対応の良さや性能の良さだけではなく、その家を好きになれるかが問題かと思います。
ハウスメーカーの家が嫌いで検討する訳はないので、良いところがあるのだろうと思いますが、良いところがあるからと云って好きになれるとは限りません。
そう云う意味では恋愛に似てるかも知れませんね。
その家が本当に好きであれば、向こう何十年も支払うローンも辛くないはずです。でも好きでなければ、負担の辛さが募ってくると思います。初めは新しいので、綺麗で人にも自慢出来ますが、そのうち近所にもっと新しい家が増えてきて、キッチンやユニットバスも新製品と比べ見劣りする様になります。そんな家でも好きでいられる自信があるならハウスメーカーに依頼されても良いかと思います。
先日、京都嵯峨野の落柿舎を35年振りに尋ねました。私が学生時代に先輩から「300年前に建った家があるから見て来い」と云われて見に行った建物です。落柿舎は、松尾芭蕉の門人、向井去来の閑居で当時の庶民の住居の佇まいを良く残しています。
決して贅沢な造りではありません。屋根は当時庶民まで普及し始めた瓦屋根ではなく、藁葺き屋根です。壁も漆喰壁ではなく土塗りの荒壁のままです。柱に至っては今で言う間伐材です。学生だった私は、この家が何故300年間も壊れず、壊されず今まで残ったのか理解出来ませんでした。
今回尋ねて、何故この家が残ったのか判る気がしました。嵯峨野と云う風土、向井去来と云う人物が落柿舎と符合しているのです。その土地にだけ合う家、その人にだけ合う家が、嵯峨野を愛する人に愛され、向井去来を慕う人に愛されたからこそ、300年の風雪に耐えたのです。
繰り返しますが、決して贅沢な家ではありません。当時なら何処にでもある普通の家だったでしょう。
同じお金を掛けるなら、自分が本当に好きになれる家造りを目指してください。そうでないと、月々のローン返済が重荷になります。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
「●家を建てよう!!」のコラム
建築条件付土地分譲の弊害を考える(2017/04/07 15:04)
秀光ビルドの家を調査しました(2017/03/27 12:03)
防火構造と準耐火構造(2017/02/09 08:02)
火災対策(2017/02/04 11:02)
割安なハウスメーカーは?(2017/01/11 09:01)
このコラムに類似したコラム
沖縄 中村家住宅 浜田 幸康 - 建築家(2010/12/07 16:51)
【森を招く家】展覧会に出展しました。 西島 正樹 - 建築家(2024/04/01 11:58)
【杉並の家】作品が掲載されました 西島 正樹 - 建築家(2023/12/05 19:46)
【森を招く家】360°3Dをアップしました 西島 正樹 - 建築家(2023/08/30 11:40)
取材記事『気付かないところを気付かせてくれる建築家』が掲載されました 西島 正樹 - 建築家(2023/08/24 17:01)