米国特許判例紹介:Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第3回)

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米国特許判例紹介: Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第3回)

~記録媒体クレームに対する判断~

                 Cybersource Corp.,

                           Plaintiff Appellant,

                     v.

                Retail Decisions, Inc.,

                             Defendant- Appellee.

河野特許事務所 2011年12月21日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

4.CAFCの判断

結論:クレーム2及び3は特許を受けることができない心理プロセスの独占を試みており、米国特許法第101条の規定に基づき、無効である。

 

(1)Bilski最高裁事件

 方法クレームに対する保護適格性判断はBilski最高裁判決により明確化された。以下、Bilski最高裁事件について解説する。

 

 Bilskiは、ヘッジ取引に関する方法クレームについて権利化を試みた。本方法クレームが、米国特許法第101条の規定に基づき、保護適格性を有するか否かが争点となった。

 

 最高裁は過去の判例により、自然法則、物理的現象、及び、抽象的なアイデアは保護適格性を有さないが、ビジネス方法に関する発明自体は米国特許法による保護対象になると判示した。

 

 さらに、方法が抽象的なアイデアをクレームしているか否かを判断する基準としてCAFCが示した機械変換テストは有用なツールではあるが、当該テストが唯一の基準ではないと判示した。最高裁は、機械変換テストを唯一の基準として制限することは特許法の制定趣旨及び判例に反し、また、将来発生する新技術を保護すべく、他の判断基準を判示することを否定した。

 

 CAFCが判示した機械変換テスト(machine-or-transformation test)とは、方法クレームが以下の2条件のいずれかを具備する場合に、米国特許法第101条の要件を満たすとする判断基準である。

(I)クレームされた方法が特別な機械または装置に関係していること、 または

(II)特別な物・もの(article)を異なる状態または物体へ変換していること

 

 最高裁は、Bilskiのヘッジ取引に係る方法クレームの保護適格性を否定すべくBenson事件[1]及びFlook事件[2]を挙げた。Benson事件において、最高裁は、2進化10進数(BCD)形式にあるデータを、純粋なバイナリ形式へ変換するアルゴリズムに関する特許出願が、米国特許法第101条に規定する「方法」であるかどうかを検討した。最高裁は最初に、「抽象的なアイデアにおける法則は、基本的な真理であり、発端であり、真意であり、これらは特許されるべきではない」と述べた。これらは、何人にも使用させる必要があるものであり、独占権を付与すべきではないからである。当該アルゴリズムについて権利を付与すれば、完全に数学的公式についての権利を先取り(pre-empt)させることとなる。以上の理由により、Benson事件における発明は単なる抽象的アイデアであり、米国特許法第101条に規定する「方法」でないと判断した。

 

 また、Flook事件において、出願人は、石油化学製品及び精油産業において、触媒変換プロセスの間、状態を監視する方法について特許化を試みた。Flook事件における発明は、石油化学製品及び製油産業への適用に限定しているが、本質は数学的アルゴリズムにある。従って、第3者は当該数学的アルゴリズムを他の分野において使用することができる。しかしながら最高裁は、出願に係る発明は、数式を特定の分野に応用したものであるが、実質的に数学的アルゴリズムを先取りするものであり、特許出願全体として何ら特許性ある発明を含んでいないことから、米国特許法第101条に規定する「方法」に該当しないと判示した。このように、数学的アルゴリズムの使用を、ある特定の分野への使用に限定したとしても、迂回して特許化することはできないと判示した。

 

 Bilskiのクレームは、ヘッジングの基本的コンセプト、または、リスクに対する保護を記載している。ヘッジングは、経済社会システムにおいて古くから普及している基本的な経済プラクティスであり、経済学の入門授業においてさえ解説されている事項である。クレームに記載したヘッジングの概念は、Benson事件及びFlook事件におけるアルゴリズムと同じく、特許されない抽象的なアイデアである。最高裁は、申立人に当該リスクヘッジングに係る特許を認めれば、当該分野におけるこのアプローチの使用を先取りさせることとなり、ひいては抽象的アイデアの独占を認めることとなると判示した。

 最高裁は以上の判例に照らし、申立人の出願に係る発明は単なる抽象的なアイデアであり、米国特許法第101条に規定する「方法」に該当しないと判断した。

 



[1] Gottschalk v. Benson, 409 U. S. 63, 70 (1972)

[2] Parker v. Flook, 437 U. S. 584, 588–589 (1978)

(第4回へ続く)

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