会社を辞めてはいけない - キャリアカウンセリング - 専門家プロファイル

小松 俊明
リクルーターズ株式会社 経営コンサルタント (専門/人材ビジネス)
東京都
経営コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月19日更新

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会社を辞めてはいけない

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キャリアの悩み

職活動の長期化が深刻だ。買収に伴う事業部縮小や、業績不振や会社倒産など、会社都合で退職に追い込まれた人は本当に気の毒であるが、中には金銭面で有利な早期退職プログラムに自ら応募した結果、転職活動をしている人も多い。どちらの場合も、次の転職先を決める前に退職しているケースが多く、この人たちの再就職が決まらないのだ。離職後3~6ヶ月しても再就職先が決まらないのは序の口であり、1年決まらない、2年決まらないという人も少なくない。こんな非常事態を誰が予想しただろうか。

 早期退職プログラムを導入する会社は、プログラムを社内に発表後、応募期間を短く設定する。そして応募が想定される人数よりもかなり少ない数に募集枠を設定することで、社員の応募への心理をあおる手法をとる。社員が会社へのロイヤリティーや仕事のやりがいを感じていないことを見透かし、あくまでも金銭的メリットを前面に出して決断を急がせるのだ。

 確かに、金銭的なメリットは大きい。最近は昇給もボーナスもさっぱりだった事業環境であったにもかかわらず、今回、早期退職制度に応募すれば給与の3カ月相当から、多いケースでは24カ月相当まで、通常の退職金に積み増して会社が払ってくれるというのだ。まさに大盤振る舞いである。

 特に中高年で就業期間が長く、高給をもらっている管理職社員にとっては、最も有利な算段がたつ。早期退職さえすれば思いもかけない大金が懐に入り込むのだ。どうせ辞めようと思っていた会社である。今後は役職を解かれ、給料も激減するかもしれない。会社だって業績不振であり、将来どうなるかわからない。だったら、まとまった金をもらって泥船から降りて、再スタートを切るのも悪くない。手切れ金と考えれば法外な金額だけど、これまで自分は給料以上の働きをしてきたはず。「これは千載一遇のチャンスだ」と自分を説得し、早期退職プログラムの応募締め切りの最終日、応募書類を提出するのである。

 ただちょっと待ってほしい。そんなおいしい話、本当に乗っても大丈夫だろうか。何か見落としていることはないだろうか。

 この際、会社の算段を深読みするのはやめよう。会社にとって大切なことは事業存続であり、損得勘定は事前に冷静に計算されつくされている。どんなに個人に金を払ったところで、会社にとって損にはならないことを確認した上で、早期退職プログラムは設計されているのだから、個人があまり深読みしても無駄であるように思う。

 それよりも、もっと現実を直視しよう。冒頭で指摘したように、ビジネスマンの誤算は、転職活動が長期化し、再就職先が決まらないことである。つまり、失業状態が長く続くということであり、書類選考や面接に落ちまくることを意味している。

 生活するためのお金には当面困らないとはいっても、失業保険の残存期間も迫ってくるし、自分の商品価値はまるで24時間が過ぎた生モノのように、一気に色あせてくる。実際、離職後6カ月が過ぎてくると、完全に元の状態ではなくなってしまう。時間の経過とともに、給料も前職の水準よりも2割、3割減は当たり前となり、下手をすると5割減という話も珍しくない。こうなると、それまでの築いてきたキャリアは壊れてしまったといっても過言ではない。損得勘定でみても、早期退職プログラムで得た加算金を、あっという間に吐き出してしまうことになりかねないのだ。

 さらに深刻なことは、会社生活をしていたときの生活ペースは崩れ、気力、体力ともに弱ってしまうことだ。あまりに多くの負けゲーム(書類選考落ち、面接落ちなど)に直面してしまうと、プライドや自分に対する自信を失ってしまいかねない。
 他者の目も気になってくる。会社をリストラされたわけではなくても、面接官からは「前職の会社への不適合者」という、不本意なレッテルをはられることは避けられないことも多い。
 また離職後、再就職先が決まらない人に対して、企業はババ抜きをしているような感覚をもつことがある。つまり、誰もがひかなかったカードを自分が最後にひきたくないという心理に陥るのだ。これは残りものには手をつけたくないという感覚である。誰もが評価をしなかったのだから(それは事実ではないのだが)、自分たちの会社も自粛しようという、何とも消極的なダメ出しである。

 こうしたことをトータルで考えて、果たして早期退職制度の損得勘定はどうであるか、そこをよく考えてみることが必要だ。

 私は思う。「今、会社を辞めてはいけない」と。少なくても、次の再就職先を決めずに会社を辞めることは、絶対避けたほうがいい。

 転職することを勧めることが本業である私が「会社を辞めるべきではない」と言うのだから、状況を察してほしい。ぜひ、ビジネスマンは今後の自分の身の振り方を慎重に考えてほしい。目先の損得勘定に流されると、あとになってから大きなツケを払うことになりかねない。それは何とも痛いものだ。

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