事業承継と単元株 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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第2 単元株

 単元株とは,株式の一定数をまとめたものを1単元とし,1単元に1個の株主の議決権を付与する制度のことをいいます。これにより,1単元とされた一定数の株式に満たない株式しか持たない株主は,その有する単元未満株式については,株主総会及び種類株主総会において議決権を行使することができなくなります(会社法189条1項)。その他,取得対価の交付を受ける権利等会社法189条2項各号に定める権利以外の全部または一部を行使することができない旨を定款で定めることができます(会社法189条2項)。

 

1 事業承継との関係

 一単元につき一個の議決権が認められ(会社法308条1項但書),単元未満株主には,議決権が認められません(会社法189条1項)から,少数株主排除のために保有比率の低い株主の保有する株式が単元未満株式となるような単元の定め方をすることが考えられます。【事例】において,例えば,経営者甲の保有株式が450株,弟戊の保有株式が340株,妻乙の保有株式が120株,後継者である長男丙の保有株式が50株,次男丁の保有株式が40株であった場合,この状態だと,甲,妻乙,長男丙の保有株式を合計しても議決権の3分の2以上を確保することができませんが(合計620株),定款変更により50株を1単元とすれば,甲は9個,戊は6個,乙は2個,長男は1個,次男は0個の議決権を持つことになり,甲,妻乙,長男丙の保有株式は議決権の3分の2をちょうど満たすことができます。

 ただし,少数株主排除のみを目的にした単元株の採用は濫用的なものとして,単元株を採用する定款変更の決議をした株主総会決議取消請求訴訟の理由となる可能性があります。

 

2 導入方法

 会社は,定款をもって,一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において1個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定める(会社法188条1項)ことになりますから,定款変更のための株主総会特別決議が必要になります(会社法466条,会社法309条2項11号)。1000株を超える数の株式を一単元とすることはできません(会社法188条2項,会社法施行規則34条)。また,種類株式発行会社では,単元株式数は,株式の種類ごとに定めなければなりません(会社法188条3項)。取締役は,当該単元株式数を定める定款の変更を目的とする株主総会において,当該単元株式数を定めることを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法190条)。

なお,種類株式発行会社において,定款変更によりある種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがある場合には,その種類株主総会の特別決議が必要になります(会社法322条1項1号ロ,会社法324条2項4号)。もっとも,定款でこの種類株主総会の決議を排除することが可能です(会社法322条2項3項)。

 単元株制度を導入した場合には,その単元株数につき2週間以内に登記しなければなりません(会社法911条3項ハ,915条1項)。

(定款案)

(単元株式数)

第○条 当会社の1単元の株式数は,○○株とする。

 

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