社会保障・税一体改革素案(2、消費税率の引上げと目的税化) - 消費税 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士

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社会保障・税一体改革素案(2、消費税率の引上げと目的税化)

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税制改正 平成24年度税制改正

昨年末30日に取りまとめられ、明けて6日閣議決定された「社会保障・税一体改革素案」における税制改正の内容について、消費税率引き上げばかりが注目されているような気がします。

確かにこのデフレが進行する不況下で消費税率が引き上げられることは経済に与えるダメージが大きいだけに、気になるところですが、消費増税の利用目的が固定化されている点では評価されるべきではないでしょうか?

27ページには、以下のような記述が明記されている。

 

「消費税は、高い財源調達力を有し、税収が経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく安定していることに加え、勤労世代など特定の者への負担が集中せず、経済活動に与える歪みが小さいという特徴を持っている。社会保険料など勤労世代の負担が既に年々高まりつつある中で、こうした特徴を持ち、幅広い国民が負担する消費税は、高齢化社会における社会保障の安定財源としてふさわしいと考えられる。」

「今を生きる世代が享受する社会保障給付について、その負担を将来世代に先送りし続けることは、社会保障の持続可能性確保の観点からも、財政健全化の観点からも困難である。社会保障の機能強化・機能維持のために安定した社会保障財源を確保し、同時に財政健全化を図るため、消費税について2014年4月に8%、2015年10月に10%へと、段階的に地方分を合わせた税率の引上げを行う。その際、国分の消費税収について法律上全額社会保障目的税化するなど、消費税収(国・地方、現行分の地方消費税を除く)については、その使途を明確にし、官の肥大化には使わず全て国民に還元し、社会保障財源化する。」

 

つまり、消費税率は引き上げるけれども、引き上げた分のうち国税分は社会保障目的税としますよ、ということですね。

引き上げた分のうちの地方税分は一般財源として地方自治に役立てるけれども、大半を占める国税分は社会保障財源に使用目的を限定する、というのですね。

中曽根元首相の福祉目的税構想と相通じるものですが、消費税創設の背景には増大していくであろう社会保障財源の確保という目的がありましたから、当然なのかもしれません。

いずれにせよ、増税分を一般財源化するのではなく、社会保障目的にしか使えないように使途を固定化することは、今回の消費増税の大義名分ということなんでしょうね。

 

また、28ページには、「低所得者に対しては、消費税を充てることとなる社会保障改革の中で、きめ細かな対策を講じるとともに、社会保障・税番号制度の導入をにらんで、給付付き税額控除の導入に向け検討を進める」との記述があります。

黒字分しか控除できないこととされている税額控除について、税額控除額全額の控除を認めて、その結果、マイナスの所得になった場合には、そのマイナス分を還付(給付?)する制度のことを給付付き税額控除といいますが、これを導入しようというものです。

弱者保護の観点からは評価すべき点ではありますが、不正受給の防止等のためには、社会保障・税共通番号制度の導入が不可欠のインフラになります。功罪ある制度の新設になりますが、実現できることを期待していたいところです。

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