- 羽柴 駿
- 番町法律事務所
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
第4回
Nが争わないことは承知していたものの、私に対してはこれまでずっと「やっていない」と言っていたNのこのような態度を見て、私はいささかあっけにとられる思いでした。
この一週間後に、Nは懲役3年6月の有罪判決を言い渡されました。
もし争っていればどうなっていたでしょうか。それでも有罪判決となれば、反省の色がないとしてより重い刑を受けていた危険は否定できませんが、余り変わらなかったのではないかという気もします。実際のところは誰にもわかりません。
判決言い渡し後、Nに本当はどうだったのか、と聞いたところ、「先生、私は本当にやっていません」と答えました。
みなさんはこの話を読んで、どう思われるでしょう。
私は正直に言うと、警察官の調書などを読んだ印象では、Nが無実とはとても信じられないとしか思えませんでした。しかし振り返ってみると、多分やったのだろうとは思いつつも、他方で、最後まで違うと私に言い張っていたNの言葉が真実であるという万に一つの可能性がないとは言い切れないのでは、とも思えてきます。結局は、真実は神様にしか分からないと思ったほうが間違いなさそうです。
(次回へ続く)