事業承継と新株予約権(ストックオプション) - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
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事業承継と新株予約権(ストックオプション)

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第2 新株予約権

 新株予約権とは,株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます(会社法2条21号)。

1 事業承継との関係

 新株予約権は,これまで資金調達や割当を受けた者にとってのインセンティブ報酬といった側面が強調されがちでした。

 しかし,最近では,事業承継でも有効な手段として機能することが注目されています。第1に,事業承継が問題となる業績の良い企業では,多くの場合年々自社株式の評価が上がっていきますが,新株予約権を付与することにより,新株予約権者は,予め定められた行使価格を超える株価上昇分を負担することなく株式を取得することができることになります。第2に,新株予約権を付与する段階では,行使価格の払い込みが必要になるわけではないので,多額の資金がすぐに用意できない者でも,後継者候補として新株予約権の付与を受けることができます。また,【事例】の場合のように,後継者丙が経営者として未熟な場合に,甲は,新株予約権の行使時期を調整することで,円滑な事業承継を実現できます。

 

2 導入方法

(ⅰ)募集事項の決定

 新株予約権の発行の手続については,まず,募集事項の決定に始まります。募集事項とは,新株予約権募集に当たって定めなければならない条件をいい,具体的には次の5点を決定しなければなりません(会社法238条1項)。

①募集新株予約権の内容及び数

②募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には,その旨

③募集新株予約権の払込金額又はその算定方法

④募集新株予約権を割り当てる日

⑤募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは,その期日

ア 公募又は第三者割当ての場合

 公募又は第三者割当ての場合には,原則として,募集事項の決定は株主総会の特別決議によります(会社法238条2項,309条2項6号)。ただし,株主総会の特別決議によって,募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することができます(会社法239条1項,309条2項6号)。 この委任の有効期間は,1年間です(会社法239条3項)。

 公開会社では,取締役会の決議により募集事項を決定することができます(会社法240条1項)。

 なお,金銭の払込みを要しないとすることが募集新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件である場合又は払込金額が特に有利な金額である場合(有利発行)には,取締役は,株主総会において,当該条件又は当該払込金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法238条3項)。この場合,取締役会限りで募集事項を決定することはできず,株主総会の特別決議が必要になります(会社法240条1項参照)。

イ 株主割当ての場合

 株主割当ての場合は,募集事項のほかに,株主割当てを行う旨と,募集新株予約権の引受の申込みの期日を定めなければなりません(会社法241条1項)。公開会社では,取締役会の決議でこれらを決定します(会社法241条3項3号)。これに対して,非公開会社では,定款で取締役又は取締役会に授権している場合は取締役又は取締役会,そうでない場合は株主総会の特別決議で決定します(241条3項4号,309条2項5号)。 株主割当ての場合は,金銭の払込みを要しないとすることが募集新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件である場合又は払込金額が特に有利な金額である場合の説明義務の適用はありません(会社法241条5項・238条3項)。株主割当ての場合には,株式の希薄化の問題が生じないからです。

(ⅱ)募集新株予約権の申込み・割当て

 株式会社は,募集新株予約権の引受けの申込みをしようとする者に対し,次に掲げる事項を通知しなければなりません(会社法242条1項)。

①株式会社の商号

②募集事項

③金銭の払込みをすべきときは,払込みの取扱いの場所

④上記①~③に掲げるもののほか,法務省令(会社法施行規則54条)で定める事項

これを受けて,募集新株予約権の引受けの申込みをする者は,申込者の氏名又は名称及び住所,引き受けようとする募集新株予約権の数を記載した書面を株式会社に交付しなければなりません(会社法242条2項)。

 株式会社は,申込者の中から募集新株予約権の割当てをする者及び割り当てる募集新株予約権の数を定めなければなりません(会社法243条)。この割当てによって,申込者は割り当てられた募集新株予約権の新株予約権者となります(会社法245条1項1号)。

 株主割当ての場合は,株主は,持株数に応じて募集新株予約権の割当てを受ける権利を有しますが(会社法241条2項),公募の場合は,割当自由の原則が妥当し,株式会社は裁量で割り当てる者を選ぶことができ,募集新株予約権を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には,申込み・割当ての手続を踏まず,その契約を締結した第三者が新株予約権者となります(会社法244条,245条1項2号)。

 

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