事業承継と全部取得条項付株式の取得 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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事業承継と全部取得条項付株式の取得

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7 全部取得条項付株式の取得

(1)手続

 全部取得条項付株式を発行した株式会社は,株主総会の特別決議により,当該全部取得条項付株式を取得することができます(会社法171条1項,309条2項3号)。

 この株主総会では,次の会社法171条1項各号所定の事項を定めなければなりません。

(ⅰ)全部取得条項付種類株式を取得するのと引換えに金銭等を交付するときは,当該金銭等(取得対価)についての次に掲げる事項

イ 当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは,当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法

ロ 当該取得対価が当該株式会社の社債であるときは,当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

ハ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権であるときは,当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

ニ 当該取得対価が当該株式会社の新株予約権付社債であるときは,当該新株予約権付社債についての当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についての当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

ホ 当該取得対価が当該株式会社の株式等(株式,社債及び新株予約権をいう。)以外の財産であるときは,当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

(ⅱ)(ⅰ)に規定する場合には,全部取得条項付種類株式の株主に対する取得対価の割当てに関する事項

(ⅲ)株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日

取得の対価である財産の帳簿価額の総額は,分配可能額を超えてはならないこととされています(会社法461条1項4号)。もっとも,取得請求権付株式や取得条項付株式の場合とは異なって,分配可能額を超える対価で取得した場合も当該株式の取得は有効になります。ただし,別途,株主および取締役に剰余金の配当等に関する責任(会社法462条1項)が生じます。

既存株式をすべて全部取得条項付株式にするためには,まず,種類株式発行会社でない会社は,種類株式発行会社となるための定款変更を行います(会社法108条2項,会社法466条,会社法309条2項11号)。ここで,実際に種類株式を発行する必要はなく,種類株式発行会社となれば十分です。

 次に,既存株式すべてに全部取得条項を付する定款変更を行うため,その種類株主を構成員とする種類株主総会を行います(会社法111条2項)。そこでの決議は,特別決議となります(会社法324条2項1号)。

 これらの種類株式発行会社になるために行う定款変更のための株主総会の特別決議から全部取得条項付種類株式を取得するための株主総会の特別決議までを,1度にまとめて行うことが可能です。

(2)メリット

株主総会の特別決議によって,少数株主の締出しを完全に行うことができます。

 全部取得条項付種類株式の対価は金銭に限られませんから,取得対価を議決権制限株式とすることで,資金的な問題をクリアすることも可能です。

(3)デメリット

全部取得条項付種類株式は,いわゆる100%減資の手段として,あるいは,敵対的買収防衛策として今まで利用されてきたものです。事業承継にこれを利用する場合,少数株主の締出しを完全かつ強制的に行う強力な手段となりますから,債務超過会社でない限り,これを実行する合理的な理由は見つけにくいといえます。なお,全部取得条項付種類株式を取得するための株主総会において,取締役は取得を必要とする理由を説明しなければなりません(会社法171条3項)。

 また,少数株主の権利が著しく侵害されるような場合には,「著しく不公正」(会社法831条1項1号)な決議として株主総会の決議が取り消される可能性があります。

 既存株式に全部取得条項を付する定款変更を行う場合において,反対株主には株式買取請求権が認められています(会社法116条1項2号)。

 全部取得条項付種類株式を取得するための決議を行う場合において,取得対価に不服のある株主は,裁判所に対して価格決定の申立てをすることができます(会社法172条1項)。この場合,価格決定の申立てをした株主に対しては,会社が取得対価として金銭以外の財産を定めていた場合であっても,会社は裁判所の決定した価格と取得日以後の年6分の利息を合わせた金銭の支払いをしなくてはならなくなります(会社法172条2項)。

 

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