執行役員の法的性質 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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【コラム】執行役員の法的性質

 執行役員とは,主に大規模会社において,取締役の人数を減らして会社の業務執行に当たる役員ポストとして設けられるものです。

執行役員は,取締役会によって選任され,代表取締役や業務執行取締役の指揮の下,会社の業務執行を分担し,代表取締役や業務執行取締役を補佐するものとされます。

委員会設置会社における「執行役」とは異なり,会社の機関ではなく,一種の重要な使用人(会社法362条4項3号)と位置付けられます(江頭憲次郎『株式会社法 第3版』385頁)が,会社との関係は委任関係と位置付けられることが多いようです(菅野和夫『労働法』98頁)。ただし,労働契約関係にある管理職の一種として制度化されている場合がありうることが指摘されています(菅野和夫『労働法』98頁)。

 執行役員に関する最高裁の事件として,最判平成19・11・16判時1991号157頁があります。この事件の執行役員は,従業員を退職した上で取締役会からの委任により就任したものであるから,委任契約としての性格が強いと評価することができそうです。

 しかし,前述の通り,労働契約該当性の判断は,実態に即して行われますから,執行役員の法的性質を一般論として論ずることはあまり意味がないともいえます。

 この判例では,従業員を退職して執行役員に就任する際に,従業員としての退職金を受領していました。そこで,もっぱら執行役員としての退職金が執行役員退職慰労金規則に基づき支払われるべきか,が争われています。

 最高裁は,会社が執行役員に対して支給してきた退職慰労金は,功労報償的性格が極めて強く,執行役員退職金規則は代表取締役の決裁で作成,改定する内規であり,同規則は退任する執行役員に対し退職慰労金を支給する場合に適用するものと定められ,必ず支給する旨の規定もなく(なお,仮に執行役員に必ず退職慰労金を支給するものとなると,取締役の退職慰労金を統制する会社法361条の適用を受けないこととなって,かえって取締役より優遇されることとなる矛盾もあります。),執行役員退任の都度,代表取締役の裁量的判断により支給されてきたにすぎないものと認められ,会社が退任する執行役員に対し退職慰労金を必ず支給する旨の合意や事実たる慣習があったということはできないとして,執行役員の会社に対する退職慰労金請求を棄却しています。

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