社会保険の適用範囲を雇用保険と同じ「週所定労働時間が20時間以上で31日以上雇用される見込みの者」とする案について、パートさんをたくさん使う業界は経営を圧迫するとして反対、一方労働者側の日本労働組合総連合会は格差是正につながるとして賛成の意向です。
では、実際にパートで働いている人たちはどう思っているかというと、やはり抵抗感が強いようです。
さて、現在主婦の中には、扶養の範囲で働きたいと思っていて、そのために勤務時間や収入を調整している人たちがたくさんいます。
所得税法上の控除対象配偶者でいるための「年収103万円」よりも、社会保険の被扶養者でいるための「130万円」以上になるほうが負担増が大きいので、こちらは絶対守りたい、といいます。
勤務時間や勤務日数も、社会保険が適用になる「正社員の4分の3」にならないように調整しています。
とくに年金保険料は、サラリーマンである夫の扶養に入っていればタダで年金がもらえるからそのほうがいい、と。
保険料 主婦はパートで タダがいい
でも、ホントにそれでいいのでしょうか?
私は常々、サラリーマン家庭の主婦が、ホントはもっと働けるのにあえて103万円や130万円にこだわるのは不合理だと思っています。
だから、ママ友に相談されるといつも
「もっと働きたいと思っていて、働ける環境にあるなら、存分に働きなさい」
と言っています。
そんな中、ママ友の一人がパートの時間を増やして社会保険に加入しました。
彼女も実は、最近までは扶養の範囲で働くのがごく普通のことだと思っていました。
しかし、年収と労働時間の計算をしながら働くことがだんだん窮屈に感じてきました。
そんなときに、私と年金や社会保険の話をする機会があり、存分に働く道を選んだのです。
税金と社会保険料の負担が増えたことで、周囲の人たちからは
「扶養を外れたら、150万円以上稼がなければ手取りが減るよ」
と言われます。
「それでもいい」
と、彼女は思いました。
社会保険に加入した彼女は、病気やケガで長期間仕事を休んで療養生活をするときには、健康保険から日給の約3分の2の給付(傷病手当金)が受けられます。
彼女は骨折してパートに出られず無収入になった経験があるので、ゼロにならない保障のありがたさがわかるのです。
また、万一、厚生年金に加入中の事故や病気などで障害の状態になったら、「障害基礎年金」にプラスして「障害厚生年金」も受けられます。
これから出産・育児をする人は、産休中は健康保険から「出産手当金」として日給の約3分の2が支給されます。
育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金とも)全額免除となりますが、健康保険の給付も将来の年金も、休業前と同じ給与で勤務したものとして受けられます。
(雇用保険からは、「育児休業給付金」として日給の約5割(当分の間、本来は4割)が支給されます)
社会保険に加入するメリットは、単に老後の年金が増えるだけではないのです。
「自分の置かれた生活環境の許す範囲で、働きたいだけ働いて、結果として世帯の実質手取り収入が減ったとしても、それで自分自身の安心が買えるのだから悔いはない」
と、彼女は清々しい笑顔を見せてくれました。
しかし結局のところ、働き方についてはそれぞれの家庭での考え方次第です。
ただ、扶養の範囲に留まるほうが絶対に得だと思っていて、あえて収入を低く抑えているのなら、もう一度考えてみてください。
経営者の中には、今いる人材を有効に活用したいと思っていてパートさんも積極的に社会保険に加入させている社長さんもいます。
社会全体から見れば、各家庭の収入が増えれば消費拡大につながり、納税者が増えれば国の財政にもプラスに働くということも、頭の片隅にでも置いていただければ幸いです。
このコラムの執筆専門家
- 服部 明美
- (埼玉県 / 社会保険労務士)
- 社労士はっとりコンサルティングオフィス 社会保険労務士
お客様の「こころ」に寄り添う社労士でありたい
職場のメンタルヘルスと年金関連を得意分野としております。就業規則の作成や見直し、休職・復職規程、衛生委員会の運営指導、社会保険制度説明会等、原稿の執筆や講演、社員研修の講師依頼など、お気軽にお申し付けください。
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