しかしそればかりではなく、「社員の事情を考慮した手当」もあります。その代表的なものの一つは前回お話した家族手当ですが、その他に住宅手当があります。
住宅手当は、寮や社宅のある企業であって、これらに入居できない社員に対してその不均衡を是正するために支給する場合と、単に住宅費の負担を軽減するために支給する場合があります。いずれの場合でも、高度成長期に導入する企業が激増し、終身雇用を前提とした社員の生活の安定、優秀な人材の確保のための福利厚生という観点から家族手当同様に大きな役割を果たしてきました。
また、平成11年10月1日に施行された改正労働基準法において、住宅手当が割増賃金の算定基礎から除外されることになったことで大きな話題となりました。
この改正によって住宅手当を支払っていた企業の残業手当分の支出は幾分か抑えられることになりましたが、単に一律○○円という具合に支給していては対象とはされず、家賃やローン月額の一定割合を支給するなど、住宅に要する費用の多寡に応じて支給されることがその要件とされています。
さて、この住宅手当ですが、将来を展望してみるとその存否に暗雲が立ち込めています。なぜならば、成果主義という大きな潮流の中で「賃金支払いの基本は役割・成果に応じたものである」という考え方が大勢的となってきたからです。
つまり、役割や成果への対価ではなく、社員の事情に考慮した生活補助的な手当はもはやその役割を終え、存在そのものの意義が失われつつあるということなのです。