適用延長や拡充,特別融資制度の新設等の措置が採られていることは,年間賃金の減額に対する直接的な代償措置とはいえないが,本件定年制度導入に関連するもので,これによる不利益を緩和するものである。

⑤ 行員の約90%で組織される労働組合との交渉,合意を経て労働協約を締結した上で行われたものである(Xは,当該労働組合の加入資格を認められていないが,問題ないとする)。

⑥ 就業規則変更当時,Xは55歳を目前に控えており,このような者に対しては定年後在職制度も一定期間残存させ,選択させるなどの経過措置を講ずることが望ましいが,このような経過措置がないからといって,合理性は否定されない。

 

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