しまむらvsジーユー - ブランド分析・評価 - 専門家プロファイル

齊藤 孝浩
有限会社ディマンドワークス 代表
東京都
経営コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月24日更新

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 12月8日の繊研新聞一面に都心部への出店を加速させる低価格ファッションチェーンの代表格、「しまむら」とユニクログループの「ジーユー」に関する記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

 もともとは主婦やファミリーをターゲットに、郊外を主戦場としていた両社が、ともにティーンズをターゲットにしたトレンドカジュアルを強化、ファストファッションに洗礼を受けた世代をターゲットに、都心での多店舗化の真っ最中。都心では併せてアジア観光客にアピールした上で、その先にあるのは、海外出店というところのようです。

 記事によれば、しまむらのティーンズ向け商品売上比率はすでに1/3に達しているようですね。ティーンズ向けの商品は、一般的に20代~30代のいわゆるヤンママ層も十分取り込めますから、都心に限らず、全国で、新しい客層の開拓に大きく貢献していることでしょう。

 ユニクロの低価格業態としてスタートしたジーユー。11年8月期末でもう148店舗にもなるんですね。これまで140坪だったフォーマットを200坪から250坪に拡大して年間40~50店舗のペースで出店中とか。

 よくユニクロのジーユーを米GAPの低価格業態、OLD NAVYと対比されるメディアがありますが、OLD NAVYは、安くても世界観があってエンターテイメント性あふれる楽しいお店ですから、位置づけが全く違います。

 おそらく、柳井さんは、

 ユニクロは、H&M、ZARA、GAPあたりとグローバルで競い

 ジーユーは、イギリスで猛威を振るう低価格チェーン、プライマーク(すでに世界トップ10入りしています)や、日本進出済みの米フォーエバー21、日本のしまむらあたりにぶつけようとされているのではないでしょうか。

 そんな視点から、今回の記事のしまむらとジーユーの対比はとても面白いと思います。

 正直なところ、ビジネスの観点から申し上げると・・・私は、日本では、しまむら圧勝と見ています。

 それぞれの似たところ、違いを私なりにまとめてみると、

 まず、同じ低価格、この秋冬のトップスのプライスライン(存在する価格帯)で言うと

・しまむらの1470円、1870円
・ジーユーは、1490円、1990円

 あたりで少ししまむら安め、ほぼ同じでしょうか。

 ジーユーって、以前より3ケタの商品が少なくなっているところを見ると、やはり採算的にきついんじゃないでしょうか?今では、ユニクロの週末限定価格とあまり変わらないような・・・

 その低価格も、お客さんの「お買い得感」を、両社の原価構造から考えると、

 ディスカウンターモデルをとるしまむらの方が、ユニクロと同じ損益モデル(と思われる)ジーユーより圧倒的にお得になります。

 具体的に、同じ原価だったら、しまむらの1870円の商品、ジーユーなら2990円になるでしょう(これはお客さんの立場でみたら40%近くお得)。このあたりはファーストリテイリンググループである以上、経営効率落とすわけにいかないので、しょうがないんでしょうね。

 その原価に対するクオリティについても、しまむらの商品の供給元は、これまでGMSの衣料品売場で鍛えられた日本を代表する勝ち残りアパレルメーカーがメインですから、合繊素材が好きか嫌いかは別にして、品質は保証付きです。一方、ジーユーは、一部ユニクロの工場も活用されているとは思いますが、ODM、商社OEM活用がメインで過渡期、試行錯誤中というところでしょうか。

 ですから、両社の対決?はある意味

 量販系ナショナルブランドvsプライベートブランドの代理戦争の様相も呈しているわけですね。

 店頭を見ると、

 しまむらは、インナーなどの定番品は安定供給しながら、トレンドファッションは、売り切り御免で毎週新商品が入荷するバラエティ豊かで、ファストな商品回転の店頭に対し、

 ジーユーはユニクログループよろしく、売れ筋は欠品させない方針のため、ある程度品番を絞り込むため、品種、新商品の投入頻度は限られます。

 数量的に、都心の両社の店頭をチェックすると、巾1200mmのラックにかかているトップスの品種、ボリュームは

・しまむらで15品番 各3色 ML2サイズ各1枚 約90枚

・ジーユーが1品番のうちの1色から2色 XS,S,M、L、XL4サイズ 約50枚
 現実的には、2段がけなので、1什器あたりは1品番 2色から4色 約100枚

 ジーユーの4サイズ展開はいいですね、(であれば、もっとXLの比率増やすといいのでは?)、しかし、店頭の見え方、数字を比べると、

 毎週、宝物探しの楽しみがあるしまむら(ラックあたり型数が多いので常にバーゲン状態に見えるのは否めませんが)と、

 わかりやすいけど、現金問屋チックな、単調な店頭のジーユーの違いってところです。

 ここまで、だいぶ、しまむら寄りの論調でしたが、さすがに、しまむらには、1200店舗も出店して来た歴史がありますからね。明らかに一日以上の長はあります。

 ジーユーも当初と比べ、最近は、だいぶデザイン的、感度的にも頑張っていると思います。多店舗化、ロットを増やし、ユニクログループらしく、素材の品質を上げればそこそこ勝負できるのかなと思います。

 しかしながら、ジーユーの仮想競合店たちは、おそらく、大方ディスカウンターモデル(低粗利、ローコストオペレーション)を取る企業であり、そのあたりとの長期戦は、ちと無理があるかな~、というのが私の見方です。

 ジーユーの生き残る道は・・・ディスカウンターモデルに転身するか(その場合はファーストリテイリンググループのビジネス構造が変わりかねません)、それともH&Mのようなさまざまな手段でファッション心理をくすぐり、高粗利率で、ハイスピード、売り切りのビジネスモデルを目指すのか?はたまた、ユニクロにトレンドファッション部門として、吸収してしまうというのも選択肢かもしれません。

 今後のファストリグループの舵取りに注目しておきましょう。

 関連エントリー-しまむらが都心に増えたなら・・・
 関連エントリー-ユニクロに出来なかったことを
 関連エントリー-g.u.(ジーユー)の今夏約5割の商品は990円以下

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