取締役の報酬の決定方法 - 会社法・各種の法律 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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取締役の報酬の決定方法

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第5 取締役の報酬

1 株主総会の決議

(1)報酬支払の特約

 取締役と会社との関係は,委任に関する規定に従いますから(会社法330条),特

約のない限り無償となるのが原則ですが(民法648条1項),通常,会社と取締役と

の間の任用契約において,適法な手続によって定められた報酬を与える旨の明示又

は黙示の特約が含まれている場合がほとんどになります。

(2)具体的な報酬請求権

 報酬支払の特約があっても,会社法361条により,定款の定めまたは株主総会の

決議がなければ,具体的な報酬請求権は発生しません。

 なお,株主総会の決議に代わる全株主の同意がある場合にも,株主総会があった

と擬制し,取締役の具体的な報酬請求権が発生します(最判平成15・2・21金法1681

号31頁)。

 株主総会決議不存在により役員報酬名目の支出につき,会社から取締役に対する不当利得返還請求が認められた裁判例として東京地判平成18・3・27LLI登載があります。

(3)毎事業年度ごとの決議の要否

 会社法361条1項は毎事業年度ごとの決議までも要求していませんから,いった

ん株主総会で決議すれば,その後は,変更する場合のみ決議すればよいとされます

(上柳克郎ほか編『新版注釈会社法(6)』390頁)。

(4)報酬支払後の株主総会の決議

 前述したとおり,報酬支払の特約があっても,会社法361条により,定款の定め

または株主総会の決議がなければ,具体的な報酬請求権は発生しませんから,会社

法361条の規定は報酬支払前に株主総会の決議を要求していると考えられます。

しかし,判例(最判平成17・2・15判時1890号143頁)は,株主総会の決議を

経ずに役員報酬が支払われた場合であっても,これについて,事後に株主総会の決議を経ることにより会社法361条,387条1項のお手盛り防止の趣旨を没却するような特段の事情のない限り,当該役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになるとして,株主総会の決議を経なかったことに関する株主代表訴訟継続中における,株主総会決議により,本件役員報酬相当額の損害を否定しました。

 会社法361条,387条1項のお手盛り防止の趣旨を没却するような特段の事情が

どのような場合を指すのか,判旨からは明らかではありませんが,報酬支払後の株

主総会決議によりその報酬支払は,原則として有効になります。

 

2 取締役会への一任

 取締役との任用契約を締結するのは,会社ですから,取締役の報酬の決定を取締

役会ないし代表取取締役が行うことも考えられます。

 しかし,会社法361条は,取締役会ないし代表取締役が報酬のお手盛りをする危

険に鑑み,定款または株主総会の決議を要求することとしたわけです。かかる趣旨

からすれば,定款または株主総会が取締役の報酬の決定を取締役会へ無条件に一任

することは許されませんが(東京地判昭和判タ13号74頁),定款または株主総会決

議により個々の取締役ごとに各事項を定めることまでは必要なく,取締役全員に対

する支給総額を定め,その具体的配分を取締役会に委ねることは許されます(最判

昭和60・3・26判タ557号124頁)。

 なお,既に支払総額が定められている以上,各取締役にどのように報酬が配分さ

れようとも,会社との利害対立が生じませんから,各取締役は取締役会における特

別利害関係人(会社法369条2項)には当たらないと解するのが通説です(江頭憲

治郎『株式会社法第3版』419頁)。

 

3 代表取締役への再委任

 株主総会から具体的配分の一任を受けた取締役会が,その権限をさらに代表取締

役に一任することは許されるでしょうか。

 この点,取締役会の構成員である取締役の代表取締役に対する監視義務(会社法

362条2項2号参照)が歪められるおそれがあり,そのような一任は許されないと

する見解もありますが(上柳克郎ほか編『新版注釈会社法(6)』391頁),判例は,

自身の報酬配分を含む具体的配分を代表取締役に再委任することを認めており,し

かも,再委任された代表取締役が一度,決定した具体的配分は,代表取締役の同意

がない限り,取締役会といえども,変更することができないとしています(最判昭

和34・10・5集民23号409頁)。

 

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